すなおのひろば

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【病気療養中の思い出:その10】病院から眺める夜景

f:id:sunao-hiroba:20191008210448p:plain私は高校2年~大学1年の頃にかけて、慢性B型肝炎で入退院を繰り返していました。

初めて入院したのは、忘れもしない1987(昭和62)年の10月29日。
もう32年も前になるんですね…早いものです。

この時期になると、私は病院の最上階から見える夜景のことを思い出します。

 

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1.3階からの癒やされぬ風景

初めて入院した時の事は過去記事の中で何度か触れていますが、諸事情により私は高校2年生ながらも小児病棟へ入ることとなりました。

 

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都会の中心部に位置する某公立病院。小児病棟は3階にあります。

窓からは病院の駐車場、その向こう側には看護師(当時は「看護婦」)と看護学生の寮が見え、周囲には灰色のマンションが建ち並んでいました。

お世辞にも、爽やかで癒やされる風景とは言えません。

 

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入院して1ヶ月ほど経過した頃には半日のみ高校への通学が認められましたが、基本的には「籠の鳥」状態です。

点滴に繋がれながら毎日変わることのない窓の外を眺めていると、自分の境遇にますます嫌気が差し、陰鬱な気持ちが増幅します

 

2.最上階へ

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小児病棟ということもあり、夜の消灯時間は20時30分です。

眠くなくてもベッドで休まなくてはならないのですが、入院して2ヶ月くらい経つと、良くも悪くも病棟生活に慣れてきます。

 

私はある時、悪いこととは知りつつも、看護婦さんの目を盗んで部屋を抜け出し、最上階の12階へ行きました。たしか外科病棟だったと記憶しています。

 

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12階エレベーターホールの正面には外科病棟のナースステーション窓口があり、奥の方では看護婦さんが慌ただしく動き回っています。

他の病棟からの来訪者に少し怪訝な目を向ける職員もいましたが、特に咎められることはありませんでした。

 

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3.街の情景

エレベーターホールの脇にある小さな窓から見える夜景に、私は息をのみました。

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部屋を抜け出したことに、何か意図があったわけではありません。

多少の悪い予感はあったものの、突然「B型肝炎で直ちに加療が必要」と宣告され、気持ちの整理もつかないままバタバタと入院し、高校を休学。

それをきっかけとして母は心を病み、単身赴任だった父は仕事に注力できずアルコールの量が増えるなど、家庭環境は荒れ始めていました。

 

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私には当時、「自分の居場所」がありませんでした。

病院・学校・自宅のどこに居ても、心が安らぐことは無かったのです。

 

身の置き所のないまま、私は何となく最上階へ赴き、無数に輝く街の灯と星空に出会いました。

私はその美しさに目を奪われましたが、一方でネガティブな想いが心の中を駆け巡りました。

 

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あの灯の下では同級生はみんな普通に帰宅し、一家団欒を楽しんでいるんだろうな…。

これから俺はどうなるんだろうか。もしこの病気が治らなかったら…。

進学も就職もままならず、やがて社会から抹殺されてしまうのだろうか…。

人間って、何のために生きてるんだろう。俺はどこへ向かっていくんだろう…。



夜空に拡がる暗黒の闇が突然私を包み込み、押しつぶされるような錯覚に恐れおののきました。


私は「不治の病」に罹ったわけではなく、多少のハンデがあったとは言え、将来はまだまだ希望に満ちあふれていたはずです。

今となってはそう思えるのですが、当時の私はまだ若く、自身の境遇を受け止められるだけの余裕もありませんでした。


そんな私の感情を知る由も無く、満天の星々と街の灯は、ただキラキラと瞬いていました。

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私が入退院を繰り返したこの公立総合病院も、自治体の病院再編計画の波にのまれ、数年前に取り壊されてしまいました。


今でも、最上階の美しくも哀しい夜景が脳裏に蘇ります。

懐かしく、そして切ない、病気療養時代の思い出のひとつです。

 

 

www.sunao-hiroba.com

 

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