このシリーズでは、私が理学療法士(PT)としての21年間でやらかしてしまった、さまざまな失敗体験を綴っていきます。
前途ある若手PTの方々や、これからPTをめざす人へ向けての話であることはもちろんですが、リハビリを受ける側の一般の方々にも参考にして頂けるような内容にしたいと思います。
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1.失敗項目いろいろ
まずは、どのような失敗をこのシリーズで扱うのか、その項目を列挙してみます。
①医療事故
本来あってはならない事ですが、例えば歩くのが不安定な患者さんに対し歩行訓練を行うとなると、どれだけ注意しても転倒事故はゼロにならないものです。
転倒まではいかなくとも、患者さんが突然バランスを崩して倒れそうになりドキッとした経験は、全てのPTに思い当たることと思います。
そのような、いわゆる「インシデント(ヒヤリハット)」も含め、事故防止対策といった視点で例示できればと考えています。
②患者さんの状態が改善しない
一生懸命アセスメントしてリハビリプログラムを試行錯誤するものの、なかなか患者さんの状態が思うように改善しない…。
このような事も、多くのPTにとっては失敗と言うより「日常的な悩み」として感じていることでしょう。
③患者さん(ご家族)とのコミュニケーショントラブル
対象者とのコミュニケーションがうまくいかないと、前述した「状態の改善」にも悪影響を及ぼすものです。
また、明らかな「クレーム」を受けるといったケースもありますが、それが正当な苦情であれ悪質なクレームであれ、PTにとってはかなりのストレスになってしまいますよね…。
④事務処理上のミス
PTになってみて再認識した方々も多いことでしょうが、事務処理能力は医療従事者にとって必要不可欠なものです。
私は大きな事務処理ミスについては比較的少ない方だと思いますが、それでもケアレスミスはゼロにはなりません。
また、管理職として部下のミスをフォローしたケースは多く、対策を講じるのに苦労した記憶があります。
⑤職場の人間関係上の失敗
この項目は、私の失敗の中核を成しているものです。
どれから話したらよいか迷うほど多くの例があります (゚ー゚;A
いや、これは全ての社会人共通の悩みであり失敗体験と言えるのかも知れませんね。
⑥職員教育・リーダーシップに関わる失敗
主に管理職になってからのことで、組織の統轄に関わるトラブル・失敗についてお話しできればと考えています。
よく「褒めて育てる」のが理想と言われますが、実際なかなか難しいものです。
2.医療従事者として失敗談を語るに当たって
ここで、さっそく具体的な失敗の内容に入っていきたいところですが…。
当シリーズを始めるにあたり、どうしても最初に申し上げておかなくてはならないことがあります。
例によって、皆さまが一番知りたいことを後回しにする筆者の悪い癖ですが、しばしお付き合い下さいませ。
①自己満足とならないように…
医療従事者としての失敗ということになると、医療事故に言及するのは避けられません。
また、「患者さんの状態が改善しない」という項目もそうですが、これは患者さんにとって不安この上ないものであり、人生を左右しかねない事態でもあります。
もちろん、対象者が進行性の難病とか非常にご高齢の方であれば、なかなか状態の改善に結びつかない事もあります。
しかしそうではなく、本来普通に回復していくはずが一向に良くならないといった場合、医療者側としては焦ります。
PTはそれを「日々の悩み」として自分目線で捉えがちですが、実は患者さん(ご家族)に多大な迷惑を掛けており、専門職としての責任を問われても仕方の無いケースもあります。
こうなると、明らかに「失敗」と言えます。
すなわち、この新シリーズでは
「対象者に不利益を生じさせてしまった事例」
を一部題材にするものです。
ブログは、運営者の承認欲求を満たすためのツールであるとも評されます。
私自身はPTとして「ブログを通じて社会貢献したい」などと格好の良い目標を立てて開設したつもりなのですが、アクセス数やアドセンス収益が気になったりするのは多くのブログ運営者の方々と同様であり、承認欲求の塊であることを認めざるをえません。
そういう意味では、自己満足のために「患者さんに不利益を生じさせた事実」を利用するのか、といったご批判もあろうかと存じます。
そのようなご指摘も謙虚に受け止め、可能な限り多くの方々の参考となるよう、私にできる精一杯の努力をしていきたいと思います。
やや開き直り気味ですが、今の私には自身の経験を拙いブログで発信するぐらいの力量しかありませんので…。
②個人情報・プライバシー権について
当然のことですが、特に患者さんの診療に関わる題材については、個人情報・プライバシー権に抵触しないよう充分留意します。
あくまでも実体験を元にした内容としたいのですが、対象者に関する詳しい情報や、診療状況についての事細かな言及は避け、できるだけ一般化してお話しできればと考えています。
どうかご容赦下さい。
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3.失敗は成功のもと…か?
そもそも失敗は人生にとって無駄なことか? と聞かれると、皆さんはどう答えるでしょうか。
私自身も含め、多くの人が「無駄ではない。教訓であり、人を成長させるもの」と返答するでしょう。
実際、「成功体験」は人に自信を与えてくれますが、逆境の際にはむしろ「失敗体験」が活きてくることが多いようにも思えます。
そういう観点で言えば、PTを含め医療従事者の失敗は決して「悪」とは決めつけられるものではありません(実際に医療事故に遭われた方には申し訳ありませんが…)。
“To err is human” = 人は誰でも間違える
という考え方は、医療安全対策では基本の「き」でもあります。
しかし、ここで大事なのは
1)ヒューマンエラー(誰でも一定の確率で起こす人為ミス)
2)医療人としての知識・経験不足や性格傾向に起因するミス
3)医療システムや人的・物的環境の不備
これら3つの要素をごちゃごちゃに混同してしまわないことでしょう。
最近よく問題視されている「高齢者の暴走事故」など、その典型ではないでしょうか。
1)ヒューマンエラー
⇒アクセルとブレーキを「うっかり」踏み間違える。
2)知識不足
⇒交通ルール・運転操作系の把握不足。
3)システム上の不備
⇒操作系:ペダル配置・シフトレバーの問題など。
⇒センサー系:自動ブレーキの感度の問題など。
⇒免許更新制度の不備など。
これらは別々に考慮すべきものもあれば、互いに関連し合っている項目もあります。
例えばシフトレバーの操作方法が人間工学的に不適切であると、急発進などのヒューマンエラーが生じやすくなるものです。
エラー要素をよく整理して原因分析をしないと、「運転していた高齢者が悪い」といった一方的・感情的な論調に終始してしまい、根本的な安全対策にはつながりません。
私自身、以前の職場で『医療安全管理者』として病院全体のリスクマネジメントに関わっていたのですが、「まさかこんなミスありえないよな…」というような事をやらかすのが人間なのだという事を痛感させられたものです。
第1項に挙げた私自身の①~⑥の失敗項目についても、失敗の原因となる3つの要素が単独で含まれていたり、あるいは複合的に絡み合っていたりします。
ですので、このシリーズでは私が経験した失敗をできるだけ客観的・多角的な視点から分析し、読者の皆さんにとって有用なものとなるようにしていきたいと考えております。
前置きが長くなり大変申し訳ございませんでした。
次回は、リハビリ実施中の転倒事故に関するお話しをしたいと思います。
最後までご覧下さいましてありがとうございましたm(_ _)m
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