さあ、いよいよ見学当日になりました!
今回は病院・施設を見学する際、特に重点的に見ておきたいチェックポイントや、質問すべき項目について述べたいと思います。
※主に新卒予定者向けの話になりますが、現在すでにPTとして勤めており転職(勤務先変更)を検討されている方にも参考になれば幸いです。
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1.余裕を持って到着したら…
見学当日は、約束の30分ぐらい前には到着できるように余裕を持って自宅を出発しましょう。
交通機関の遅延を考慮して、ということもありますし、当日の訪問場所が「西館5Fのリハビリ室へ直接伺う」となっていたとして、いざ病院へ行ってみたら建物内が複雑で西も東も分からず迷子に…という失態もあり得ます。
理想としては30分ほど前に到着し、どこかで少し時間を潰した後、約束の5~10分前に指定の訪問場所へ訪ねるのが良いでしょう。
事前に下見をしていない人や「方向オンチ」を自認している人は、特に余裕を持って行動することをおススメします。
ちなみに早く到着したからといって、病院内を不審者のごとくウロウロするのは好ましくありません(笑)。
が、とりあえず先にトイレは借りておきましょう(理由はのちほど…)。
2.いざ見学へ
さあ、指定の訪問場所へ伺い、担当者様とご挨拶はできましたか?
それでは見学開始です!
見学のスケジュールは施設ごとに異なりますが、ここでは
1)施設内の巡回
2)リハビリテーション部門の見学
3)質問受付
上記の流れでいくと想定してご説明します。
1)施設内を巡回する際のチェックポイント
①観察を最優先する
全般的に言えることですが、常にメモを取る用意をしておいて下さい。
ただし、最も大切なのは「目の前の状況を観察すること」です。
施設・設備や診療の状況など興味を持ってしっかり見るとともに、担当者からの説明に大きくうなずき(「はい」という返答は必要ですが、あまりしつこく「はい、はい」と連呼するのは好ましくありません)、特に大事なことは随時メモに取っておく、というスタンスです。
優先順位として、
Ⅰ.しっかり見る。
Ⅱ.大きくうなずく(要所で「はい」と返答)。
Ⅲ.メモを取る(必要に応じて)。
この順番で覚えておきましょう。
くれぐれも、メモを取ることに夢中になって観察がおろそかになることの無いよう注意して下さい。
②清掃・整理整頓の状況
施設を巡回しながら、廊下や壁・掲示板・ナースステーション・病室などが清潔で綺麗に清掃され、整理整頓が行き届いているかを「さりげなく」見ておきましょう。
必ずしも「施設・設備が新しくて綺麗=良い職場」とは限らないのですが、乱雑で汚い施設環境は感染管理や防災上問題であるばかりか、職員や患者さんの心を蝕んでしまう要素にもなり得ます。
前項で「先にトイレを借りておきましょう」と述べたのも、それを確認するためです。
施設の広さ・天井の高さ・照明の明るさなど、患者さん・職員双方にとって心地よく感じられる空間かどうかも大切ですね。
③職員同士の挨拶
巡回の途中、さまざまな他部署の職員とすれ違うことと思います。その職員は、見学案内者であるリハ部門長と挨拶を交わすでしょうか?
病院職員は慣例として「おつかれさまです」といった挨拶をする場合が多いです。
無愛想な人はどの職場にも存在するものですが、中にはPTや看護師といったいわゆる「コメディカル」を下等な存在のように扱う時代錯誤な医師もいて、こちらから挨拶しても無視、といったことも…。
逆に、どちらからともなく「おはようございます」「おつかれさまです」といった明快な声かけがあるならば、他職種との人間関係は概ね良好であり、患者さんに対して良質な医療を提供するための連携・コミュニケーションか取れていると想像できます。
④患者接遇
情けないことに、患者さんに対して「タメ口」を使う医療従事者は極めて多いです。
これは由々しき事実であり私自身も問題視してはいますが…それはともかく、職員と患者さんが会話しているところは聞き耳を立てておきましょう。
接遇教育の行き届いている病院・施設かどうか(すなわち患者さんを大切にしているかどうか)を判断できます。
2)リハビリテーション部門見学時のチェックポイント
①入室時の職員対応
貴方がリハビリ室へ入室した際、受付窓口の事務職員や療法士の方々はちゃんと挨拶して下さるでしょうか?
