すなおのひろば

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【理学療法きほんのき:その5】四肢の動かし方(入門編)… 持ち方とフォームについて

f:id:sunao-hiroba:20200124190052p:plainPTの臨床実習では、近年さまざまな理由により患者さんの身体に触れる機会が少なくなりがちです。

そのためか、就職した段階では四肢(腕・脚)の持ち方やフォームが出来上がっていない新卒PTも多いようです。

そこで当記事では、前回述べた『タッチング』を前提として、四肢を保持する際の留意点・フォームの作り方について解説していきたいと思います。

 

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1.四肢の持ち方きほんのき

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前回の記事で述べたように、対象者に触るときは「5本の指を閉じた全面接触形」が基本になります。

ただし四肢を大きく動かす際には一定の保持力が必要であり、便宜的に母指(ぼし:親指のこと)と他の4指を対立させることになります。

そのため、以下のように留意しなくてはなりません。

1)強く握らない・つかまない

動かそうという意識が強ければ強いほど、腕から手のひら、指先に至るまで硬直しがちです。
もちろん、これは対象者にとって不快に感じられます。

特に、母指と示指(じし:人差し指)・中指の3本で強くつかんでしまうと痛みを与えてしまいます。

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グローブのように手全体で下から受ける(or 上から被せる)感じで、優しく保持しましょう。

腕には力を入れても良いですが、手首から先は適度に力を抜きます。
筋肉の使い方が相反するため難しいのですが、練習あるのみです!

どうしても「つかみ動作」になってしまう人は、小指・環指(かんし:薬指)の2本で握るぐらいの感覚で持てばちょうど良いかも知れません。

 

2)剪断応力を掛けない

剪断応力(せんだんおうりょく)とは、物体内部の面と逆方向にずれるように作用する力のことです。

f:id:sunao-hiroba:20210508104752p:plain皮膚と筋膜・骨膜の間には可動性があり、一定のずれを許容していますが、ずれる力が強すぎると引きつるような痛みが発生します。

四肢を大きく動かそうとすると、ついつい皮膚を引っ張ってしまいますね。

手のひらの感覚を研ぎ澄まし、剪断応力を生じさせないように注意しましょう。

ずれを防止するためには、四肢遠位部の持ち方や動かし方にちょっとした工夫が必要になります。
詳しくは次回の記事で🎵

 

2.動かす際の体勢(フォーム)きほんのき

PTの体勢が安定していないと、対象者もリラックスできません。

また、PT自身の身体を壊さないためにもフォームづくりは大切です。

1)前かがみを避ける

実習生や新卒PTにありがちな前かがみ姿勢。

当ブログの『腰痛とともに生きる』シリーズでも繰り返し述べていますが、腰には良くありませんね。

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腰痛症はPTの職業病。若いうちは何ともないかも知れませんが、負担が徐々に蓄積して慢性腰痛を引き起こす要因になります。

アプローチする部位にかかわらず、常に 「腰から上は垂直!」 と意識しながら業務に当たりましょう。

 

2)支持基底面を広くとる

接地点で囲まれた底面のことを『支持基底面(しじきていめん)』と呼びます。

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カメラの三脚が容易に転倒しないことからも分かるように、3点以上接地していると支持基底面が広くなり、物体は安定します。

対象者にアプローチする際も同様です。

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このように支持基底面を広くとるのが理想です。
互いの支持基底面を近づける(or 重ね合わせる)と、いっそう安定します。

私自身、関節可動域運動を行う時などは常に 三角形以上の広い支持基底面 を作ってから開始するよう留意しています。

 

3)立つか座るかは、互いの身体サイズに応じて

子供の手指の関節を動かす際、PTが立ち上がって全身を使いながら曲げ伸ばしする必要はありません。

逆に、大相撲の力士の脚を動かすのに、ちょこんと座ったまま小手先だけで操作することは無理ですよね。

要は、身のこなしの程度は、対象の大きさ(長さ)・重さに合わせて決めれば良いのです。


例えば、身体が小さく非力なPTが、大きく重い対象者の下肢を動かす場合…

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このように、伸び上がってPT自身の身体と対象者の下肢の動きをシンクロさせるとラクに操作できます。


一方、十分に力のあるPTが、身体の小さい対象者の上肢を動かす場合なら…

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PT自身は座った位置で体軸をほとんど動かさず、腕だけで操作した方が効率が良いです。

いずれの場合も、
◆なるべく前かがみにならず、体軸を垂直に保つ。
◆支持基底面をできるだけ広くとる。
この基本原則だけは意識するようにしましょう

 

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3.さいごに

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冒頭で述べたように、最近の臨床実習では対象者の身体に直接アプローチする機会が減っています。

これは、「法的に許容される実習生の医療行為」の範囲が、昔よりも狭められたことによるものです。

そのため新卒の時点では、ほとんどの人がぎこちないフォームで恐る恐る触っている印象です。

コロナ禍の現在、その傾向がますます助長されているような気がしますが、嘆いてみても仕方ありません。
技術的なことは、基礎知識を頭に入れた上で愚直に繰り返し練習するしかないですから。


次回もタイトル通り「きほんのき」を踏襲しながら、四肢の動かし方をもう少し掘り下げてみたいと思います。

文章と静止画ではなかなか上手く伝えられず申し訳ございませんが、何かのヒントになれば幸いです😅


最後までご覧下さいましてありがとうございました m(_ _)m

 

 

 

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