すなおのひろば

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【老いを考える:その4】「人生100年時代」の生き方

f:id:sunao-hiroba:20181225200913p:plain日本人の寿命は戦後、栄養状態・衛生環境の改善、経済・医療の発展とともに飛躍的に向上しました。

平均寿命は優に80歳を超え、100歳まで生きることも珍しくはなくなりました。

その一方、健康寿命と平均寿命との差は10歳前後であり、人生の最後の10年は「日常生活を送る上で常に何らかの援助(医療・介護)を必要とする」状態にさらされることになります。

 

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1.平均寿命の推移

2017(平成29)年の統計によれば、日本人の平均寿命は男性81歳・女性87歳となっています(表1・2)。

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平成 29 年簡易生命表によると、男の平均寿命は 81.09 年、女の平均寿命は 87.26 年とな り前年と比較して男は 0.11 年、女は 0.13 年上回っている。平均寿命の男女差は、6.17 年 で前年と同程度となっている。また、主な年齢の平均余命をみると、男女とも 80 歳まで前年を上回っているが、85 歳以上については前年を下回っている。

図表引用元:厚生労働省:平成29年簡易生命表の概況『主な年齢の平均余命』


ここで注目すべきは、表1の「平均余命」です。

これによれば、0歳の女児は最終的に87歳まで生きる(すなわちこれが「平均寿命」)が、80歳まで生きながらえた女性については、統計上は「さらに12年近く生きる」ということになります(緑線)。

まさに現代は人生90年、いずれ本当に「人生100年時代」が到来するのかも知れませんね。

表2のとおり、戦後間もない1947(昭和22)年当時の平均寿命は、50歳を超える程度でした(黄線)。

さらに、各時代の平均寿命を遡ると…

f:id:sunao-hiroba:20181226110006p:plain◆明治~大正時代:40~45歳

◆安土~江戸時代:30~40歳

◆奈良~室町時代:20~30歳

古墳時代以前 :15~20歳

江戸時代以前は、戸籍制度があいまいであったため正確な統計はありませんが、おおよそこのようであったと考えられています。

かつては乳幼児の死亡率が高かったことも平均寿命に大きく影響しているようですが、それを考慮に入れても、現在と比較するとかなりの短命であったように感じられます。

 

2.生殖機能と寿命の関係

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客観的に他の野生生物をみていると分かるのですが、ほとんどの生き物は繁殖能力の喪失とともに最期を迎えます。

必死に川を遡り産卵を終えたサケが、ボロボロになって死んでいく様子をテレビなどでご覧になった方は納得できるかと思います。

一方、哺乳類、特にヒトやサルの仲間は生殖可能な期間が終わっても生き続けるケースが多く、また一部のクジラの仲間も同様です。

これはその動物社会における子育てや文化の伝承方法など、さまざまな要因が絡んでいると思われます。

ですので、生殖機能と寿命との関係については一概には言えない面もあるのですが、ヒトが繁殖能力を失うのは遅くとも40代後半くらいでしょう。

そういう意味では、大正時代頃までの平均寿命は、ごく自然な状態における動物としてのヒトの寿命であるとも考えられます。

 

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3.人生50年時代の「無常観」

寿命が短く、幸運な場合でもせいぜい50歳くらいまでであった昔の人にとって、死は常に自分のとなりにあったと言えるでしょう。

20歳前後で子を産み、一人前になるまで育て、生殖能力を失う頃には寿命が訪れる。あるいは、もっと早くに命を散らすことも少なくありませんでした。

そういう儚い人生において当時の人々は、現代人よりも日々を懸命に、それこそ命を燃やすように生きていたのではないかな…と思います。

ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず…『方丈記

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり…『平家物語

人、死を憎まば、生を愛すべし。存命の喜び、日々に楽しまざらんや…『徒然草

 

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これらはすべて鎌倉時代の文学作品ですが、当時の人々の「もののあはれ」や「無常観」にもとづく情感の豊かさ、そして哀愁を感じ取ることができますね…。

 

4.50歳からの生き方を考える時代

人生100年時代」を見据えた現代は、50歳(高齢出産であれば60歳頃)までは子を養育しながらも、同時に「後半の50年を乗り切る」ための計画を用意周到にしておかなくてはなりません。

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年金などアテになるかどうか分からないとなれば、老後のために一定程度の貯蓄も必要です。
もちろん子どもや他人に迷惑をかけないようにするには潤沢な資金も必要ですが、健康な体を維持しておくこともまたお金以上に大切なことです。


50歳まで日々を精一杯生き、子どもにバトンタッチして短い生涯を終えていた時代。

子育てをしながら後半生を見据えて必死に働き、50歳でやっと折り返し地点、そして最後の10年は要介護状態で過ごす現代。

どちらが幸せなのでしょうか。

まあ人生は人それぞれ違うので、二者択一という単純なものではありませんが…。

 

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私は今、理学療法士(PT)として介護老人保健施設に勤めているため、高齢の方々と接する機会が多いです。

決して要介護高齢者の存在を否定する意図は無いのですが…正直、「長生きするのが幸せとは限らないんだなぁ…」という気持ちになってしまいます。

実際、人生50年時代の昔の日本人が、そんなに自分たちのことを不幸だとは考えていなかったでしょう。人生の豊かさと寿命の長さは、必ずしも比例しないと思います。

人生100年時代をどのように生きるか…。

充実感とか達成感とか、穏やかに過ごせたらそれでよいとか…人によって価値観は違うでしょうが、長寿社会だからこそ、人生も「量より質」の時代になっていくような気がします。


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私事ですが…私たち夫婦は幸か不幸か子宝に恵まれなかったので、迷惑をかけることがない代わりに、老後に頼るべき子や孫もいません。

ですので、夫婦共々元気に年を取り、できれば「ピンピンコロリ」とこの世を去ることができるよう、今はウォーキングやバランスの良い食事など、つねづね健康に気を配っている次第です。

40代で明確に老化を自覚して以降、そういう気持ちがますます強くなったように思います。

 

 

www.sunao-hiroba.com

 

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