接遇ロールプレイング第3回は、「見舞い客(?)と思われる人への対応」です。
外部からの来訪者に対しては、言葉づかいなどの一般的な接遇対応はもちろんの事、患者様の個人情報・プライバシー保護という観点でも充分留意しなくてはなりません。
ここでしっかりと個人情報保護のポイントを押さえておきましょう!
《スポンサーリンク》
1.『接遇ロールプレイング③』全体の流れ
◆リーダー:おはようございます(敬礼)。
⇒全員:「おはようございます(敬礼)」
◆リーダー:
ただ今より、接遇ミニ研修を始めます。
本日は『接遇ロールプレイング』です。
私が、今から見舞い客の役を演じます。
皆さんは、その見舞い客に応対する職員の役割を演じて下さい。
本日の職員役は…◯◯さん、お願いします。
※リーダーの横など、全員から見える場所に登壇してもらいます。
状況を説明します。
北館1階の外来フロアで、お見舞いのために来院されたと思われる人に声を掛けられました。
適切にご案内しましょう。
それでは、始めます。
◆リーダー:「あの…ちょっといいかな?」
⇒◯◯さん:「こんにちは。いかがなさいましたか?」
◆リーダー:「病棟へ行きたいんだけど」
⇒◯◯さん:「はい、失礼ですがどのようなご用件でしょうか?」
◆リーダー:「“広田すなお”さんという方の見舞いに来たんだけど、どこの病棟か分からなくて…」
※ここでは、実在の人物(◯◯さんの担当患者様など、実際に関わりのある人)の名前をあえて挙げましょう。
⇒◯◯さん:「かしこまりました。お見舞いでしたら、ご面倒ですが、まず総合受付で氏名等をご記入頂き、面会者カードをお受け取り下さい。その後、病棟のご案内をさせて頂きます」
◆リーダー:「そうなの? 面倒だね…。どこへ行けばいいの?」
⇒◯◯さん:「ご足労をお掛けしますが、あちらの西館・総合受付で事務員にお声掛け下さいませんか?」
◆リーダー:「ああ、あそこね。分かったよ」
⇒◯◯さん:「ありがとうございます。それでは失礼致します(最敬礼)」
◆リーダー:
▢▢さん、今のロールプレイング、どうでしたか?
※職員1~2名を指名し、感想・意見などを聞く。
※最後に、リーダーからの意見・総評を添える。
状況に応じた適切な接遇ができるよう、繰り返し練習しましょう。
それでは、本日の接遇ミニ研修を終わります。
今日も1日、よろしくお願いします(敬礼)。
⇒全員:「よろしくお願いします(敬礼)」
<以上>
2.実施上の留意点
基本的な注意点はこれまでの記事と同様です。
1)シナリオの進め方
この研修方法では、リーダーのみ台本を見ながら行うこととしています。
スタッフ側は本番で台本のカンニングは出来ませんが、シナリオのデータをPCファイル等で常時公開し、事前確認は行なえるよう配慮しておきます。
それでも模範演技が出来る人は少ないと思われますので、リーダーはスタッフの出方に応じて適宜アドリブを加える必要があるでしょう。
途中で詰まってしまう場合は、リーダーが「助け船(ヒント)」を出してあげましょう。
ミニ研修は朝礼で行うことを想定していますので、可能な限り5分以内で終わらせたいものです。
2)当シナリオの評価ポイント
①面会者の対応窓口を把握しているか
このシナリオで最も重要なのは、患者様の個人情報を保護するための手順が踏めているかどうかです。
入院しているという事実を第三者に伝えること自体が、当該患者様にとって「個人情報を漏洩された」事になる可能性があります。
ですので、患者様が入院する際には、まず本人の意思(見舞い客が来た時には、入院している事実を伝えて病室へ通しても良いか)を事前に確認しておくのが望ましいと言われています。
中には、特定の面会者のみシャットアウトして欲しい、といった希望を出される患者様もいらっしゃいます。
