新型コロナ治療の最前線で闘う医師・看護師等に応援と感謝の気持ちを表すため、◯◯城や△△タワーなどの施設をブルーライトアップする動きが全国に拡がっているようです。
国民の皆さまや政治家の方々が医療従事者を賞賛し謝意を示して下さることは、私も医療者のはしくれとして有難く感じます。
※画像引用元:みんなの経済新聞 2020/4/23(木)配信
確かに、新型コロナ肺炎の「治療」の最前線は医療現場です。
けれども、新型コロナによる苦難に日々直面しているのは全国民であり、いま最も過酷なのは仕事を失い生活に困窮している方々ではないでしょうか。
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1.医療従事者は国民に感謝していますか?
中小・零細企業やその従業員、また個人事業主の方々は、補償されるかどうかも不透明な状況下で、休業要請に応じるしかありません。
言葉の使い方が適切でないかも知れませんが、それに比べて我々医療従事者は、仕事があるだけマシです。
医療従事者が職場へ出勤できるのは、公共交通機関が動いているから。
車の燃料がいつでも補充でき、道路を整備してくれる作業員の方々もいるから。
水道・ガス・電気が常に使えるから。
医療従事者がご飯を食べられるのは、スーパーやコンビニがいつも開いているから。
食品製造業や農業・漁業・畜産業・物流業の方々が休まず頑張ってくれているから。
診療報酬・介護報酬が請求でき、医療従事者の給与が支給されるのは、国民が税金や保険料を負担してくれているから。
医療崩壊と言われながらも医師や看護師がバタバタ死ぬことが無いのは、相互扶助の精神に基づく「国民皆保険制度」が確立しているから。
国民みんなが支え合って、社会生活が成り立っています。
私たちが新型コロナの診療に従事できるのは、国民の皆さんが困窮に耐え忍び、いつもバックアップして下さっているおかげです。
こちらこそ本当にありがとうございます。
そういう声を上げる医療従事者って、どこかに居ますか?
私はあまり聞いたことがありません。
2.自己保身を前面に出すのは…
医師や看護師らに「特別手当(危険手当?)を…」という報道も最近よく耳にします。
私の地元の大阪府では、重症・中等症患者を受け入れている病床で勤務する医療従事者らを対象に1日3,000円の特殊勤務手当を支給する方針を発表しています。
それはそれで、防護服や機材・人手不足などを背景に、過酷な環境下で感染リスクに直面している医師・看護師に対しては当然の待遇なのかも知れません。
ですから私はそれに真っ向から反対、と言いたいわけではありません。
消防士の方々なども、火災出動や救助出動の際には手当が付与されるようですから…。
しかし、この期に及んで医療従事者やその職能団体(日本◯◯師協会など)が、自ら特別手当の支給を声高にアピールすることに対しては、私個人的にはちょっと違和感を覚えます。
帰宅すらできず病院近隣のホテルに宿泊しながら日夜働いている医師・看護師もいらっしゃるようですが、宿泊費を公費で賄うのはもちろんのこと、時間外手当もきちんと全額支給すべきです。
また、万が一業務中に感染すれば労災として保障し、治療費を自己負担させることのないようにするなど、労働者としての基本的な権利を守るのが第一です。
遅まきながら政府が「コロナ治療に関する診療報酬の倍増」の方針を打ち出したように、公的制度で上乗せするのも本来の筋道でしょう。
まあ、それが迅速にいかないからこそ、各自治体で特別手当の支給といった話が出てくるのでしょうが…。
誤解の無いように申し上げますが、もちろん
「患者さんが必要な医療を十分に受けられず、国民の命が危機にさらされている」
という観点で、医療現場が深刻な状況に陥っていることを発信していくのは医療従事者として大切です。
しかし、医療従事者の自己保身ばかりを前面に出すのはいかがなものかと思います。
全ての人がそうだと言うわけではありませんが、
「我々は常に感染リスクにさらされているにもかかわらず、待遇が悪い」
という事を、ここぞとばかりに論じる医療従事者も一部存在します。
