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【臨床実習指導者講習会 参加報告:その5】PT実習におけるハラスメント防止対策…①セクハラについて

f:id:sunao-hiroba:20200207201818p:plainPTの実習において深刻なハラスメントが問題視されている現状。

実習指導者としては、各種ハラスメントに関する知識を身につけ、十分な問題意識を持つことが大切です。

今回は、いわゆる『セクシュアルハラスメント』についての内容をまとめています。

 

※参考資料:以下のウェブページをご覧下さい。

www.mhlw.go.jp

 

www.sh-help.provost.nagoya-u.ac.jp

 

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9.『セクシュアルハラスメント』とは?

PTの実習に特有の「セクハラに関する定義」が存在するわけではありません。

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ただ、診療チームの一員として参加するという意味では、実習生も労働者に準ずる立場であると言えます。

そこで、まず『男女雇用機会均等法』におけるセクハラの位置づけを確認してみましょう。


併せて、PT実習におけるセクハラの具体的事例等も提示します。

※以下、大阪府養成校協議会『2019年度臨床実習指導者講習会 講義資料』より一部引用。

1)セクハラの定義

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Ⅰ.対価型セクシュアルハラスメント
職場において労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したことで解雇・降格・減給などの不利益を受けること。

Ⅱ.環境型セクシュアルハラスメント
性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に大きな悪影響が生じること。

2)実習中のセクハラ具体例

◆高頻度で電話・メールを送る。

◆個人的な話をしつこく聞く(私生活の詮索)。

◆実習の内容とは関係のない性的な話をする。

◆不必要な身体への接触。身体を眺め回す。

◆「スタイルがいいね」と言ったり、スリーサイズを聞いたりする。

◆「胸が大きい(小さい)」など身体に関することを言ったり、個人的な性体験を聞いたりする。

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◆しつこく食事や飲酒に誘う。自宅までの送迎を強要する。

◆女性(男性)であるという理由だけで、不当に評価する。

◆デートに応じれば評価を上げる(応じなければ下げる)。

◆性的な関係を迫る。

◆実習中や終了後のつきまとい行為。

3)セクハラ判断に関する注意事項

◆セクハラであるか否かについて、相手からいつも意思表示があるとは限らない。

◆「性別により役割を分担すべき」とする意識に基づく差別的言動は、人権侵害と見なされる:
⇒飲食の世話などを女性にのみ求める。
⇒「女(男)のくせに…」

◆性的マイノリティに対する無理解も問題になり得る。

◆同性間でも起こり得る。

 

10.PT実習でセクハラが起こる理由

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私もかつては実習生でしたし、のちに臨床のPTとして多くの学生を指導してきましたが、他の医療職と比較してもPTの実習現場では特にセクハラ問題が生じやすいように思えます。

それは何故でしょうか…?

ここで簡単に整理してみましょう。

1)上下関係(指導する側→される側)

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医学生等、他の医療職の実習も同様ですが、セクハラの背景には実習指導者→学生という「不公平な」力関係がベースにあることは言うまでもありません。

これは、他のハラスメント(特にパワハラアカハラ)とも共通のものです。

「デートや性的行為に応じなければ評価を下げる」などは、その典型でしょう。

2)双方の勘違い

指導者―実習生間で恋愛関係が生じることもあるようですが、仮に双方合意で性的言動に及んだ場合であっても、その結果として実習環境を損なった場合にはセクハラと判断され得ます。

自由恋愛とは言っても、その根底には上下関係が存在しているものです。

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◆実習生は、実習指導者の学識の高さを「人格の高さ」と誤解しやすい。

◆実習指導者は、自身の指導に応える実習生の誠意を「自分への好意」と誤解しやすい。


これは、臨床心理学(精神分析)で言われる「感情転移」とか「転移性恋愛」に相当するもので、医療従事者であれば誰でも理解しているはずです。

3)身体への接触を伴う指導

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専門職としての性質上、PTの実技指導では「手取り足取り」という言葉通り、身体に触れる機会が多いです。

指導者はそれこそ「熱血指導」をしただけであり、セクハラの意図は全く無かったにもかかわらず、学生側は苦痛に感じているということもあり得ます。

次回の記事でも述べますが、パワハラの基準が「客観的判断(不当性)」であるのに対し、セクハラでは「受け手が不快に思うかどうか(不快性)」が重視されるので注意が必要です。


その一方、指導中の身体接触が「転移性恋愛」を促進する一要因になっていると指摘する人もいます。


どちらにせよ、指導者側としてはなかなか難しい問題ですね…(^_^;)

 

11.セクハラ防止策

防止体制の構築に当たっては、医療現場で生じるどのような懸案であっても「組織対策」と「個人への働きかけ」の両面が必要です。

医療事故や院内感染の予防策がその典型例ですが、ハラスメントについても例外ではありません。

1)養成校・教員側

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◆ハラスメント専用の相談窓口を設置。

◆実習期間中の綿密な面談・メール対応。

◆実習施設との連携強化。

2)実習施設・指導者側

◆指導者への教育・研修。

◆ハラスメント関係規程を就業規則等に明記。

◆実習環境の整備:
⇒同性や抵抗感の少ない指導者が対応することを保障。
⇒特に胸部や骨盤付近の実技は一貫して実習生の思いを尊重。
⇒指導は必ず対面で行う(メール・電話は極力使わない)。
⇒同室内には常に第三者を同席させるなど、空間的に配慮。
⇒違和感や疑念が生じた際は遠慮なく申し出るよう伝えるとともに、実習指導者の上位職への相談ルートを提示。

3)実習生側

◆ハラスメントについて知る(正しい知識を共有)。

◆困った時には相談できることを知る(相談ルートの確認)。

 

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<今回のまとめ・次回予告>

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私自身も含め、現場の指導者にとっては昔と比べて配慮すべき点が多く、色々と大変ですよね…。

ただ、やはり社会的背景に応じた指導方法が求められているのは事実でしょう。

学校教員も実習指導者も、まずは問題意識を持つことが重要です。

そして、組織的・構造的にセクハラ防止策を検討する必要があるということをご理解頂けたなら幸いです。

 


次回はいよいよ伝達講習の最終回。

パワハラアカハラ』についての内容を予定しています。

 

最後までご覧下さいましてありがとうございました m(_ _)m

 

 

 

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