前回に引き続き、入院中の他愛もない出来事について綴っていきたいと思います。
治療食からのひとときの解放を目的として、私とK君は謀略を巡らせました。
外出当日は素晴らしく晴れわたり、絶好の行楽日和。
天は病気療養中の不遇な(?)私たちに味方してくれました。
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1.いざ、出発!
まずは途中でK君の自宅へ立ち寄り、ご両親にご挨拶。
そして彼が可愛がっている犬やたくさんの小鳥たちに会って癒やされました。
バドミントンや当時流行っていたスケートボードなども調達し、いざ、第一目的地である◯◯川の河川敷へ向かいます。自転車で20分ほどの距離でした。
広々とした河川敷は人影もまばらで、舗装されたテニスコートなども私たち2人の使いたい放題でした。
高校では体育の授業も「見学」で、普段はまともに運動などしていませんでしたから、バドミントンもスケートボードも久々で、大いにストレス解消になりました。ただ、やはり運動不足ですぐに息切れしましたが…。
疲れたら2人で川を泳ぐ魚や水鳥をぼんやり眺めたり、石を投げてみたり、とりとめのない会話をしたり…。
穏やかで平和な時が流れていきました。
軽い運動と自然の恵みを味わったあとは、いよいよ例の最終目的地へ一直線です。
2.山盛りのチョコレートパフェ
入院している病院から徒歩10分ほどの距離、デパートの地下1階にある小さな喫茶店へ向かいました。
看護師さんなど病院の職員にバッタリ出会わないよう警戒しながら入店します。
女性店員:「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりですか?」
すなお:「えっと、チョコレートパフェふたつ下さい」
女性店員:「あ…チョコレートパフェ、ふたつ…ですね? 少々お待ち下さい」
高校生とはいえ見た目ほとんど「おっさん」が2人してチョコパフェをオーダーする図は、滑稽そのものでした。
さすがに気恥ずかしい思いでしたが、しかし欲望には勝てません。
女性店員:「お待たせしました…(ゴト、ゴトン)」
おっさん2人の目の前に置かれた大きなグラスに山盛りのアイスクリーム・生クリーム・チョコソース・そしてフルーツとアーモンドスライスのトッピング…。
「こ、これが夢にまで見たチョコレートパフェ…なんてボリューム…!」
思わずK君と顔を見合わせました。
嬉しさと気恥ずかしさ、そして外出中の間食という「禁」を破った罪悪感など、さまざまな思いが綯い交ぜになって彼の表情に出ていたように思います。
多分、私も同じような表情だったでしょう。
どんな味だったのか、そこでどんな話をしたのかも今となっては覚えていませんが、まさに夢の中にいるような気分だったのかも知れません。
ただひとつ覚えているのは、
「やっぱりひとつはフルーツパフェにしといて、はんぶんこすれば良かったね」
と話し合ったこと、そしてお店を出る前に我に返り、念入りに口のまわりのチョコレートを拭き取ったことです。
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3.帰院して…
看護師:「おかえり! どうだった? 楽しめた~?」
Kくん:「は、はい。天気良くて楽しめましたよ!」
看護師:「お昼ごはんラップしてるからね。おなか空いたでしょ?」
すなお:「あ、ありがとうございます…」
いつもの「肝Ⅱ」の食札の載った昼食が、丁寧にラップして床頭台に置かれていました。
チョコレートパフェで空腹を満たした私たちが、昼食を半分以上残してしまったのは言うまでもありません。少し申し訳ないとは思いつつ…。
K君とはその後も友人として長く付き合いましたが、それから約10年後に再会した時も、「チョコパフェ外出」の思い出を懐かしく語り合ったものです。
私は、そののち理学療法士(PT)の道を選びました。
彼は諸事情により獣医の道を断念したものの、私と同じく医療従事者(臨床検査技師)の資格を取りました。
ただ、スケールの大きい彼はそれに留まりませんでした。海外留学などを経て、今は一般企業の営業職でバリバリ働いているようです。
しばらく会っていませんが、またいつか入院中の思い出話に花を咲かせたいものです。
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