すなおのひろば

中高年の健康と若手PTの未来をサポートするブログ

『嫌われダークの一生』…あとがきに代えて

いつも当ブログをご覧下さいましてありがとうございます。

前回投稿した『嫌われダークの一生』について、読者さまから多くの温かいコメントを頂きました。

そのお礼として、今回は制作の背景や物語に込めた想いなどを綴ってみたいと思います。

 

f:id:sunao-hiroba:20200103213213p:plain

f:id:sunao-hiroba:20200103213213p:plain

 

《スポンサーリンク》
 

 

 

 

 

1.児童文学『八郎』のオマージュ

お気づきの読者さまもいらっしゃるかも知れませんが、『嫌われダークの一生』は、児童文学作品『八郎』がベースになっています。

この作品は、秋田県に実在する干拓地 “八郎潟” の由来について、作家の斎藤隆介氏により独自の解釈を加えられ、創作されたものです。

 

 

以下、あらすじをご紹介します。
※ネタバレ注意。

 

『八郎』

作:斎藤 隆介 画:滝平 二郎

 

昔、秋田の国に八郎という名の山男が住んでいた。
巨漢の八郎はもっともっと大きくなりたいと願い、やがて山ほども大きくなった。

ある日、八郎は浜で泣いている子供に出会った。
わけを聴くと、毎年のように海が荒れて、村の田畑が塩水に浸かり駄目になってしまうのが悲しいという。

奮起した八郎は、無類の怪力で山を引っこ抜き、海へ投げ入れて大波をせき止めた。
村人が歓喜したのもつかの間、今度は海が激怒し、沖から波を集め巨大な津波となって村に襲いかかってくる。

泣き続ける子供に「心配するな」と声をかけ、八郎は海に入っていった。
そして両手を広げ、自らが防波堤となって大波を押し返そうとする。

荒れ狂う波と闘い、海に呑み込まれながら、彼はなぜ自分がこれほどまで大きくなりたかったのかを悟る。

やがて津波は収まったが、八郎は海に消え、二度と戻ってくることはなかった。

のちにその土地は “八郎潟” と呼ばれるようになり、今も八郎のおかげで穏やかな浜を保っている。

 

私が小学4年の頃、国語の教科書に掲載されていたこともあり、特に印象深い作品です。
また、版画家・滝平二郎氏による迫力の挿絵も魅力のひとつです。

 

 

『嫌われダークの一生』を制作するにあたり、私は『八郎』のストーリーをほぼ忠実にトレースしたいと考えていました。

しかし、私の拙い画像編集技術と描写力では

「大きな山を地面から引っこ抜いて、海へ投げ入れる」
「自らが防波堤となって津波をせき止め、そのまま海に沈んでいく」

このような大迫力シーンを表現するのは、到底無理だと気づきました。

そこで、「宇宙へ飛んで行き、弾道ミサイルと格闘する」という展開に置き換えてみました。

 

 

宇宙を舞台とした物語は以前描いたこともあり、画像制作が比較的簡単だからです。
ま~安易ですねぇ😅

滝平二郎氏の画力の凄まじさに、改めて畏敬の念を抱いた次第です。


余談ですが、「主人公が想いを寄せていた女性が、のちに総理大臣になる」という設定は、江川達也氏のデビュー作『BE FREE!』という漫画作品をオマージュしたものです。

 

 

2.『嫌われダークの一生』で表現したかったこと

物語をどう解釈するかは、それぞれの読者さまにお任せすべきでしょう。
ですが、ここではあえて私なりの想いを綴らせて頂こうと思います。
何とぞご容赦下さい。

 

1)何のために生まれ、誰のために働くのか

生まれてきた理由、働く意味など、本来は何もないのかも知れない。
とは言え、そこに意義を求めようとするのが人間の性(さが)というものです。

 

ダークは自分がどこで生まれたのかも分からず、ふと気がつくと△◆村に漂着していました。
その村はのちに弾道ミサイルのターゲットになるわけですから、ダークは使命を背負ってこの世に現れたと言えるのでしょう。

ただ、私は「人はすべて何らかの使命を持って生まれてくる」という考え方には懐疑的です。
大体、特別な使命を果たせる人間なんて、ごくわずかだと思います。

 

使命という言葉が大袈裟なら、「役割」と言い換えた方がよいでしょう。
私たちはアリやハチなどと同様、社会的動物の一種なのですから。

それぞれがちょっとずつ役割を果たすことで、自分の所属する社会全体が成り立つわけです。

 

ダーク自身、最初から大それた使命を果たそうとしていたわけではありません。
もともとは、人間になりたかっただけ。

 

おぬし、人間になりたいのか?
なぜじゃ。

理由なんかどうでもええ。
強いて言えばな、これ以上バカにされたくないんや。
同じ人間になって、アイツらを見返してやるんじゃ!

 

ことさら強がってみせるダークですが、彼はただ、

「ナオミが差し出したぶどうパンを、ひとりの人間として食べてみたかった」

それだけなのかも知れません。

 

 

 

人間になりたいというダークに、住職は仕事に就くことを勧めます。

 

では、そなたも人間と同じように働いてみよ。
それも、皆が忌み嫌う仕事をな。

みんなが嫌がる仕事?

