すなおのひろば

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【職場での出来事:番外編4】イケメンPT「Kさん」の思い出

f:id:sunao-hiroba:20210910215820p:plain番外編3】と同様、リハビリ科の管理職として在籍していた病院での出来事です。

私の部下に、入職2年目の男性PT「Kさん」がいました。

ロン毛というほどではないものの長めの茶髪、そして高身長のイケメン。
人懐っこい性格で、他部署のスタッフからも可愛がられていたようです。

 

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1.王子様系PT

f:id:sunao-hiroba:20210910220617p:plainKさんのイメージとしては、いわゆる王子様系。
実際、一部の先輩からは「王子」というニックネームで呼ばれていました。

最近世間で騒がれている、女性皇族のフィアンセ(?)にも少し似ている感じ。
そう言えば、あの人も「海の王子」でしたね😅


私がPT14年目で科長としてこの病院に就任した時、Kさんはまだ2年目。

f:id:sunao-hiroba:20210910215820p:plainちょうどその頃、看護師など一部の専門職の独占業務だった「喀痰の吸引」という手技が、PT・OTにも特例で認められるようになりました。

ただし、臨床での実施にあたっては事前に十分な研修を受け、確かな技術を身につけることが前提条件です。


私は元来不器用なので、教官の看護師さんから「合格」を頂くまでに相当な日数を要しました。
一方、KさんはPT経験2年余りにもかかわらず、あっという間に習得。

要領がよく、飲み込みが早い。
コミュニケーション能力が高く、患者さんからも好感を持たれる。

それがKさんの第一印象です。

 

2.茶髪系・遅刻常習者

完全無欠のように思えるKさんにも難点がありました。
ひとつは、トレードマークの茶髪。

f:id:sunao-hiroba:20190323123621j:plain当時、髪の色は「ヘアカラースケール7番までならOK」というように、スタッフ全員の合意の下で一定の基準を設けていました。

※画像引用元:東京カラーズ株式会社


合意したはずの取り決めに、真っ先に反発したのがKさんでした。

 

科長、髪の色とPTの仕事内容に何か関係があるんすか?
ちゃんと仕事してたら問題無いでしょ!

Kさん。もし貴方のお父さんが病気で入院して、リハビリが始まったとしようか。
担当PTが紫色の髪で「担当の◯◯です。よろしくお願いします」といって目の前に現れたら、貴方はご家族としてどう感じる?

む、紫色って…それは極論でしょ?
そんなのダメに決まってますよ!

じゃあ、どんな色でどれくらいまでなら許せるの?

それは…。

だからね、やっぱり基準というか、一応の目安は決めておいた方が良いと僕は思うよ。

………。

 


他にも、言葉づかいや勤務時間中の喫煙など、Kさんには態度・行動面においていくつかの問題がありました。

遅刻の常習犯でもありました。

 

科長🎵
面白いオンラインゲームがあるんすよ。一緒にやりませんか?

う~ん、まぁゲームは好きだけど…。
でもKさん、PTの勉強ちゃんとやってる?

 

Kさんは職場の近くのマンションで彼女と同棲していました。
夜遅くまでオンラインゲームに興じるなど、怠惰な生活が続いていたようです。

仕事は器用で飲み込みの早いPTでしたが、コツコツ努力するタイプではなさそうでした。
国家資格を取得することはゴールではなく、やっとスタートラインに立ったに過ぎないのですが、そこで満足してしまう人はKさんに限ったことではありません。


たび重なる遅刻に業を煮やした私は、ある時ちょっと厳しめに注意しました。
するとKさんは号泣して取り乱し、「もう辞めます」と言い始めたのです。

私は彼の将来を考え、ゆっくり諭しました。
そして退職はひとまず撤回。

それからしばらくして、彼は同棲相手と結婚することを私に告げました。

 

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3.ご祝儀どうする?

f:id:sunao-hiroba:20210911122721p:plain科内の職員一同、Kさんの結婚式に出席することとなりました。

私は上司ということで、主賓として招待されました。
正直ちょっと気が重かったのですが、彼にも体裁があるでしょうから承諾しました。


リハビリ科では週1回、運営会議を行っていました。
参加者は、役職者とリーダー格の職員です。

ひと通りの議題を話し合った後、あるスタッフが私に恐る恐る尋ねてきました。

 

あの~、Kさんのご祝儀、どうしましょう…?

