理学療法士は、リハビリ対象者の身体に直接手で触れる機会の多い職種です。
看護師の方々も、医療行為とは別に、安心・安楽を与える非言語的コミュニケーション手段として「タッチングケア」という技術を用います。
PT業務では四肢(腕・脚)を徒手的に操作することが多いですが、相手に「心地よい(or 不快ではない)」と感じてもらうのが第一という点では、看護師と同様です。
そこで今回は、PTとしてのタッチングの基礎について簡単に述べたいと思います。
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1.自然なタッチングのために
1)手のひらを柔らかく
まず、指はやや閉じ気味にして、触る部位に合わせて曲面を作ります。
そうすると接触面積を広くとることができます。
手首から先は、力を抜くように意識しましょう。
余計な力が入っていると、手の内在筋(ないざいきん:手の内部に存在する細かい筋群)が緊張して手のひらが硬くなり、対象者に不快感を与えてしまいます。
慣れてくると、意識せずとも自然に脱力できるようになりますよ。
実際のPT業務では、指先で特定の部位を圧するなどの応用手技を用いることもありますが、それは例外。
上記の「全面接触形」がすべての基本になります。
2)爪は短めに・指輪は外す
私は毎週水曜を爪切り日と決めています。長いまま放置しないようにするための意識づけです。
画像は私の指ですが、短めに切っているのがお分かり頂けるでしょうか。
一般的に深爪は良くないとされています。爪の変形や指先の感染症の怖れがあるからです。
指先と爪先が同じ高さになるぐらいが良いと云われているので、これだと明らかに深爪ですね。
ですが、一般的な長さだと指先で圧を加える手技を行う場合、どうしても爪が食い込みそうになるのです。
そんなわけで、私は 指先を傷つけない範囲で短く切ってから、丁寧にヤスリがけをして形を整える ようにしています。
まぁ私ほど短くする必要はないかも知れませんが、PTとして生計を立てたいならファッションで爪を伸ばすことは諦めて下さい。
結婚指輪については職場によって規則はまちまちのようですが、私は外すべきだと思います。
腕時計もケースバイケースですが、対象者に危害を及ぼしそうな状況では外した方が良いでしょう。
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2.タッチングの実際
1)いきなり触ってはいけない
無言で唐突に触るのはNG。
そうかと言って、「ちょっと触ってもいいですか?」では、表現が直接的過ぎます。
どこか痛いところはありますか?
ええ、左肩がちょっと…。
左肩ですね。少し動きを診てもよろしいですか?
はい、お願いします。
こんな感じで、医療行為としての自然な介入手段として触るようにしましょう。
2)触りに行くときの速さ・強さ
無遠慮にパッと触らないようにしたいものですが、逆に「そろ~り・こわごわ」と触ってしまうと不快感を与えたり、くすぐったくなったりします。
文章と静止画だけでは伝わりにくくて恐縮ですが、猫の背中に優しく触れるような感じと言えばよいでしょうか😅
触る直前にほんの少しブレーキをかけ、スッと着地する感じです。
ともかく、触りに行く際のスピードは速過ぎず遅すぎず。圧(強さ)は対象者の反応を診ながら。
最初は身近な人に協力してもらい、繰り返し練習しましょう。
3)触るのに注意すべき部位
骨や腱の出っ張り部を無造作に触らないように注意しましょう。
以下に一部の例を挙げておきます。
①足首(くるぶし)・手首: 骨が出っ張っています。
②すね(脛骨の前面): いわゆる「弁慶の泣き所」です。
③側胸部: 肋骨があり、下手に触るとくすぐったく感じます。
④膝の裏側: 腱が浮き出ており、強く握ると人によっては不快感があります。
いずれも皮膚の直下に骨や腱があり、触覚・痛覚の鋭敏な部位です。
やむを得ずこのような部位を触る時は、できるだけ脱力し手のひらを柔らかくして全面接触を心掛けましょう。
女性の胸部や殿部、下腹部なども、もちろん要注意です。
近年の「ジェンダーレス」の考え方で言えば、対象者が女性の場合だけ配慮すればよいというわけでもありませんが…。
3.さいごに
触られたときの感覚は人それぞれ。
例えば背中・腰などは一般的に感覚が鈍いとされますが、指先だけで中途半端に触ったりすると、くすぐったく感じる人もいらっしゃいます。
この記事を書いている時点では、コロナ禍で臨床実習を中断している養成校も多いようです。
家族と同居しているPT学生の方々は、一定の感染対策(マスク・手洗い・医療用手袋)を施した上でご両親・ご兄弟等に「教材」になって頂き、触られた時の感覚をフィードバックしてもらうのも良いでしょう。
やはり、技術的なことは場数を踏むしかありませんから。
今回の内容を前提として、次回の記事では四肢を動かす際の留意点・フォームの作り方等について解説したいと思います。
それでは、最後までご覧下さいましてありがとうございました m(_ _)m
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