座っていた事務職員がスッと立ち上がってにこやかに挨拶して下さったり、患者さんの診療中で手の塞がっている療法士も可能な範囲で「こんにちは」と声を掛けて下さるなら、それは明るい雰囲気の中にも一定のけじめのある、よく教育された職場である可能性が高いです。
事前に言い含められていなくても自然にそういう対応ができる職員もいるでしょうが、たいていは部門長が「今日は◯◯大学の学生さんが施設見学にいらっしゃるので、丁重に対応して下さい」といったことを朝礼で周知します。
そして一般職員側もその重要性をすぐに理解し相応に行動できる、すなわち良い意味での上下関係が成り立っており、社会人教育が行き届いていればこそ出来ることです。
②設備・備品・室内環境など
清掃・整頓や室内の快適性などの状況確認は巡回の時と同様です。
リハビリ室の設備として、物理療法の機器やトレッドミル・エルゴメーター・杖・歩行器・装具など、治療用具がどの程度充実しているかも見ておきましょう。
可能なら、療法士のスタッフルームやロッカーなどの環境も確認しておきたいところです。
③患者診療の状況
もし療法士が患者さんの診療を行っている場面を見学できるなら、どのような方法(治療手技)を用いているかを見ておきましょう。
療法士が使う技術の中には「◯◯法」といった特殊なテクニックも存在しますが、全ての療法士が「判で押したように」同じ手技を使っていたとしたら、私なら「ちょっと偏ってるな…」という印象を抱いてしまいますね。
学生の方々にそれを判断するのは少し難しいかもしれませんが、ちょっと心に留めておいて頂ければ良いかと思います。
もちろん、患者さんとの会話や、職員間で会話・連携している場面なども見ておきましょう。理由は巡回時と同様です。
3)質問をする際の留意点
前回の記事(その2:②事前準備をしておきましょう)で述べたように、質問項目は事前に用意しておいて、積極的に表出しましょう。
以下を例として、質問の仕方も含めてご説明します。
①職員間のコミュニケーション方法(人間関係)
これは最も尋ねたい質問のひとつでしょう。
志望理由として「私は脳卒中のリハビリに興味があるので、脳外科専門病院である貴院に応募しました」という方も多くいらっしゃいますが、いくら興味ある疾患の患者さんがそこに存在しても、職場の人間関係が悪いと職務に集中するどころではなくなるからです。
そして、杓子定規に考えるなら「仕事上の連携と、人としての仲の良し悪しは明確に切り分けて行動すべき」とも言えるでしょうが、人間はしょせん感情の生き物ですから、実際は大いに関連しているものです。
「職員間のコミュニケーション」と言うとき、それは他職種間・リハ部門内、両方の意味合いがありますので、それぞれについて質問できれば良いでしょう。
とは言っても、「スタッフの皆さんは仲が良いですか?」といった直接的な尋ね方は好ましくありませんし、仮に仲が悪かったとして「いやぁ、実はあまり人間関係が良くなくてね…」なんて本音で答えてくれるはずもありません(笑)。
ややストレートですが、
「職場の雰囲気はどのような感じですか?」
でも悪くはありません。
もっと具体的に聞くのであれば、
「患者様の病棟ADLについて看護師の方々と検討する際は、どのようにコミュニケーション(連携)を取っていらっしゃいますか?」
とか、
「同じ患者様を担当しているOTやSTの方々とリハビリの方向性を共有する時は、カンファレンスなども随時開催されているとは思いますが、他に何か連携において工夫なさっている事はありますか?」
といった尋ね方が差し支え無いのかな、と思います。
ちなみに患者診療に関する定期的なカンファレンスは診療報酬算定上、義務づけられている面もあるので、連携手段としては特別工夫しているとは言えません。
なので、それ以外に何も答えが出て来ず口ごもるようであれば、ちょっとどうなのかな…と疑問に思ってみてもよいかも知れません。
②新人教育・職員教育
勉強熱心な方や、新人教育に不安のある方は絶対に聞いておきたい項目ですね。
例えば「定期的な勉強会の有無や、その内容」に関する質問はありがちです。
しかしここでは療法士としての知識・技術に関する勉強会の有無だけでなく、カルテ・計画書など書類の記載や処理・運用方法、診療報酬・介護報酬に関すること、医療安全や感染管理、個人情報保護、接遇、他職種との連携方法など、医療従事者ないし社会人としてトータルに教育する制度が整っているどうかを含めて確認することをおススメします。
