すなおのひろば

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【老いを考える:その7】歳を取ったら急激な動きを避けましょう

f:id:sunao-hiroba:20210716181940p:plain30代前後のプロ野球選手が、一塁に走っていく途中であっさり肉離れを起こす場面を時々見かけませんか?

「加齢性変化」と言うと、ずいぶんお年寄りのイメージになりますね。
けれども、筋肉や椎間板などの軟らかい組織は、意外と早い段階で老化が始まるものです。

 

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1.伸張反射がアダに

f:id:sunao-hiroba:20210716173052p:plain筋肉は「筋線維」とも言われるように、収縮性の線維タンパク質で構成されています。
読者の皆さまも、理科の授業でアクチン・ミオシンという言葉を学んだ記憶があるかと思います。

また筋肉の構造を支えている筋膜や腱はコラーゲン線維が主成分であり、水分も豊富です。

これらの成分は筋肉の柔軟性・弾力性を保つのに役立っていますが、加齢とともに水分は失われ、コラーゲン線維の結合性が弱くなり、肉離れや腱断裂を引き起こしやすくなります。


f:id:sunao-hiroba:20210716174303p:plain例えば『アキレス腱断裂』は30~50代に起こりやすく、スポーツの種類では剣道とバレーボールに特に多いとされています。

以前、ママさんバレーでアキレス腱を断裂した40代前半の女性患者さんを担当したことがあります。

受傷時の状況としては、レシーブの際に一旦後退したものの相手のサーブの落下点が思いのほか手前だったため、重心をパッと前に移し換えた瞬間、後ろ足が「ブチッ」といってしまったようです。

 

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アキレス腱を素早く引き伸ばすと、下腿三頭筋(ふくらはぎ)を最大限に働かせることができます。
なぜなら、筋肉は急激に伸ばされると反射的に収縮する特性があるからです。

これは『伸張反射』と呼ばれるもので、医師やPTが行う腱反射検査はこれを検出するものです。


剣道の打ち込み時の後ろ足などが典型例ですが、ランニングやジャンプなど、人間は無意識のうちに伸張反射を利用して身体を動かしています。

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また、急激に伸ばされた筋肉が断裂を避けるため自動的に収縮する、いわば安全装置でもあります。

熱いものを触った時に思わず手を引っ込める『屈曲反射(逃避反射)』と並び、伸張反射は脳を介さない脊髄反射の代表的なものです。


上述のように、伸張反射は運動を制御するために必要不可欠な生理作用なのですが、加齢で劣化した筋肉にはこの反射がかえってアダとなり、負荷に耐えきれずブチッと切れてしまうこともあるのです。

 

2.中高年の筋トラブル予防法

アキレス腱断裂ほど深刻ではないにしても、ちょっとした筋違い・肉離れといった怪我は、中高年以降になると飛躍的にリスクが高くなります。

予防法としては一にも二にも、急激かつ反動をつけるような動作を避けることでしょう。

1)身のこなしはゆっくりと

私自身せっかちなので、信号が変わりそうな時などパッと駆け出したくなるのですが、最近は自制するようになりました😅
どうしても走らないといけない時は、速歩→小走りというように、徐々にスピードを上げるようにしています。

f:id:sunao-hiroba:20210716173930p:plain起床時など、身体が冷えていて循環が悪い時も要注意。これは筋肉系のトラブルだけでなく、関節痛の予防にも大切なことです。

過去記事『腰痛とともに生きる』でも述べましたが、ギックリ腰はたいてい早朝~午前中のうちに起こるものです。

朝は、ちょっと意識して動作の開始をゆっくり行いたいものです。

2)準備体操

ウォーキングや軽負荷の筋トレぐらいであれば、それ自体が適度に身体をほぐしてくれるので、入念な準備体操は必要ないと思います。

しかし激しい運動をすることが事前に分かっている場合は、ストレッチを行うのも良いでしょう。

時間をかけてジワ~っと伸ばすストレッチは、伸張反射の発動を抑制することが生理学的にも実証されています。
逆に、ラジオ体操のような反動をつけるタイプのストレッチは、反射の抑制という意味では効果が薄いようです。

※ラジオ体操そのものを否定しているわけではありません。

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◆下腿三頭筋(ふくらはぎ)
ハムストリングス(太ももの裏側)

これら脚の後面の筋肉は、夜中に「こむら返り」を起こしやすいことからも分かるように、循環不全や疲労に弱いようです。

高負荷の全身運動を行う前には、後面筋のストレッチがお薦めです。

 

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3.さいごに

息の長い活躍をしている一流のプロスポーツ選手は、例外なくウォーミングアップを入念に行っていますね。
中高年の方々も参考にすべきでしょう。

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ただ、前述の女性患者さんに伺ったところ、ストレッチは十分行っていたとのこと。

平均的な人と比較しても、特に身体が硬いわけではありませんでした。

※ちなみにアキレス腱断裂は統計的にみて男性の方が多いです。


「中高年PT」としての私の経験上、事前ストレッチの有無にかかわらず急激で強い負荷をかける動きがいちばん良くないような気がします。

いきなりトップスピードに持っていくのは怪我のもと。
筋・骨格系の思わぬトラブルを避けるためにも、ひとつひとつの動作を、慌てず丁寧に行いたいものですね。


最後までご覧下さいましてありがとうございました m(_ _)m

 

 

 

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