西暦20XX年。
増え過ぎたスペースデブリ(宇宙ゴミ)を処理するため、人類は1体のフィギュアを宇宙へ送り込んだ。
彼はフィギュア(figure)でありながら宇宙飛行士(astronauts)の資格を持つ者として、『フィギュアノーツ(FIGURENAUTS)』と呼ばれた。
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1.スペースデブリとは
俺は宇宙の清掃業、フィギュアノーツ1号。
コードネームは『ダーク(Dark)』や。
俺の仕事の内容を見てもらう前に、まずスペースデブリについて説明しとこう。
スペースデブリとは、打ち上げに使われたロケット本体や耐用年数を過ぎた人工衛星、及びその破片のことや。
デブリ同士の衝突で生じた微細デブリ、さらには宇宙飛行士が落とした部品・工具なんかも含まれる。
NASAが正式に登録し、地上から追跡している直径10㎝以上のデブリだけでも約2万個。
1cm以上は70~80万個、1mm以上は1億個を超えるとも云われる。
小さいデブリでも油断はできん。秒速7~8㎞、銃弾の10倍ものスピードで軌道上を飛び交ってるんや。
実際、直径1㎝ほどのデブリは「宇宙の弾丸」とも呼ばれ、宇宙飛行士には脅威でしかない。
宇宙開発を進めたい世界各国にとっては深刻な問題やけど、根本的な解決策の無いまま、その数は年々増え続けてる。
2.宇宙清掃のお仕事
さぁ、俺のカッコええ仕事ぶりを見てもらおうか✨
今、俺は地球の衛星軌道上を周回しとる。
衛星軌道は以下の3つに分類される。
◆低軌道:地上からの高度2,000㎞以下。
◆中軌道:2,000~36,000㎞未満。
◆高軌道(静止軌道):36,000㎞前後。
俺の主な作業場は、デブリがいちばん混雑してる低軌道や。
この辺は地球観測衛星のような大物の残骸が多いな。
よっこらしょっ…と。
しっかり掴んだら、墓場軌道まで運んでいく。文字通り「ゴミの墓場」や。
簡単に「運ぶ」ゆうたけど、墓場軌道は静止軌道36,000㎞のそのまた先や。
かなりの長旅やねんで。
直径10㎝以下の小物については、レーザー銃で溶かして消滅させる。
危険物でなければ、ちょっと乱暴やけど地球に投げ込んで大気圏に突入させる。燃え尽きるから大丈夫や。
最初に説明した通り、軌道上には無数の「宇宙の弾丸」が飛び回ってる。
だから人間には俺のように身をさらして働くことも難しいし、その勇気もない。
しかも宇宙には人体に有害な放射線が降り注いでるから、船外活動の時間も限られてる。
そこで、フィギュアに白羽の矢が立ったっちゅうわけや。
3.哀しき玩具
え? 『FIGURENAUTS』…複数形っちゅうことは他にも仲間が居るのかって?
まぁな。中でも、世界のフィギュアから選りすぐられた超エリートがこの俺様や ♪
……と言いたいところやけど、志願したのは今のところ俺だけや😅
ま、そらそうやな。
こんな「危険」「給料安い」「(誰にも)気に掛けられない」3Kの仕事なんか、今どき好んでやる奴おらんやろ。
俺は無重力訓練もそこそこに、いきなり地球周回軌道に連れて来られた。
じゃあな。しっかり働けよ、Baby!
………💧
この領域には、かつてのISS(国際宇宙ステーション)のような拠点すら設けられてない。
1年後にはシャトルが迎えに来てくれるらしいけど、それもアテにはならん。
え? なんでそんな割に合わん仕事してるんやって?
ほら、見てみい。地球が綺麗やないか…。
こんな美しい景色をいつも眺められる仕事なんて、どこにもないやろ。
俺はやがて劣化し、多くのスペースデブリとともに宇宙のゴミと化す。
そうなったら、自ら大気圏に飛び込んで燃え尽きるまでや。
どうせ俺らは人間サマのおもちゃ。不要になったらポイ、やからな。
それもまたフィギュアの宿命や…。
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4.未確認飛行物体
今日のゴミも結構でかいな。大変や…。
ふう、ちょっと一休みするか。
ん……?
なんや? あれ…。
わあっ!!
こ…これは未確認飛行物体、『UFO』っちゅう奴か?
こういう時、一体どう対応したらええんや💦
そおや、とりあえずNASAに連絡……
ヒューストン、ヒューストン、こちらダーク。
UFOが現れた! どうしたらええんや!?
指示を求む!!
……UFOだぁ??
な~に寝ぼけとんじゃ、この出来損ないフィギュアが!
い、いや……ウソちゃいますよ!
今、俺の目の前に……あ、ちょっとカメラ回しますわ。
アホ。寝言ゆうてるヒマがあったらキリキリ働かんかい!
お前もデブリにすんぞ、このポンコツ!!
(ガチャッ⚡⚡)
………💧
くそっ…信じてくれへん。
さあ、どうしたもんか…。
な、なんや…!?
何が出てくるんや……。
<後編につづく>
2021年も当ブログをご愛顧頂きありがとうございました。
これが今年最後の記事になります。
読者の皆さま、良いお年をお迎え下さい😊
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