この記事を作成している2020年2月末の時点で、各種イベントの自粛や臨時休校の要請が行われるなど、国民生活に深刻な影響が拡がっています。
今回の政府の対応については賛否両論ありますが、「後手に回った末の失策」といった論調も多いようです。
私自身も医療従事者のはしくれとして感じるところは多々ありますが、結果論で物事を批判するのもいかがなものかと思います。
関係者が常にベストを尽くしてきたかどうかはともかく、現時点で行われていることが「社会的動物としての人類」に為し得る全てなのでしょう。
「医療従事者が他人事のように…」と言われてしまいそうですが、今回は新型コロナの感染拡大に関する雑感を綴ります。
少しお付き合い頂けると幸いです。
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1.尊い犠牲と先人の英知に感謝
感染症の流行が問題になるたびに思い起こすのは、私が尊敬してやまない野口英世博士のことです。
野口博士はかつて黄熱病の病原体を追ってアフリカへ渡りましたが、不幸にもそこで黄熱ウイルスに感染してしまい、1928(昭和3)年、この世を去りました。
当時、黄熱病が蚊によって媒介されるらしいということはすでに解っていましたが、博士は動物実験で死んだサルを多数解剖しており、その際に血液感染したとも考えられています。
野口博士の研究の失敗は、黄熱の病原体を「スピロヘータ(らせん状の細菌)」であると誤認したことから始まっています。
その頃はまだ電子顕微鏡が存在せず、黄熱ウイルスを特定することは技術的にも不可能でした。
ゆえに、野口博士の過ちはやむを得なかった面もあります。
それでも当時、一部の学者の間では「光学顕微鏡では視認できない微小な病原体」の存在が予見されていました。
梅毒(同じくスピロヘータの一種)研究の第一人者であった野口博士は、自身の経験に基づく先入観にとらわれ、真実を見誤ってしまったのかも知れません。
そのため、一般的には「黄熱病に関する彼の業績は、現在では跡形もなく消え去ってしまった」などと酷評されています。
しかし、それは狭量なものの見方であると思います。
数多くの研究者が、この感染症を克服するために危険なアフリカの地で激しい競争を展開し、試行錯誤を繰り返しました。
そのような切磋琢磨があったからこそ、最終的にウイルスの発見やワクチンの開発に結びついたわけです。
研究は結果が全てですが、成功に至るまでのプロセスもまた重要です。そういう意味で野口博士の貢献は多大なものがありましたし、現代の感染症克服にも多くの示唆を与えて下さっていると私は考えます。
新型コロナウイルスには今のところワクチンがありませんが、黄熱ウイルスについては現在ワクチンで予防できます。
けれども、ひとたび罹患すれば対症療法が中心になるのは黄熱病も新型肺炎も同様です(抗インフルエンザ薬などが有効とも報道されていますが…)。
そう考えると、見えない感染症との闘いの凄まじさは、時代を超えて共通であると言えます。
先史時代から20世紀中盤まで猛威を振るったポリオウイルスも、ワクチンは確立されていますが未だ根絶には至っていません。
脚の運動麻痺を起こすことの多いポリオは、皮肉にも私の専門分野であるリハビリテーション医学の発展を促すこととなります。
多くの犠牲の上に医学が進歩してきたことを思うと、感染症と闘い命を散らした方々には敬意を表したいです。
また、野口英世博士をはじめとした先人の英知と努力にも大いに感謝したいところですね。
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2.ヒトは「都合の良い宿主」か…?
黄熱ウイルスが主にアフリカや南米など熱帯地域に限られるのに対し、新型コロナはほぼ全世界に及んでいます。
これは「人類にとっては」厄介なことです。
ウイルスは他の生物の細胞を宿主として利用し自己複製するため、厳密には生物ではないと言われます。
もちろん宿主を殺してしまうのはウイルス自身にとって得策ではないので、通常は平和共存しています。
これを「自然宿主」と言い、SARSはコウモリを、鳥インフルエンザの場合はカモを自然宿主としているようです。
自身の力で代謝と複製を行えないウイルスにとって、空を飛び広範囲に渡って動き回れる生き物は、格好の宿主になるのでしょう。
ところが、何かの拍子にカモからニワトリ、さらにはヒトなど別の動物宿主へ感染すると毒性が増し、まれに「キラーウイルス」へと変貌することがあります。
致死率50~80%のエボラウイルスなどは、キラーの代表格でしょう。
今回の新型コロナについては、自然宿主のコウモリからセンザンコウを介してヒトへ拡がったとも言われています。
70億以上の個体が生息し、世界中を自由に飛び回る「ヒト」という生物は、コロナウイルスにとって最も都合の良い宿主なのかも知れません。
が、人類の側から見れば、時として危険な存在にもなり得るのでしょう。
※現状、新型コロナの致死率は2%前後と推定され、キラーウイルスとまでは言えないようです。
ウイルスとの闘いをあきらめるわけではありませんが、人類が際限のない増殖と発展を続ける限り、感染症の蔓延は必然であるような気もします。
生命の進化にはウイルスの媒介が不可欠だったという説もあるくらいですから、もしかすると「地球上の仲間」とも呼べる存在なのかも…。
人間サイドから見た「ミクロの視点」では、生命を脅かされることのないよう、しかるべき対策を立てていく必要があります。
一方、地球全体の「マクロな視点」から見れば、人類とウイルスは時に拮抗しながらも、共存していく運命にあるのでしょう。
私自身、B型肝炎で療養していたことがあるので、良くも悪くもそう実感できます。
ま、人間サマとしては早く終息するよう、一致団結して頑張るしかないわなぁ。
はい、わかりました…😓
今回は個人的な雑感になってしまい、申し訳ございませんでした💧
最後までご覧下さった方々、誠にありがとうございました m(_ _)m
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