 

住職の言う通り働いているうちに、なぜかダークの身体は次第に大きくなり、力がみなぎっていきます。

 

 

過酷な仕事で鍛えられ、研ぎ澄まされた身体は、ミサイル着弾の危機に直面して覚醒し、一気に巨大化。村を救います。

 

 

 

現実の世界でも、すべての人が「大志」を抱いて職業を選ぶわけではありません。
また、あくせく働く中でふと我に返り、

「こんなつまらない仕事に意味があるのか。誰の役にも立っていないのに…」

と嘆く方々も多くいらっしゃることでしょう。

 

私は、職業を選択する理由なんて最初はあいまいでも良いと思います。
世のため人のために頑張ろうと気負わなくても良いと思います。

とにかく愚直に働くこと。粘り強く続けること。
その中で見えてくる何かがあります。
そして、仕事で身につけたスキルは、思わぬところで誰かの役に立つものです。

それは別に、全人類の役に立つ大仕事でなくても良い。

 

ダークは、図らずも△◆村をはじめ多くの人々の命を救うことになりました。
けれども、彼は自分に優しくしてくれたナオミを守りたかっただけなのだと思います。

人が一生のうちで幸せにできる相手なんて、ごく身近な人だけ。ほんのひと握りでしかありません。

 

2)真の正義とは

やなせたかし氏は、自分の顔を分け与える異色のヒーロー『アンパンマン』に込めた想いとして、

「立場や国が変わっても決して逆転しない究極の正義。それはひもじい人に食べ物を届けること」
「本当の正義は決して格好良いものではない。そしてそのために必ず自分も深く傷つくものだ」

といった主旨のことを語っています。

 

巨大化したダークはミサイルに向かってまっしぐらに飛んで行き、そのまま墓場軌道まで道連れにしようと奮闘します。

宇宙ゴミになるリスクを避け、なるべく地球に害が及ばないようにしたかったのでしょう。

 

 

アンパンマンの如く、誰も傷つけることなく、自らは傷つきながらも人助けをする真のヒーロー。それがダークなのです。

 

 

3.表現しきれなかったこと

後編を描き終えてから、ひとつ心残りがありました。

北中鮮の弾道ミサイルに対する日本政府の無為無策と右往左往ぶりを、もっと詳しく描きたかったということです。

 

実際に北◯鮮が△◆村のような過疎地を狙って弾道ミサイルを撃ってきた時、我が国は撃ち落とすことが可能なのでしょうか?

 

現実の日本では、SM-3やPAC-3といった迎撃ミサイルが配備されています。

しかし、劇中の「高度6000㎞のロフテッド軌道で落下してくる弾道ミサイル」を撃ち落とすのは、現在の技術では極めて困難です。
高度が高過ぎるし、落下速度も速過ぎるからです。

岸◯政権でなくとも、もともと我が国には有効な手立てが無いのです。

 

すなわち、弾道ミサイルは「撃たれてからでは遅い」ということ。
撃たせないようにするための具体策が必要なのです。

 

 

読者の皆さまと一緒に「国防」を真剣に考える意味でも、もう少し詳細に描写できればさらに良かったのかな、と思います。

 

《スポンサーリンク》
 

 

 

4.ダークは何処へ

多くの読者さまから、

「ダークには何とかして戻って来てほしい」
「蘇らせてください」

といったお声を頂戴しました。

 

 

……ナオミ。
立派な大人に……なれ……よ……

 

ダークは最期にそう言い残し、ミサイルの自爆とともに消滅しました。

 

 

 

私たちの肉体も、プラスチックのフィギュアも、もとを辿れば恒星の核融合反応や超新星爆発によって生まれた元素で構築されています。

諸行無常

万物は移り変わり、不変のものなどありません。
星屑から生まれたダークは、また星屑に還っただけです。


50年後、ナオミは日本初の女性総理になりました。
そこに至るまでの道は険しく、おそらく想像を絶する苦難を乗り越えたことでしょう。

木瓜id:Boke-Boke)様がコメントして下さったように、「強く優しいダークはナオミの心の中に生き続け、日本を護ってくれた」と言えます。

 

それで良いのだ。

 

そう言い聞かせて後編のシナリオを描き終えたのですが、ダークの孤独を想うと、私自身なんだか切ない気持ちになってしまいました。

そこで投稿間際、ラストシーンに以下の画像を一枚追加することにしました。
「ダークが自らの生まれてきた意味に気づく場面」で使おうとして、いちどボツにしたものです。

 

天上の住職に見守られながら飛んでいく光の中に、ダークの姿はない。
彼の身体は消滅したが、情念の炎はなおも生き続け、宇宙の彼方へ飛び去っていった。
だが、総理大臣のナオミがピンチに陥った時には、きっとまた戻ってくるだろう。

 

そう信じたいという気持ちを込めて。

 

 

下水道のように生きてみよ。愚直にな。
さすれば人の気持ちが分かるじゃろ。

それをやれば、俺は人間になれるんか?

そなたの心がけ次第じゃ。

 

ダークは人間にはなれなかったけれど、住職は嘘をついたのではないと思います。

誰もが忌み嫌う仕事に向き合い、ナオミという最大の理解者を得ました。
人の愛と正義に目覚めたダークは、ついに人間を超越した崇高な存在になったのです。

 

 

ありがとう、ダーク。
みんな待ってるから、いつでも戻っておいで(^-^*)/🎌

 

f:id:sunao-hiroba:20200103213213p:plain

2023年も当ブログをご愛顧頂きありがとうございました。
これが今年最後の記事になります。
読者の皆さま、良いお年をお迎え下さい😊

 

 

 

 

www.sunao-hiroba.com

 

《スポンサーリンク》