私は現在、非常勤のPTとして介護老人保健施設に勤めています。
主な業務は要介護高齢者の個別リハビリですが、コミュニケーションを深めることも大切です。
病院の患者さんとは違い、介護施設の利用者さんにとってスタッフはいわば「馴染みの存在」。
会話が円滑に行えることも大事なスキルのひとつと言えます。
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1.家で歩いてもいい?
すなお先生。あたし家でもっと歩きたいねんけど、やってもええかなぁ?
通所リハビリご利用中のAさん(80歳代)。夫と2人暮らし。
両脚を複数箇所骨折したことのある方です。
自宅のキッチンでテーブル伝いにフラフラ歩き、たびたび転倒しています。
そのため屋内は車いす移動を基本としたケアプランを立てています。
けれども、ご本人は歩きたい気持ち満々なのです。
常勤のスタッフからは、
もし家で歩きたいと言われたら、「危ないからやめて」と本人にハッキリ伝えて下さいね。
と指示されています。
う~ん…家の中で歩きたいんですね。
Aさん、それはトイレへ行く時とかですか?
旦那もトシやし、調子悪うてな。
たまにはあたしが台所に立って、料理でもしてあげたいなぁ思うて。
ダメなものはダメ、と明確に言うことも時には必要。
リスクにかかわる事項では特に。
でも私にはなかなか言えません。Aさんなりに、歩きたい理由がありますから。
まだアカンか~、先生…。
個別リハビリでは、歩行器で歩く練習を行っています。中等度の介助が必要です。
歩行器無しで歩けるようになる見込みはありません。
そ~ですねぇ…。
歩行器でふらつき無く歩けるぐらいでないと、家でひとりで歩くっていうのはちょっと早いかも知れませんね。
そう。あと3ヶ月ぐらいかかる?
う~む、何とも言えませんが…。
まずは歩行器でしっかり歩けるように練習しましょうか。
ん~歩行器かぁ。
まぁ今日も頑張るか~。
利用者さんをガッカリさせることなく、自宅で危険行為をさせることもなく、リハビリのモチベーションを保って頂くのは難しいです。
説得できると思うのはおこがましい。
納得のいく説明ができれば良いけれども、100%満足できる回答なんてあり得ない。
そもそも、人間はただ安全に生きているだけでは納得しないし、満足もしない。
そういう生き物ですから。
2.よく尋ねられること
今度は、とりとめのない日常会話です。
あんた、子供さん何人や?
あぁ、私、子供いないんですよ。
えっ。子供おらんの。あ、そ~かいな…💦
利用者さんの顔に「悪いこと聞いちゃったな…」という表情が広がります。
まぁ子供なんかおったらおったで、わずらわしいもんや。
精一杯のフォローが嬉しい。
そおですね。夫婦2人で、それなりに楽しくやってますよ。
仲ええねんな。そりゃええこっちゃ。
「子供はいません」の一言で気まずくなるのが申し訳なくて、ついウソをついてしまうことも。
あ~、2人です。
ほお。よろしいな🎵
男の子? 女の子?
え~、上が男で、下が女です。
わあ、ええやんか。可愛いやろ?
もうだいぶ大きいんか?
あ~そうですね~、上が高校で…(以下省略💦)
ウソにウソを塗り重ねて収拾がつかなくなる。
これまた不誠実で、たいへん申し訳ない…😓
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3.馴れ合わないが、馴染みの存在であること
私は現時点でPT経験23年弱。
そのうち約7割は病院勤務、3割が介護保険施設といったところでしょうか。
病院では急性期~回復期の比較的若い患者さんと接する機会が多く、医学的・客観的な説明、すなわち「インフォームドコンセント」が要求される場面が頻回にあるという印象です。
一方、介護施設では冒頭で述べたように、「馴染みの存在」であることが求められます。
施設は、スタッフにとっては職場でも、利用者さんにとっては生活空間の一部。
あまり馴れ合いになってしまうのも良くありませんが、雑談めいた会話の中で、利用者さんの要望や困りごとを引き出せたりするものです。
無駄な会話を嫌う方もいらっしゃるので一概には言えませんが、「雑談力・アドリブ能力」は、利用者さんの信頼を得るためには大切なスキルではないかと思います。
実習生や若手PTの方々には、世の中のさまざまな出来事に興味を持つとともに、自分の人生に胸を張って精一杯生きて行くことをお勧めします。
人生の大先輩である患者さん・利用者さんは、医療(介護)従事者の「人としての立ち振る舞い」をさりげなく観ているものです。
えらそうなことを語ってしまいましたが、ちょっと「コミュ障」気味の私でも何とかやって行けているので、今どきの若い方々も大丈夫ではないでしょうか😊
それでは、最後までご覧下さいましてありがとうございました m(_ _)m
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