すなおのひろば

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【理学療法士の就職活動:その9】選考者側の視点で考える…⑤転職サイトの利用について

f:id:sunao-hiroba:20190216102625p:plain選考者側の視点で考えるPT就活シリーズの締めくくりは、転職サイト(人材紹介会社)の利用についてのお話です。

採用担当者&転職経験者、この両方を数多く経験してきた私なりに、できる限り客観的に考察していきたいと思いますが…例によって「すなおの私見」も多く含まれておりますので、なにとぞご容赦下さいませ。

※「転職サイト」と「人材紹介会社」は違う! といったご指摘もあるかと思いますが、ここでは便宜上、同一のものとみなして話を進めていきます。

※「人材バンク」とか「転職エージェント」という呼び方もありますが、これらも同義語として扱います。

 

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1.転職サイトって何?

まずは、転職サイトの概要についておさらいしておきます。

転職サイトとは、文字通り転職活動を支援・仲介する民間業者のことです。

<主なサービス>

◆事業者(医療・介護施設等)の求人情報をウェブサイトで一般公開

転職サイトに登録すると、「非公開求人」も閲覧できます。

◆希望条件に合致する求人があれば、登録済の求職者に対して随時連絡

専属の担当アドバイザーが個別にサポートしてくれます。

<アドバイザーのサポート内容>

◆求職者の希望条件に合致する求人を探し、情報を随時提供
◆施設見学・面接などの日程調整を代行
◆応募書類や面接対策などの個別アドバイス
◆雇用条件(給与等)・勤務開始日などの交渉を代行

<利用にかかる費用>

◆求職者は、サイト登録・サービス利用ともに無料
◆求人者側(病院・施設)は、採用が決まると転職サイト側に紹介料(成功報酬)を支払う

成功報酬は、就職者の年収の20~30%程度とされています(これが転職サイトの主な収益源)。

 

2.転職サイトに登録するメリットとは?

◆膨大な情報網を持っているため、自分の希望にマッチした求人情報が多く手に入る

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これが最大の利点と言って良いでしょう。
転職PTは通常、現職で働きながら転職活動をしなくてはならないので、情報収集を行う時間が限られています。

また、ハローワークの窓口対応(就職相談・紹介状発行等)は原則的に休日(土日祝・年末年始)には行っていないため、転職PTにとっては利用しにくいのです。

◆雇用条件の良い(?)非公開求人も閲覧・紹介可

ハローワークではすべて公開求人ですが、応募先の評判(優良な職場かどうか)などの情報には言及してくれないのが原則です(公平性の確保・トラブル防止の観点から)。

◆面接対策等、個別に相談に乗ってくれる

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応募書類の添削も含め、担当アドバイザーが親身になって相談に応じてくれます。

ただ意外と知られていませんが、ハローワークでも面接対策・応募書類等についての相談・援助は行っています(スケジュールが合えば、担当者を個別指定することも可能)。

◆「給与条件の交渉」のような面倒なことを代行してくれる

これも、条件交渉の矢面に立つことが億劫な人には大きな利点と言えるでしょう。

ハローワークでは、条件交渉の仲介はしてくれません(求人票の記載内容と明らかに反する条件を面接の際に提示された場合などは別ですが)。

 

3.「転職サイトおススメ派の論理」に対する考察

各種ウェブサイト等において、転職サイトに登録するメリットをことさらに強調するような文言も最近では多く見られます。

それに対し、「すなおのひろば」独自の視点で考察してみましょう。

①転職サイトに求人登録する病院・施設は、優良な事業者である

理由は、

「成功報酬を出してでも(負担を背負っても)良い人材を探したい…すなわち本気度が高い事業者であるから」


という理屈のようです。

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逆にハローワークは無料で求人公開でき、成功報酬も発生しないため、「たまたま良い人材が応募してくれたらラッキー」といったブラック事業者が多い…というものです。


しかし私の採用担当者としての経験上(ある意味、経営者側の立場)、必ずしもそうではないと思います。

求人者側としては、余分な経費(成功報酬)などかけずに多くの人材を集められるのなら、それに越したことはありません。

本気で人材を探したいなら病院ホームページの「採用情報欄」を充実させるべきですし、ハローワークへの求人登録も欠かせません。

PT養成校への求人票送付や、PT協会の機関誌への求人情報掲載といった方法もあります。

募集する側としては、これらの媒体を通して連絡・応募してきてくれたら一番都合が良いのです。


仮にこのような「へ理屈」がまかり通るのなら、逆の言い方として

「雇用条件が良くないからホームページやハローワークだけでは人が集まらず、結果として転職サイトに頼らざるを得ない。だから転職サイトの求人は優良とは言えない病院・施設が多い」


という理屈もまた通るのではないでしょうか。

②雇用条件の良い求人は応募者が殺到して選考に支障を来すため、あえて非公開になっている

この理屈も①と同様、私は「おかしい」と感じます。

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確かに条件の良い求人には応募者が集まります。
そして病院・施設側は、多くの求職者を集めてチョイスしたいからこそ求人を出しています。

殺到するから非公開で小出しに…というようなやり方では、多くの応募者の中から質の高い人材を厳選することができないのではないでしょうか?