以前私が部門長をしていた職場では、新人1名に対し2名の教育者を任命し、必要に応じてマンツーマンで診療に当たらせるなど1年を通じて教育するようにしていました。そういった教育システムが構築されているかどうかも重要です。
また、院外の研修会・講習会に参加するに当たって「研修費の助成」や「出張扱い(自分の休暇を使わなくてよい)」などの制度の有無も尋ねておきたいところです。
③リハビリ対象疾患・治療手技
対象疾患については多少の事前情報はあると思いますので、それを念頭に尋ねましょう。
治療手技については前述の通り「治療方法の偏りの有無」を把握する意味でも重要です。
基本的な理学療法技術もままならないのに特殊な手技に偏重してしまうのは、若手PTにとって好ましいとは言えません(私の個人的意見ですが)。
④平均在職年数(離職率)
離職率(毎年どれくらい退職者が出るか)は、その職場の健全性(過労・パワハラなど)を測る材料と言えます。
しかしながら「離職率は何%ですか?」という聞き方は何となく穏やかではないので、
「職員の方々は、だいたい何年くらい継続してお勤めの方が多いでしょうか?」
といった感じで尋ねてみてはいかがでしょうか。
⑤職員の経験年数・年齢・男女比
これについては、率直に尋ねてみても良いでしょう。
ベテランから中堅クラス、3年以下の若手など、あまり偏ることなく均一化しているのが理想であるとは思います。年齢層も、幅広く揃っていればバランスが良いですね。
男女比についても同様で、半々もしくは6対4くらいまでがベターであると言えます。
⑥既婚者の割合・託児所の有無
やはり女性の方々にとっては結婚・出産後も就労を継続できるかどうかが重要ですし、気がかりであると思います。
実際に子供を養育しながら勤めている療法士が多い職場であれば、育児と仕事の両立に理解があり、相応の対応が期待できると考えられます。
託児所の有無(もちろん利用条件も含め)も要確認です。
⑦有給休暇の取得状況
やや尋ねにくい項目かも知れませんが、ワークライフバランスという意味でも大切ですよね。
まずは年間の公休(日・祝・年末年始などの定まった休暇)が何日あるかを確認した上で、
「休暇を利用して講習会などに参加したいと考えているのですが、有給休暇については皆さまどの程度取得なさっているのでしょうか…?」
などと尋ねてみましょう。
ちなみに、年間公休数の目安としては
「120日以上」⇒かなり充実している
「110日前後」⇒まあまあかな…
「100日以下」⇒ちょっと少ないなぁ
といったところでしょうか。
公休数が少ないのであれば、なおさら有給休暇の取りやすさは重要です。
⑧残業時間
求人票に「1ヶ月平均10時間程度」などと記載している場合もありますが、あまりアテにはなりません。
気になる方は、
「職員の皆さまは、夕方はだいたい何時頃まで業務をなさっていますか?」
と切り出してみましょう。
⑨通勤手段(自動車通勤の可否など)
これも求人票などに記載しているかも知れませんが、気になる方は確認しましょう。
他にもまだまだ質問したい事はあるでしょうが、まずはこの辺で…。
くれぐれも「地雷を踏む」ことのないように気をつけましょうね。
私としては、職場選びにおいては「人間関係」と「職員教育」、そして安心して長期間勤めるための「労働条件」が最も大切だと思いますので、それらを軸にして質問していけば良いでしょう。
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3.さいごに
無事に施設見学を終えられたでしょうか…?
見学後の対応として、礼状を出しておくのも良いでしょう(「必須」ではないかも知れませんが)。
今まで申し上げた事(「第1候補以外は手を抜く」のはダメ)と矛盾するようですが、何としてもこの病院に就職したい! という最有力候補の施設ならば、それくらい丁重にしておいたほうがより確実です。
施設見学についてのおはなしはここまでにしますが、今後も職場選びの考え方や面接の注意点、転職に関する記事などもご提供できれば…と考えています。
最後までご覧下さいましてありがとうございました m(_ _)m
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