すなおのひろば

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陸上選手への「鉄剤注射」問題について

f:id:sunao-hiroba:20181211211114p:plainここ数日、高校駅伝の強豪校などで貧血治療用の鉄剤注射が「競技パフォーマンス向上」を目的として行われていたという報道がなされています。

この問題について私なりに考えてみたいと思います。

 

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1.何が起こっているのか

まずは事実関係について確認してみましょう。

高校駅伝で使用か 日本陸連が鉄剤注射の対策強化】
日本陸上競技連盟は9日、高校駅伝の一部の強豪校が持久力などの向上を目的に貧血治療用の鉄剤注射を使用している可能性があるとして、対策強化に乗り出すことを明らかにした。

陸連では平成28年に「アスリートの貧血対処7カ条」を発表。鉄剤はドーピングの禁止薬物に指定されていないが、過剰摂取によって肝臓や心臓、甲状腺などの機能障害を起こす可能性があるとして安易な鉄剤注射について自粛を要請している。過去に持久力を高めることを期待して使用されたケースがあったことから、周知徹底を図ってきた。

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今年に入って、高校駅伝の一部の強豪校で使用されているという情報が寄せられたという。日本陸連の尾県貢(おがた・みつぎ)専務理事は「鉄剤注射の使用状況を憂慮している」と述べたうえで、「使用状況の把握に努めるとともに、速やかに具体的な対策を講じたい」との考えを示した。23日に京都市で開催する「全国高校駅伝競走大会」でも使用について再度警告し、来年の大会からは出場選手の血液検査結果の提出を義務づけることなどを検討する。

引用元:産経新聞 2018/12/10(月)配信


その他の報道でも、

「指導者の指示で注射を受けた。高校時代は好成績だったが卒業後は記録が伸びなかった」

「過剰摂取が原因とみられる内臓機能の低下により、ジョギングすらきつい時があった」

「中学から打ち始めた」


という女子選手の衝撃的な証言が紹介されています。

 

2.問題の背景にあるもの

このような問題が生じる背景には「勝利至上主義」があることは間違いありません。

指導者による指示か、競技者側の意思によるものなのか、あるいは双方の合意かはケースにもよるでしょうが…成人のプロスポーツならともかく、「中学生や高校生に客観的な判断ができるのか、指導者の指示に逆らえるのか」と考えてみれば、これは明らかに「大人の側の責任」だと断言できるでしょう。

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誤解を恐れずに言えば、「ルールの範囲内で勝利をめざす」のが勝負事である以上、このようなケースが生じることは想定の範囲内ではあります。現時点ではドーピングの禁止条項にも抵触していないようですから…。

少し論点がずれてしまいますが、

高校野球松井秀喜に対する5打席連続四球

◆サッカー:消極的なパス回しによる時間稼ぎ

◆大相撲:横綱白鵬の立ち会いの張り手


私はこれら世間で議論になった出来事を、全く問題視していません。
なぜならルール違反ではないからです。

このようなことで当事者を批判する人は、「本当の真剣勝負の厳しさを知らない人」だと私は考えます。

あえて批判したいのであれば、それは当事者ではなく「競技ルールの不備」の方を問題にすべきでしょう。

しかし今回の問題が根本的に異なるのは、前途ある青少年の健康を蝕む「薬剤の濫用」に該当することだからです。
しかも報道によれば、2年前にはすでに陸連から自粛するようにとの通達(健康に悪影響があることも含め)があったとのことですから、知らなかったでは済まされません。

知識・経験・分別を持った大人の指導者であれば、健康に悪影響を及ぼす「可能性がある」時点で、普通はやらないと思うのですが…。

すなわち確信犯であり、「若者の将来の健康より目先の勝利が大切」と考えていたとみられても仕方がありません。

特に長距離ランナーは記録向上のために厳しい食事制限(減量)を求められることがありますが、それで足りなくなった鉄分を注射で補うというのであれば全く非合理的な考えであり、育ち盛りの若者にとって一体何の意味があるというのでしょうか?

甲子園における投手の過剰な連投に関する問題もそうですが、選手は目の前の勝利を得るために後先を考えないものです。

それを抑止するのはルールを作る大人側の重要な役割ではないでしょうか。

 

3.ある疑問

静脈注射は身体への侵襲を伴う医療行為であり、医師・看護師等による独占業務です。
もちろん、無資格者による静脈注射は医師法違反となります。

どこで・だれが・どのような手続きのもと注射したのでしょうか?

医療機関や、医師等の医療従事者が積極的に関与していたとしたら重大な問題であると思います。

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長距離走者などのアスリートに「鉄欠乏性貧血」が起こることはあり得ますが、報道の内容が事実だとすると、「病気ではない(疾患名がつけられない)人に、健康に害を及ぼす恐れのある薬剤を注射した」ケースが多発していることになります。

これは明確な医師法違反であるとともに、診療報酬の不正受給に当たるのではないでしょうか…?

あるいは自費診療で行ったのかもしれませんが、それこそ保険医療機関たる病院・診療所が行うべきことではありません。

 

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4.解決策について

スポーツであれ囲碁・将棋やテレビゲームであれ、物事をとことん極めようとすると、どんどんマニアックになっていくものです。

そして最終的には「勝つためにはルールの範囲内で手段を選ばない」ところまで行き着くのが勝負事の常であるように思います。

まして「高校駅伝」とか「甲子園」の強豪校ともなればマニアックの極みであり、「青少年の健全な心身を育む」とか「スポーツを媒体とした人間教育」など、綺麗事でしかありません。

そこに歯止めを掛けたいのであれば、「ルールの不備を正す」これしかないでしょう。

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私自身、まだ今回の問題について勉強不足なのですが…「鉄剤注射」がまだドーピング行為として認定されていない理由は何でしょうか?
現時点では、血液検査等による証拠確認が困難だからでしょうか。

報道によれば、スポーツ庁のドーピングを管轄する担当者は「ドーピングに似た行為で残念の一言」と話しているようです。

少なくとも、病気ではない人に注射し診療報酬を請求しているのなら、それだけで充分不適切な医療行為として罰せられるだけの証拠にはなるような気がしますが…。


今後もこの問題についての報道を注視していきたいと思います。

今回大きく報道されたことでとりあえず一定の歯止めは掛かるのでしょうが、陸連および関係機関には早急なドーピング認定方法の確立とルール整備をすすめ、根本的解決を図って頂きたいです。


最後までご覧下さいましてありがとうございました。

 

 

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