リハビリテーションの本来の意味合いがご理解頂けたところで、ここからは「理学療法」の定義に基づき、その対象と目的、および実際のアプローチ手法等についてご紹介しようと思います。
概念的な内容が主になりますので少し退屈かもしれませんが、しばらくお付き合い下さいませ…。
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※このブログにエントリーされる方々は、PTをめざすために、すでにインターネットその他さまざまなメディアを用いて下調べをなさっていることでしょう。
この記事だけではPTの業務内容について十分把握できない、といった方々は、
上記サイトを閲覧して頂くと、私の駄文・雑文よりも分かりやすく、より理解が深まるかと思いますので、ぜひご参照下さい。
1.「理学療法(physical therapy)」とは
資格法である「理学療法士及び作業療法士法」の第二条には、理学療法の定義として、
「身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えること」
と記されています。
※作業療法の定義は、
「身体又は精神に障害のある者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作その他の作業を行なわせること」
ということになっています。参考までに。
ただ、昭和40年にこの法律が施行されて以降、これらの定義については全く変更・改正を受けていないため、現在のPTの業務内容や範囲を100%正確に表しているとは言えません。
ですので、少し整理してみようと思います。
2.理学療法の対象
法的には「身体障害者(疾患や外傷による手足の機能低下・欠損など)」を理学療法の対象としています。
ただ実際には作業療法士(OT)と同様、精神・心理面に障害を有する人も対象となることが多々あります。
例えば認知症の悪化防止・改善を目的とした「認知症患者リハビリテーション料」は、PTも算定できる診療報酬項目となっています。
※「身体障害者」の定義には視覚・聴覚障害なども含まれていますが、PTが直接的な治療アプローチを行うことはなく、むしろ視能訓練士(CO)とか言語聴覚士(ST)の業務範囲でしょう。
また、高齢者やメタボリックシンドロームの方々に対して、運動機能の低下を予防するために各種指導を行ったり、スポーツ選手の競技パフォーマンス向上を目的として介入するなど、PTの対象は身体障害者に限りません。
近年は、特に予防医学の分野での活躍がPTには望まれているといえます。
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3.理学療法の目的
理学療法の目的は、法律の条文によれば「基本的動作能力の回復を図るため」とあります。
基本的動作とは、寝返り・起き上がり・立ち上がり・立位保持・歩行などの、要素的な動作群を指します。
それに対し、作業療法の定義の中で記されている「応用的動作」とは、日常生活上の目的をもった動作群を指し、食事・排せつ・入浴・書字などが挙げられます。
これら応用的動作は「日常生活動作(Activities of Daily Living;ADL)」とも言います。
例えば排せつという一連の行為は、トイレまでの移動や立ち座り、手を使用したズボンの上げ下ろし、清拭など、基本的動作の組み合わせによって達成されます。
しかし実際のアプローチとしては、PTも「ADL訓練」と称して排せつや入浴動作などを評価し、より安全かつ効率的な実施方法を指導するなど、通常の職務の範囲内で行っています。
現実問題として、ある入院患者さんに対し、PTは基本的動作、OTは応用的動作の訓練をそれぞれ分担して行うといったことを明確に線引きするのは難しく、また患者さんにとって必ずしも有益とは言えません。
なぜなら、前述したように基本的動作の複合・連続によって応用的動作が可能になるわけですから、動作訓練を行う際にそれを完全に分断してしまうのは非合理的です。
なので、同一施設内にPT・OT両方が在籍している場合、ADLの評価や訓練の内容については担当のPTとOTの間で協議しながら分担できる領域については適宜分担しつつ、必要に応じて共同して行うといった手法が取られている場合が多いです。
※PTの有資格者数は約14~15万人に対し、OTは8~9万人と相対的に少ないことも、分担が難しい要因のひとつであるといえるでしょう。
次回は、理学療法の手段についてご説明します。
しばしお待ち下さい…。
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