数日前のことですが、地下鉄の駅構内で倒れている女性に遭遇しました。
救急隊が到着するまでの間、私は通りがかりの数名の方々とともに救護に当たりました。
これまでにも何度か同じような場面に出くわしましたが、いざという時には、たとえ医療従事者であっても動揺してしまうものです。
※当記事は応急手当について正確にレクチャーするものではありません。より専門的に学びたい方々は下記のウェブサイト等をご参照下さい。
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1.対応の一部始終について
私は仕事帰り、地下鉄の某駅で乗換えのため先を急いでいました。
すると、昇りエスカレーターを上がってすぐの所で、中年の女性と高齢の男性が折り重なるように倒れています。
女性の方はうつ伏せで苦しそうにしており、一方、高齢男性はしゃがみ込んだまま何か大声でわめいています。
男性の方は外傷は無さそうですが、どうやらアルコールが入っているようです。
状況的には、まず男性が降り口でつまずき、すぐ前にいた女性が巻き添えで引き倒されたという感じでした。
ちなみに私はそのエスカレーターに乗っていたわけではなく、脇の通路を反対方向へ歩いている時に遭遇しました。
エスカレーターからは他の利用客が次々と昇って来ており、倒れている2人の両脇をどんどん通り過ぎて行きます。何人かは少し立ち止まって、遠巻きにのぞき込んでいるようですが…。
「誰か助けてあげないの?」と思いたくなる光景でしたが、訳の分からないことをわめいている高齢男性が異様で、何となく近寄り難い雰囲気だったことも確かです。
1)安全確保
私は倒れた女性に近寄り、話しかけました。
大丈夫ですか? 動けそうですか?
いえ、ちょっと無理です…。
エスカレーター降り口に留まるのは危ないと感じましたが、脚を怪我しているようで動けません。
痛いのはどちらの脚ですか?
股関節ですか? それとも膝?
左の膝と、足首も。痛くて動かせない…。
あと、私はもともと右の足首も悪いので立てそうにないです。
失礼ながら女性としては体格も大きめの方で、動くのがとてもつらそうでした。
介助して降り口から少し引き離し、横向きに体位変換しました。そして私のボディバッグを枕代わりにして頂きます。
幸い、ちょうど『回復体位』のようになりました。
2)怪我の確認
失礼して、裾をまくって患部を確認させて頂きます。
左膝に擦過傷(すり傷)と内出血。左足首も少し腫れている感じ。
膝蓋骨(膝のお皿)か、下腿骨(脛骨・腓骨)のいずれかが骨折しているかも…と予測しました。
打撲や軽い捻挫程度なら、動かせることも多いからです。
股関節周囲が痛む場合、最も厄介な大腿骨頚部骨折が考えられますが、そうでは無さそうなので少し安心。
脈拍は1分間で90台と、正常値(70~80)よりも少し速めですが、触診可能なため血圧はたぶん大丈夫。
血圧が高いのをやたらと気にする人が多いですが、本当に怖いのは低くなった時。
顔色も問題なさそうです。
3)協力者現る・救急車の要請
通りすがりの30代ぐらいの男性、Aさんが協力を申し出て下さいました。
何かできることはありますか?
脚を骨折してるかも。ここから動かすのは難しそうです。
救急車を呼んで下さい。
わかりました。
そうこうしているうちに、駅員2名が到着。
すぐに非常停止ボタンを押してエスカレーターを止めました。
私を含め、誰もそこに思い至らなかったのは大失態💦
他にも、20代と50代ぐらいの女性、Bさん・Cさんが声をかけて下さいました。
これで一般人の協力者は3名。心強いです。
止まったエスカレーターをずんずん上がってくる利用客や、高齢男性がわめいて救護の邪魔になるのをAさんと駅員が制してくれました。
Bさん・Cさんは倒れた女性の散らばった荷物を整理し、「家族の方へ連絡しなくてもいいですか?」と気遣います。
独り暮らしなので…すぐに連絡するところはないです。
私は倒れた女性に付き添います。
やや動転しているようだったので、
大丈夫です。私、いちおう医療従事者ですから🎵
もうすぐ救急車も来ますよ。
理学療法士は、傷病者への一次対応はそれほど得意ではありません。
もちろんリハビリ中の急変に対応するケースはよくありますが、医師や看護師・救急救命士などと比べると専門性は低く、経験も浅いです。
まぁ、傷病者を安心させるためのハッタリですね。医療従事者というのはウソではありませんが😅
4)なかなか来ない救急隊
救急隊が到着するまでの時間が、永遠のように思えました。
3名の協力者の方々も「こういう時間ってホントに長く感じられますよね」「遅いのはやっぱりコロナの影響ですかねぇ」などと、全く同じ感情を口にします。
現場は地上への出口が近いため、風通しが良くて寒いのなんの。
私は自分の上着を女性に掛けましたが、それでも凍えそう。
Bさん・Cさんが、通りすがりの利用客に「どなたかカイロを持ってませんか~!?」と尋ねて回ります。
カイロ入りのコートをさらに2枚・3枚と被せました。
救急車はすぐに来るだろうと安易に考えていたので、担架や車椅子などは駅員に依頼しませんでした。
私以外の協力者は医療従事者ではなさそうですし、下手に動かすと危険だと判断したからです。
こんな事ならあえてリスクを取って担架へ移し、暖かい部屋へ搬送して待つべきだったか…。
私はちょっと後悔しました。
5)バトンタッチ
ようやく救急隊員3名が到着しました。
感覚的には40分ぐらい待たされたように思えましたが、実際には通報してから20分程だったようです。
ストレッチャーへ移すイメージだったのですが、隊員は非常搬送用の小さな車椅子を持参しました。
駅内の狭いエレベーターへの搬入を考えての事かも知れませんが、座らせるのはなかなか大変のようで、少し疑問に思えました。
PTは傷病そのものへの一次対応は不得手ですが、身体介助はまぁ得意な分野です。
若い女性隊員に、
いちおう私も医療従事者なので、協力できることがあれば…
そう申し出ましたが、丁重に「ありがとうございます。あとは私たちで対応します」と言われたので、お任せしました。
そして協力者の方々にお礼を述べ、立ち去りました。お役御免です😅
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2.意外と難しい応急手当
PTは無論のこと、一般の方々も一度は救命講習などを受講された経験があると思います。
私も職場で定期的に開催される講習会の他、院外で開かれている研修会にも自発的に参加するようにしていました。
ただ、そこで学ぶのは心肺蘇生法やAEDの使用方法などが中心。意識が無く心臓が止まっているような重篤なケースを想定しています。
意識はあるけれども苦しんでいるとか、大怪我をしているといったような事例では、処置が意外と難しいもの。
なぜならケースバイケース、対応のバリエーションが多岐にわたるだからです。
今回私が遭遇した件でも、バイタル(呼吸・血圧・脈拍・体温・顔色など)に問題があったり、大量に出血している場合であれば、対応がまた違ってくるでしょう。
そう考えると、やはり以下のような基本手順だけでも確実に遂行することが大切なのでしょうね。
これらは心肺蘇生にも共通するところです。
①傷病者および救護者自身の安全確保。
②意識状態・怪我の部位の確認。
③周囲に協力を求める。
④119番通報。
⑤怪我の手当・体位の保持。
こうして綴ってみると、今回のケースでは私自身いくつか不適切なところがあったと反省しきりです。
ということで、次回はさらに昔経験した出来事について、改めて振り返ってみたいと思います。
このたび、不運にも怪我をされた女性にお見舞い申し上げます。
勝手ながらブログネタにしてしまい、申し訳ございませんでした m(_ _)m
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