すなおのひろば

中高年の健康と若手PTの未来をサポートするブログ

◆1992年5月22日 - 映画監督の伊丹十三が、映画『ミンボーの女』に反発した暴力団員に自宅前で斬られる。

【すなおのPT失敗談:その12】ST募集を巡るバトル …<後編>指示箋八つ裂き事件

f:id:sunao-hiroba:20220401163530p:plain嚥下障害への対応が不十分なA病院。
リハビリ科の科長だった私は、上司にSTの雇用を提案しました。

やっと稟議書が通り、求人を開始したものの、何ヶ月経っても応募者は現れません。
雇用条件(時給)が悪過ぎたためです。

やりきれない思いで、その状況を甘受するしかない日々が続きました。

 

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5.Y医師からのリハビリ依頼

f:id:sunao-hiroba:20220401163530p:plainそんな中、Y医師(内科医)が着任しました。
当時40代前半。私とほぼ同年齢です。

就任するや、Y医師はあらゆる部署で不満を爆発。
前に勤めていた職場とA病院を比較して、

「何で紙カルテなんか使ってんの? 今どき電子カルテは当たり前やろ!」
「この病院には◯◯の設備も無い。ちょっとおかしいんとちゃうか?!」

といった具合です。


そんなY医師から、ある時リハビリの依頼が来ました。
私はイヤな予感がしました。

f:id:sunao-hiroba:20220401163530p:plainSTが不在のため、A病院のリハビリ指示箋はPT(理学療法)とOT(作業療法)しかチェック項目がない書式になっています。
ですが、Y医師は備考欄にわざわざ「嚥下障害に対する評価とリハビリ」と手書きで書き込んであります。

STによる直接嚥下訓練を指しているのは明らかでした。

 

6.ネチネチと責められる

私はY医師のもとへ出向きました。

当院にはSTが在籍しておらず、直接嚥下訓練には対応していないこと。
そして、間接嚥下訓練であればPT・OTでも実施できる旨を説明しました。

すると…

 

はあぁ? この病院にはSTもおらんの?!
こんなに嚥下障害の患者が多いのに?
いったいど~なってんの、この病院は!!

はい……申し訳ございません。

 

私は、ST募集までの経緯をかいつまんで説明しました。

 

それはあんたの力不足ちゃうの?
理事長を説得して、どうにかすんのが科長の仕事やろ!!
今まで何やってたんや?!

 

f:id:sunao-hiroba:20220401163530p:plain場所は、病棟のナースステーション。
そこには看護師長や若手のナースも大勢いました。

が、私をフォローしてくれるはずもなく、ニヤニヤしながら遠巻きに眺めているだけ。悪趣味です。

 

ったく話にならんな、ここの職員は!
どうなってんねん、この病院……ブツブツ……。

…………。

 

相手を罵倒するというよりは、時間を掛けてネチネチと攻撃するタイプ。
さらにA病院への不平不満をタラタラと垂れ流します。

私はそれを延々と聴かされ続けました。

 

7.すなお、キレる

 

あ~、もうええわ。そっちには頼まんから。

あの……ご指示についてはどのように対応すればよろしいでしょうか?
間接訓練で良ければ私が……

だから、STおらんから直接訓練は出来んのやろ?
それ、処分しといて!!

 

Y医師は、指示箋を私の方へポイッと投げつけました。

 

………。

 

f:id:sunao-hiroba:20220401163530p:plainその瞬間、頭の中でプツッという音が聞こえたように感じました。

「ビリビリ~ッ!!」

私は指示箋をわしづかみにするや、Y医師の目の前で八つ裂きにしました。

 

…………💦

 

f:id:sunao-hiroba:20220401163530p:plainY医師は、あっけにとられていた様子でした。

看護師長や若手ナースたちも凍り付き、場はシーンと静まり返ります。

叩き破った指示箋をポケットに突っ込んだ私は、黙ってその場を立ち去りました。

 

8.病院組織のヒエラルキー

「八つ裂き事件」のウワサはあっという間に各部署へ広まりました。

さっそく看護部長に捕まり、説教されます。

 

あんたも大人げないなぁ。
ドクターなんか適当にヨイショして、あしらっといたらええんよ。

………。

 

私は自らの行為を反省しつつも、看護部長の言うことにも同意しかねました。

f:id:sunao-hiroba:20220401163530p:plainコメディカル部門(診療を補助する職:看護師・薬剤師・PTなど)は、つねに医師の指示・処方に基づいて医療行為を行わなくてはなりません。

このことから、医師は「自分たちが一番偉いのだ」と勘違いしがち。
しかし、あくまでも指示する側・受ける側という立場の違いであって、本来「上下関係」ではないはず。

航空管制官と旅客機パイロットの関係と同じことです。
管制官パイロットに指示を出すからと言って、管制官の方が偉いわけではありません。

 

……そうですね。分かりました。

 

そうやってコメディカルが卑屈な態度を取るから、医師はワガママになるのだ。


私はその言葉をぐっと飲み込み、仕事へ戻りました。

 

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9.時すでに遅し

私の唯一の懸念は、Y医師が今後リハビリの指示を出さなくなるのでは…ということでしたが、それは杞憂でした。

「事件」の場にいたある職員によると、私が立ち去った後、Y医師は

 

……ちょ、ちょっと言い過ぎたかなぁ💦

 

と反省していたそうです。

以降、目に見えてカドが取れていったY医師。
むしろ積極的にPT・OTの指示箋を出してくれるようになったばかりか、他の医師がサボりがちな月1回のリハビリカンファレンスにも進んで参加して下さるようになったのです。

たまたまですが、怪我の功名と言えます😅


私の役割は、リハビリ科の管理職、そしてPTの立場から、地域の患者さんのニーズに応えること。
分からず屋の病院経営者と衝突したり、医師と喧嘩するのが仕事ではありません。

目的を達成するためには、時として手段を選ばない。
そういう意味では、「ドクターをヨイショして…」という看護部長の考え方も間違ってはいません。

反省した私は、一計を案じました。

嚥下リハビリを重要視しているという点では、私もY医師も同じ。
Y医師の口から、STの雇用条件の改善を病院経営者に進言してもらうのです。
医療機関における「お医者様」の発言力は、PTの比ではありませんから。

 

先生、お願いします😊

あぁ。今度話す機会があるから、一度提案してみるわ。

 

結果は芳しくありませんでした。

実際、どれほど熱心に説いて下さったかは怪しいです。
Y医師もその頃にはA病院に失望し、「諦めの境地」に達していたように思われます。

f:id:sunao-hiroba:20220401163530p:plainいや、私自身もそういう面はあったのかも知れません。
腐った職場は、職員の心をも蝕んでいくものです。

A病院には7年半ほど勤めていました。
けれども、私が退職するまでSTが応募してくることはありませんでした。

 

 

 

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