第一、応募者が殺到するから困る…などと言う人が本当にいるとしたら、人事担当者としては失格でしょう。
全員に対し面接試験を行わなくてはならないわけではなく、書類選考で振るいにかける事もできるのです。

登録すれば条件の良い非公開求人が閲覧できるということは、当然ながら「登録しなければ条件の良い求人は閲覧できず、紹介もしてもらえない」ということでもあります。

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転職サイトとしてはその商売を成立させるために、まず登録させたい(顧客を集めたい)のだから、お互い「暗黙の了解」なのでしょうが…。

非公開求人で「客引き」するようなやり方は、私個人としてはあまり肯定的ではありません。


ちなみに、求人者である病院・施設側の見方として…

「自分で就職先も探せず、見学・面接などの日程調整の電話対応もできない」
「雇用条件の交渉も自分では行えず、転職という人生の選択を人任せにする」

⇒このような求職者は、そもそも質の劣る人材である。

そう考える向きもあります。

これはある意味「偏見」でしょうし、これだけ人材紹介業が一般化している現代においては「時代遅れ」の考え方とも言えます。

ただ、そのように捉える雇用者(採用担当者)も未だ存在するということは申し上げておきましょう。

 

4.デメリットはあるのか?

ここで、三者それぞれの利害を整理してみたいと思います。

◆転職サイト
メリット:就職が決まれば成功報酬が得られる(商売として成り立つ)。
デメリット:競合他社が多い。生産年齢人口減少に伴い、今後は過当競争に。

◆求人者
メリット:事業者側のニーズに適合した求職者を多く紹介してもらえる。
デメリット:成功報酬(年収の20~30%)を支払わなくてはならない。

◆求職者
メリット:多くの求人情報が得られ、日程調整や条件交渉も代行してくれる(しかも、すべて無料)。
デメリット:なし(???)


f:id:sunao-hiroba:20190216115925p:plainこれだけを見ると、デメリット(負担)が大きいのは求人者のみであり、求職者である転職PTにとっては一見「良いことづくめ」のように思われます。

しかし、本当にそうでしょうか…?


仮に年収400万円とすると、事業者は少なくとも80万円の成功報酬を転職サイト側に支払うことになります。
これは、貴方に支払われる400万円とは別に必要となる経費です。

負担するのはあくまでも雇用者側ですが…しかし貴方はその職場に就職するのです(当たり前ですが)。

ということは、巡り巡って貴方がその「しわ寄せ」を喰う可能性がまったく無いと言えるのでしょうか…?

あとは各々のご想像にお任せします。

 

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5.転職サイトはPTの待遇に好影響をもたらすのか?

私がPTになった21年前とは比較にならないくらい、現在は医療資格に特化した人材紹介会社が乱立しています。

収入UPを求めて転職する医療従事者の方々も多くいらっしゃるでしょうし、実際に転職サイトを利用して希望通りの待遇の職場に就職できた人もいるとは思います。

ただ、PTに限定してみると、転職サイトの台頭は今のところ「PT全体の年収の底上げ」にそれほど好影響をもたらしてはいないのではないかと考えられます(図1)。

 図1:「主な医療関係職種の給与水準

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◆主な医療関係職種の給与⽔準は、加重平均でみて、上昇トレンドを続けてきた。
◆医療関係職種の中でも、特に医師・⻭科医師・薬剤師などの給与⽔準の伸びが⼤きい。

※図表引用元:財務省 財務制度分科会 資料(H29/10/25)『社会保障について②各論』

 

まぁ、PTの給料が上がらないのは主に「資格取得者の激増」と「診療報酬の引き下げ」によるものですし、すべての転職PTが転職サイトを利用しているわけでもありませんが、一応参考までに…。

 

6.私のアプローチ方法は…

これも参考になるかどうか分かりませんが…私自身の経験として、転職活動の際どのような媒体からアプローチしたかについて述べておきます。

ハローワーク求人:3割
◆転職サイト情報:3割

◆病院ホームページ検索:2割
◆知人からの紹介:1割
◆PT協会機関誌の求人情報欄:1割

全体の割合としてはだいたいこのような感じでしょうか。

そして、最終的には「ホームページ検索・知人紹介・機関誌情報」の中から就職先を選びました。
これはたまたま巡り合わせでそうなっただけであり、ハローワークや転職サイトの求人が信用できなかったわけではありません。

むしろ今まではハローワークを積極的に活用してきました。

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ハローワーク公共職業安定所)は私たちが負担している雇用保険や国庫を財源として運営される、厚労省管轄の公的機関です。
そういう意味で、事業者・求職者ともに、利用しないのは勿体ないと思います。

ハローワーク職員の怠惰な仕事ぶりが一部ネット上で揶揄されていることもあるようですが、私自身の利用経験で言うと、この10年くらいの間に窓口対応はかなり改善されたような気がします。

ちなみに、ある信用できるハローワーク職員からは

「使う使わないは別として、民間の転職サイトの登録はしておいたらいいよ。情報量は多いしね。それに必ずしも勧めてくる求人に応募する必要もないのだから」

f:id:sunao-hiroba:20190216120513p:plainとアドバイスを頂きました。

ハローワークでは応募先の評判などの情報には言及してくれない」と先述しましたが、ある程度通い詰めて担当職員との信頼関係ができると、それとなく匂わせてくれたりもします。

 

7.さいごに…選択は貴方次第

今回、転職サイトのことを少しネガティブに記述した部分もありますが…。

もちろん、転職サイトを利用し納得できる好条件で就職できた例も数多くあることは、改めて申し上げておきましょう。

いずれにせよ、「想定されるデメリット」も踏まえた上で、メリットの方をより重視されるのならば積極的に利用すれば良いのではないでしょうか。


現代はとにかく情報量が桁違いに多いですから、真偽不明な情報に惑わされないよう、転職サイト・ハローワーク・ホームページ検索などを随時使い分け、上手に活用していきたいものです。

f:id:sunao-hiroba:20190216121448p:plain利用しているつもりが、結局いいように利用されて「割を食う」ことになってしまわないよう、したたかに行動したいですね。

皆さまの就職・転職活動が成就するよう、陰ながら応援しています。

最後までご覧下さいましてありがとうございました m(_ _"m)

 

 

www.sunao-hiroba.com

 

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