発信源としては主にネットニュースのコメント欄やツイッター等ですが、言論の自由があるとは言え、同業者としては閉口するばかりです😓
最近では、大阪府内のリハビリ病院における集団感染の報道がありました。
この院内感染がどのように拡がったのかは不明確ですが、PT・OT・STのようなリハビリテーションに携わる療法士たちはその業務の性質上、医療従事者のなかでも特に「感染症の媒介者」になりやすいものです。
そのため平素から「標準予防策」に基づき感染対策をしっかり行う必要があるのですが、それでも100%防止するというのは難しいです(だからこそ「完全」ではなく「標準」なのです)。
この報道に対しても、「私たち療法士は常に感染の危険と隣り合わせだ」といった類いのコメントが多くみられました。
それ自体は事実であり否定しませんが、療法士が媒介者となって多くの患者さんに不利益を及ぼすことを懸念するのならともかく、「自分が感染するのが怖い」といったニュアンスでコメントする人が結構多く、失望してしまいます。
残念なことに、私が以前勤めていた病院の先輩PTの中にもそういう人は一定数存在しました。
院内で媒介者にならないよう、正しく怖れることは療法士にとって重要です。
しかし、「自分が感染するのだけは絶対イヤ」という利己的な感情論には開いた口が塞がりません。
PTももちろん人間であり、感染症を怖がるのも無理はありません。しかしそんなにイヤなら、最初から医療従事者になるべきではありません。
療法士が罹患する怖れのある感染症は新型コロナに限ったことではなく、どんなに対策を施しても完璧に防止することなど実質的に不可能です。
四六時中、防護服とマスク・ゴーグルでリハビリ診療を行うというのは現実論として困難ですから。
3.社会的役割の一端を担っているだけ
そもそも、私たち医療従事者は病気やケガといった「人の不幸」を飯のタネにしています。
公的医療(or 介護)制度の下、今までさんざん恩恵を受けてきたのですから、感染症の拡大といった非常事態において国民のために尽くすのは、国家資格を有する医療専門職として当然のことではないでしょうか?
「患者の命を守るために、身の危険を感じながらも使命感を持ち最前線で頑張ってくれている」
政治家や一般の方々はそう言って応援して下さいます。
医療従事者としての使命感…。そうですね、そう言って頂けるのは有難いのですが、恐縮でもあります。
一方、医療従事者自らが「我々は使命感だけでこの苦境に対峙しているのだ」などと尤もらしいことを述べるのは、あまり国家資格者らしくないです(あくまでも個人的な感覚ですが)。
私は思います。
使命感? いやいや、そんな大袈裟な。
社会の中の、さまざまな役割のひとつを担っているに過ぎないのではありませんか?
医療従事者だけが特別ではないのだから、もっと謙虚になりましょう。
単に、新型コロナ治療の最前線にいるというだけ。
役割が「舞台の上」にあるか、「縁の下」かの違いだけです。
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4.さいごに…批判ではなく建設的な提案を!
ちょっと話が逸れますが、政府与党や行政機関を事あるごとに批判するだけの輩には、もうウンザリです。
あえて言うなら、「聖域なき構造改革」と称し、医療費もその例外ではないということで診療報酬を引き下げ、全国の病院を余裕のない状態に追い込んで淘汰させ、有事における医療現場の危機の遠因を作ったのは、かつての政権与党だと私は考えています(日本では医療崩壊など起こらないと思いますが…)。
それでも、その政権を支持したのは我々有権者であり、他者のせいにするのはお門違いです。
我々はもっと賢く、努力と忍耐を信条とする民族ではないでしょうか。
文句ばかり言うのは日本人の恥。
発信するなら、建設的な提案にしたいものです。
国民みんなで一致団結し、この逆境を乗り越えようではありませんか。
最後までご覧下さいましてありがとうございました。
また、当記事の内容を不快に感じる医療従事者の方々がいたとしたら、お詫び申し上げます。
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