実際、「本人の妻です」といって面会に来た人を安易に通し、患者様の状況を聞かれるままに説明したところ、実は「離婚係争中の配偶者」だったため、患者様本人からクレームを受けたというケースもあったようです。
※個人情報保護法では、親族も「第三者」として扱われます。病状説明の際など、家族の中の誰に説明するか(キーパーソン)についても患者様の事前の同意を取ることが望ましいとされます。
今回の事例においても、
『見舞い客と称して、入院しているかどうか探りを入れている怪しい人物』
である可能性も否定できません。
きちんとした医療機関であれば、各患者様の面会対応については総合受付&病棟ナースステーション双方で情報共有がなされており、患者様が希望しない面会者はそこで選別されるはずです。
また「入院の事実は誰にも内緒、面会は一切お断り」の患者様の場合、本人の意思に基づき病室の名札の掲示をしない(or 偽名)といった対応が取られる事もあります。
これらの業務は通常、看護師や事務職が初期対応しており、PT・OTなどの療法士にとってはあまり馴染みがありません。
自分が働いている職場ではどのような対応をしているのか、しっかり把握しておきましょう。
ともかく、この研修事例の本題である
「素性の不明な見舞い客(来訪者)から声を掛けられた時は、最初にどの窓口へご案内すべきか?」
を確認しておくことは必須ですね。なぜなら、各医療機関によって対応が以下のように異なるからです。
◆総合受付内の特定の案内窓口→病棟ナースステーション
◆病棟ナースステーションのみ
◆フリーパス(特別な対応をしていない)
いまだに「実質的にフリーパス」といった病院も多いですね…。リスク管理(窃盗犯・凶悪犯の侵入)という意味でも、非常に危ないと思います。
いずれにせよ、くれぐれも “広田すなお” 様が自分のリハビリ担当患者様だからといって
「ああ、広田様ですね。◯◯病棟の△△△号室ですよ♬」
などと安易にご案内しないよう、充分注意しましょう!
②言葉づかい
◆「失礼ですが…」「ご面倒ですが…」「ご足労をお掛けしますが…」
⇒個人情報の保護は、厳密にすればするほど「融通の利かない対応」になりがちであり、来訪者を不愉快にさせる要素を含んでいます。
少しでも不快感を和らげ、無用なトラブルやクレームが避けられるよう、クッション言葉をうまく活用したいものです。
リーダーは総評の際に上記の評価ポイントについて言及し、演技の中で不十分な点があれば説明を加えましょう。
明らかな間違いはその場で訂正し、それを全員で共有することが大切です。
逆に、上手に応対できていた点はしっかり褒めてあげましょう (*^_^*)♪
《スポンサーリンク》
3.さいごに…医療従事者の方々へ
以前勤務していた病院で、私は『個人情報保護推進委員会』という長ったらしい名前の委員会において、委員長を務めていました。
面会や電話問い合わせへの対応方法など、個人情報に関わるルール作りと組織への浸透という点では苦労させられました。
前述のように、法に基づいた厳格な対応を現場に強いると、ややもすると「杓子定規」になりがちであり、無用なトラブルにつながりかねません。
かと言って、いい加減な対応をしていると保健所等から不備について指摘を受けることもあります。
誰も不快にさせない完璧な対応というのはなかなか難しいですが、「患者様への事前確認と同意」を柱として個人情報を管理するとともに、来訪者には接遇技術を織り交ぜて丁寧に接するのがベターと言えるのでしょう。
個人情報保護法に関する職員向けの研修なども、よく行なったものです。
⇒参考資料:個人情報保護法に関するQ&A
上記の資料は、院内研修会の内容に盛り込んでいました。
ちょっと堅苦しい部分もありますが、基本的な個人情報保護対応について学びたいという医療従事者の方々は、ぜひご一読下さい。
最後までご覧下さいましてありがとうございましたm(_ _)m
《スポンサーリンク》