すなおのひろば

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【五十肩とともに生きる:その3】筋トレで痛みを克服しよう!…慢性期~回復期の運動について

f:id:sunao-hiroba:20200925170102p:plain五十肩シリーズ締めくくりの今回は、慢性期~回復期の運動方法について述べたいと思います。

基本的に、慢性期以降は日常生活のなかで積極的に肩を動かしていけば良いのですが、依然として痛みが続いている人は初心に返り、簡単な動かし方から始めてみましょう。

無理せず、あきらめず、ご自身で痛みをコントロールする方法を身につけて下さいね。

※この記事では一般的に知られている知見に加え、私の臨床経験を踏まえた私見も交えています。一部の医療従事者の方々からは異論もあると思いますが、何とぞご容赦下さい。

 

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1.可動域拡大運動

五十肩の通常のプロセスをもういちど確認しておきましょう。

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慢性期は「拘縮期(関節が硬くなる時期)」とも云われますが、急性期のうちに適度に動かしていれば後々拘縮に悩まされることは少なく、スムーズに回復期へつなげられます。

それに、次項で述べる筋力トレーニングも、関節が柔らかいほうが行いやすいものです。

 

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一方、強い痛みのため急性期でほとんど動かせなかったという人は、痛みが和らいだ慢性期の段階ですっかり硬くなってしまっていることも…。

しかしそんな場合でも、いきなり硬い(or 痛い)方向へ動かすことはお勧めしません。
これは急性期の時と同様です。

まずは自分にとっていちばん得意な動き(動かしやすく痛みの少ない方向)を見つけ、その運動を重点的に行いましょう。

「得意な動き」と言われても全体的に動かしにくいからなぁ…とお悩みの方は、前回の記事でご紹介した運動(両手を組んで上げ下ろし体操)から始めてみましょう。

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背中が床に接しているため肩甲骨がグラグラせず、腕の動きがコントロールしやすくなります。

 

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前方空間へ腕を伸ばす動きが確保できれば、あとはどの方向へ動かしても基本的に大丈夫でしょう。

回数なども、特に指定はありません。どれだけ積極的に動かせるかが鍵です。

いくつかの注意点はありますが、それについては後述します。

 

2.筋力トレーニン

さあ、ここからが本題です。

急性期では関節の柔らかさを確保することが第一課題ですが、慢性期以降は筋力トレーニングも積極的に取り入れたいものです。

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ここで大切なのは、「筋力を強くする」よりも「全体の協調性を高める」ことです。

肩周囲の筋群が互いに助け合いながら作用することで、関節の動きがスムーズになり、痛みの誘発を抑えられるからです。

 

では、どうすれば筋の協調性を高められるのでしょうか?

ここで、筋トレの方法論について少し述べておきます。


①OKCトレーニン
<OKC=open kinetic chain(オープン キネティック チェーン)>

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「開放運動連鎖」とも呼ばれます。
身体の中心側が固定され、腕や脚の末端部(手足の側)が自由に動く運動のことです。

利点:鍛えたい筋肉をピンポイントに刺激することができる。
欠点:動いていない筋肉は刺激されないため、筋の協調性が身につきにくい。

②CKCトレーニン
<CKC=closed kinetic chain(クローズド キネティック チェーン)>

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「閉鎖運動連鎖」とも呼ばれます。
腕や脚の末端部(手足の側)が壁や床で固定された運動のことです。

利点:複数の筋肉を同時に使うため、全体的な協調性を高めることができる。
欠点:自分の体重が負荷になるため、運動強度の微調整が難しい。


 

上記の理論から勘案すると、五十肩の場合、どうやらCKCトレーニングの方が良さそうです。

 

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肩の筋トレの場合、ゴムバンドなどを用いた①腱板トレーニング(OKC)でインナーマッスルを鍛えることを推奨する人も多いようですが、私個人としては特にお勧めはしていません。

理由としては、OKCの「協調性が習得しにくい」という欠点に加え、以下のことが挙げられます。

◆腱板(棘上筋・棘下筋など)を選択的に刺激するのは技術的に難しい。

◆中高年では腱板そのものが劣化しており、リスクの割に効果が期待できない。

※異論もあるかと思います。あくまでも私見です。

 

これらのことから、私は『壁腕立て伏せ』を第一選択としています。

1)壁腕立て伏せ

詳細は以下の過去記事をご覧下さい。


より積極的に筋力を高めたいという方は、徐々に角度をつけて『床腕立て伏せ』へ移行するのも悪くはありません。

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ただし、中高年女性などの場合は負荷が強過ぎます。

肩を構成する筋群全体の協調性を高めるのが真の目的なので、まずは壁腕立て伏せを基準にして頂けると良いかと思います。

2)拭き掃除

OKCとCKCの中間的な運動であり、おススメ度は高いです。


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f:id:sunao-hiroba:20200925190154p:plain前後左右、広い範囲を動かすことで、協調性向上とともに可動域の拡大にもつながります。

肩よりも高い位置に腕を上げると負担が増すので、テーブル拭きから始めると良いでしょう。

腕だけで拭くのではなく、上半身の動きでアシストしてもOKです。

慣れてくれば鏡や窓拭きへ移行するなど、家事を兼ねて積極的に動かしていきましょう。

 

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3.実施する際の注意点

 

1)炎症の再燃

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運動後、とくに夜間ズキズキするような痛みがある場合は炎症の再燃が考えられます。
「慢性期~回復期だから炎症は起こらない」とは限らないので、留意は必要です。

とは言え、全く動かさないのも良くないというのは前回の記事で述べた通りです。

動かす方向を修正したり、運動の強度・回数・頻度を再考するなど、ご自身で工夫してみましょう。

2)肩峰下インピンジメント症候群

可動域拡大運動・筋力トレーニングともに、肩峰下インピンジメントを誘発するような動きには特に注意しながら行いましょう。

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肩の外側部の痛みはインピンジメントの徴候として重要です。

 

4.さいごに…心身の調和を保つこと

f:id:sunao-hiroba:20181109191846p:plainウォーキングやラジオ体操などの軽い全身運動は五十肩を未然に防ぐには最適ですが、症状の改善にも効果があります。

ウォーキングは全身の血液・体液循環を高め、肩に滞っている疼痛物質を流してくれます。

腕を振り続けるため、コッドマン体操と同様に関節包・靭帯の柔軟性を高める効果もあります。

ラジオ体操も効果は同じですが、腕を真横に振る動きもあるため肩峰下インピンジメントには注意が必要です。

 


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一般の方々も医療従事者も、「肩の疾患だから肩を治療する」というような要素還元的な考え方にとらわれがちです。

しかし実際にはそれだけでは不十分で、適度な運動・バランスの良い栄養摂取・ストレスを溜め込まないなど、心身全体の調和を保つことがあらゆる慢性疾患を予防・改善する上で重要のようです。

なかなか難しいことですが…。

私自身、PT歴20数年にして、今さらながらそのことに気づいた次第です😅

 


五十肩シリーズは今回で区切りとさせて頂きますが、肩の痛みでお悩みの方々に当記事が少しでも参考になれば幸いです。

最後までご覧下さいましてありがとうございました m(_ _)m

 

 

 

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