 

f:id:sunao-hiroba:20210911122938p:plain一般職員たちは、私が包む金額を基準にしたかったようです。

つまらない話ですが、PTの平均給与は他の医療専門職と比較して低水準。
みんな、おサイフの口は固いのです😅

ただ私としては、会議が終わった後とは言え、おおっぴらに話す内容では無いと思えました。
一般的な相場に基づく腹案はあったのですが、一旦保留としました。

後日、私は上司(診療支援部のN部長)に相談してみました。
N部長は理学療法士会の副会長など要職を歴任した人で、主賓の経験も豊富だったからです。

解答としては、私の腹案とおおよそ一致する見解でした。


翌週の運営会議が終わった後、私は「オフレコ」と前置きしてから、ご祝儀の件を話しました。
部下たちはみな納得というか、安心したような表情でした。

 

4.結婚式当日

f:id:sunao-hiroba:20210911121232p:plain私は式場で初めてKさんのご両親や新婦と対面しました。
お父様は「どうもお世話になります」と、素っ気なく口にしただけでした。

新婦さんからは、特にきちんとした挨拶はありませんでした。


さあ、いよいよ主賓あいさつ。
司会者が私の氏名を呼び上げます。

 

それではまず、新郎側のご来賓を代表いたしまして、◯◯病院の『△△ ◇◇様』からご祝辞をいただきます……

………💧

 

思わず動揺してしまいました。
私の名前は◇◇ではなく、▲◇だったからです。

確かに私の名前に使われている漢字はありふれたものではありませんが、よほど国語が苦手という人でなければ、まぁ読める程度のものです。

あとで分かったことですが、司会者がうっかり間違ったのではなく、打ち合わせの段階でKさんが誤った読み方を伝えていたのです。
さもありなん。

私はちょっと焦ったものの、一瞬で事態を把握し、立ち直りました。

あいさつの内容は、ほぼ完璧に暗記していました。
長ったらしい祝辞は迷惑この上なし。あえて手短な内容にしていたからです。
台本に目を落とすことなく、無事にスピーチを終えました。

f:id:sunao-hiroba:20210911125355j:plain


披露宴そのものは、ジミ婚が一般化しつつある昨今では珍しく豪勢なものでした。
けれども、Kさんの学生時代の友人たちが「楽屋ネタ」で勝手に盛り上がるなど、リハビリ科の職員にとってはやや興ざめする内容でした。

 

5.さようなら、Kさん。

数日後、職場に出勤してきたKさんは、いきなり私に噛みついてきました。

 

科長、運営会議の場で祝儀の相談するなんておかしいんじゃないですか!?
そんなんルール違反でしょ!!

………💧

 

まぁ、あれだけの盛大な披露宴。
思いのほか赤字だったのでしょう😓

それにしても、彼にリークしたのは、誰…?

いや、そんな詮索はどうでもよいこと。
ルール違反と言われる筋合いはないけれども、会議中であろうとなかろうと、やはり口にすべきではなかった。

私はもうウンザリして、何もかもがイヤになりそうでした。

 

f:id:sunao-hiroba:20210911131811p:plainそれから1ヶ月ほど経った頃と記憶しています。
Kさんは、退職届を私に提出しました。

次の就職先については彼からは何も話さなかったし、私もあえて尋ねませんでした。
ただ、実家へ帰るらしい、とだけは人づてに聞きました。

Kさんの実家は、近畿圏内の他府県。
のちに知ったのですが、お父様はそこで民間病院の事務長に就いており、Kさんはその病院へ就職したとのことです。


退職後はKさんのことなど忘れかかっていましたが、2~3年ほど経った頃でしょうか、彼から携帯にメールが入っていました。

内容としては、

「職場で新たに介護保険の通所リハビリを開設することになった。科長は以前の職場で通所の責任者をやっていたとの事なので、ぜひノウハウを伺いたい」

といった主旨でした。


f:id:sunao-hiroba:20210911131811p:plain腹の中に、なんだかモヤモヤとした感覚が蘇ってきました。
ちょっと後ろめたさを感じつつも、私は既読スルーしてしまいました。

その後、彼がどこでどうしているのか、知る由もありません。

 

 

 

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