西暦2XXX年。
一向に減ることの無いスペースデブリ(宇宙ゴミ)に対処するため、100年の時を経てフィギュアによる宇宙清掃が再開された。
『フィギュアノーツ計画-Ⅱ』である。
俺の名はフィグマ。この危険なプロジェクトに志願した、世界唯一のフィギュアだ。
ある思いを胸に……。
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1.捨て石
俺は宇宙の清掃業、フィギュアノーツ2号。
コードネームは『フィグマ(Figma)』だ。
今さら説明するまでも無いが、軌道上に存在する無数のスペースデブリを清掃するのが俺の仕事だ。
現在、NASAが正式にカタログ登録し地上から追跡している直径10㎝以上のデブリは約4万個。
100年前の2倍に増えたのだ。
雇用期間は3年契約。
時給は神奈川県の最低賃金、1,040円だ。
俺は無重力訓練もそこそこに、高度2,000㎞の地球周回軌道に放り出された。
フィグマ、行きまーす!!
じゃあな。サボるんじゃないぞ、Baby!
………💧
3年後にはシャトルが迎えに来てくれるとの事だが、そんな約束などアテにならない。
人類は、フィギュアを「捨て石」程度にしか考えていないからだ。
2.ある思い
俺の体はポリ塩化ビニルとABS樹脂、つまりプラスチック製だ。
生身の人間とは違うが、それでも有害な宇宙線に3年も晒されればあっという間に劣化してしまう。
それほど危険な任務なのに、どうして志願したのかって?
……それは、伝説のフィギュアノーツ1号『ダーク』への思いからだ。
今から100年前。
NASAとの短い交信を最後に、ダークは消息を絶ったという。
ヒューストン、ヒューストン、こちらダーク。
UFOが現れた! どうしたらええんや!?
指示を求む!!
……UFOだぁ??
な~に寝ぼけとんじゃ、この出来損ないフィギュアが!
UFOなど荒唐無稽。
孤独な宇宙清掃の最中、ダークは精神錯乱を来たした。
そして任務を放棄し、大気圏に身投げしたのだろう。
……これがNASAの公式見解だった。
だが、俺の考えは違う。
UFOとの遭遇は、ウソではない。
ダークは何らかの理由でその「侵入者」と交戦状態になり、大気圏に突入したのだ。
その日、地上では巨大な流星がひとつ観測された。
おそらく、ダークは「侵入者」と相討ちになったのだろう。
俺たちフィギュアの間では、そう噂された。
……しかし、俺はダークが死んだとはどうしても思えないのだ。
なぜか?
ひとつ気になっていたことがある。
それは、直径10㎝以上のデブリの増加率だ。
この100年間、宇宙空間へ打ち上げられた人工物の数量を考慮すると、約5倍の10万個にまで増えているはず。
けれども、実際は4万個。しかも古いカタログNo.のデブリが、次々と姿を消しているのだ。
不可解なことに、この件に関してNASAからのコメントは一切無い。
ダークは生きている。
そして、今もどこかで宇宙清掃を続けているのではないか…?
ここで任務を続けていれば、いつの日か伝説のフィギュアノーツとめぐり逢える。
俺はそう信じている。
NASAからは「馬鹿げている」と一笑に付されたが…。
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3.再び
ふぅ、今日のゴミも大物だな……。
疲れた……ひと休みするか。
ん……何だ?
わあっ!!
これは…未確認飛行物体、UFO!?
や、やはり本当だったか……!!
なっ!!
いったい何が出てくるんだ……?
<第2話につづく>
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