新型コロナウイルスの第3波到来に伴い、大阪府では医療非常事態宣言なるものが出されました。
医師会などの医療系職能団体やマスコミは、相も変わらず『医療崩壊』がいまにも起こるかのような不安と恐怖を煽っています。
このような風潮に対し、医療従事者のはしくれである私は忸怩たる思いでいっぱいです。
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1.現在の状況を火事に例えると…
最近、全国の至るところで大小さまざまな規模の火事が頻発しています。
とくに東京・大阪などの大都市圏では、火の回る勢いはかなり速いようです。
ところが、大火事に対処できる消防署はごく一部に限られています。
その他の消防署(消防隊員)は、いったい何をしているのでしょうか?
小規模な火災ならすぐに消し止められそうなものですが、それでも積極的に出動して火を消そうという動きはありません。
消火設備や隊員の訓練が不十分なこと、そもそも隊員が不足していること等がその理由だというのです。
全国津々浦々、あんなにたくさん消防署があるのに…おかしいですねぇ。
※以上、架空の話です。
2.いつもは患者が増えると喜んでいたのに…
民間の病院では、病床数が慢性的に余っているところも少なくありません。
病院経営者はこの病床を少しでも埋めようと躍起になります。空きがあると効率が悪く、早い話が「儲からない」からです。
今月に入って病床稼働率がずっと90%以下やないか。
一体どないなっとんねん!!
入退院を調整する職員や、果てはリハビリテーション部門にまで当たり散らし、半狂乱になっていた病院理事長の顔を私は決して忘れることはないでしょう。
患者が増えて稼働率が高くなると、経営者も医療従事者もホッとします。
これは「世の中に病気や怪我をする人が増えることを望んでいる」ことを意味しますが、そのロジックに疑問を持つ医療者は誰もいません。
客観的に考えて、怖ろしいことです。
医療体制が逼迫していると云われますが、実際にコロナの入院患者を受け入れているのは一部の病院(全体の2割程度)に過ぎません。
そこでは確かに戦場のような光景があるのかも知れません。
テレビではよくそういう場面を放映し、「医療従事者がいかに大変な状況か」を強調しています。
あたかも全ての病院で類似のことが起こっているかのように錯覚しそうですが、そんなことは絶対にありません。
私がもっとも納得いかないのは、ふだんは病院の収益やら自らの給料を気にして「患者が来ない」「病床が埋まらない」とヤキモキしている病院経営者や医療者が、いざコロナ騒動が起こると
「設備も人材も不足しているから、うちでは受け入れられない」
「医療従事者自身もコロナに罹る恐怖を感じている」
などと言って、受入体制を積極的に整えようとしないことです。
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3.医療崩壊の危機を煽って国民を脅迫するな
いま私はいちPTとして介護老人保健施設に在籍していますが、かつては病院に管理職として勤務しており、感染対策や医療安全の部門にも所属していました。
たとえ軽症と言えども、一般病院が新型コロナ患者をすんなり受け入れるわけにはいかない理由については、もちろん分かっているつもりです。
機材や人員の不足もさることながら、ゾーニング(感染症患者の区域とそうでない区域を区分けする)の問題も大きいと思われます。
とは言え、「その気があればできる」病院だってたくさんあるはずです。
コロナの影響で病院経営は軒並み赤字だと云われていますが、それは他の業種も同じ。医療者は仕事があるだけマシです。
できない理由ばかり並べていても、事態は好転しません。
まずは病院・医療者側が「我こそは」と手を上げる。
政府・行政側はそういう医療機関を全面的にサポートし、医師会・看護協会などの職能団体は人材確保に奔走する。
これこそが本来の姿ではないでしょうか。
過去記事(医療従事者に感謝? いやいや、私たちは「人の不幸が飯のタネ」)でも述べましたが、医療とは人が病気や怪我をすることで成り立つ業種です。
最近では「医療従事者に感謝しよう!」と持ち上げられることも多いようですが、まさかそれで勘違いしているのではないでしょうね?
いままで人の不幸でさんざん儲けてきたのだから、このご時世、命懸けでコロナに立ち向かうのは当然のことです。
国民の皆さん、こちらこそいつもご協力下さいましてありがとうございます。お陰様で我々は医療の提供に集中することができています。
私たちは新型コロナ患者を積極的に受け入れる体制を構築しつつあります。どうかご安心下さい。
皆さんは毎年のインフルエンザ流行期と同様、標準的な感染対策をしながら、できるだけ普通に生活して下さい。
過度な自粛は無用です。
マスコミと一緒になって「医療崩壊の危機」などと煽っているヒマがあるなら、医療機関や職能団体のトップの方々はこれぐらいのことを全国民に向かって発信できないものでしょうか?
いま、我々医療者の「やる気」が問われています。
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