すなおのひろば

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運動時の血圧管理 …<後編>血圧低下について

f:id:sunao-hiroba:20200307170726p:plain私の経験上、病院等で患者さんが運動療法を行っている最中、血圧上昇によって体調が急変することは意外と少なく、ましてや高血圧性脳出血心筋梗塞を発症するといったケースは稀です。

むしろ、急激な血圧低下によるアクシデントの方が圧倒的に多いと言えます。

後編の今回は、血圧低下時の注意点や防止対策等について述べたいと思います。

※ここでは現時点でのエビデンスと私自身の臨床経験も踏まえてご説明しますが、実際に疾患をお持ちの方々はそれぞれの状態に応じた個別対応が必要な場合もあります。当記事の内容をうのみにすることは避け、必ず主治医から血圧等の適正値について指示を受けて下さい。

 

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※参考資料:以下のウェブページをご覧下さい。

www.jarm.or.jp

 

 

5.血圧低下に関する中止基準の考え方

前回と重複しますが、まず『リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン(以下、リハ安全ガイドライン)』をご確認下さい。

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※参考資料:日本リハビリテーション医学会『リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン』より一部抜粋。


PTの方々にとっておなじみの『アンダーソンの基準』との大きな違いは、血圧・脈拍の下限値(赤字)が追加されていることです。

1)安静時の基準について

<表1>では「収縮期血圧70mmHg以下」となっています。

これは極めて妥当ではありますが、前回の記事で述べた血圧上昇に関する基準と同様、平常時(調子の良い時)との差を示す基準値は示されていません。


一般的に医療従事者であれば、安静時収縮期血圧が100mmHg未満の場合、運動療法を行わせるに際して少し注意を払うでしょう。

ただ「安静時でも収縮期80~90mmHgが普通」という人もたまにいらっしゃいます(特に女性には多いです)。

f:id:sunao-hiroba:20200313195249p:plainその状態で平素からコントロールされているのなら100mmHg未満でも問題はありませんが、普段150mmHgの人が100を下回るようであれば、その差は50以上にもなるので警戒が必要です。

と言うより、そこまで下がっていれば大抵の場合は自覚症状(めまい・立ちくらみ・頭痛・動悸・倦怠感・冷汗など)があるため、即座に「運動不可」と判断されるでしょう。

 

結論として「安静時の収縮期血圧が70mmHg以下であれば問答無用で運動不可」とするのは妥当ですが、その基準のみに縛られず、自覚症状等も含めて総合的に判断することが求められます。

2)運動時の基準について

どういうわけか、<表1>『リハ安全ガイドライン』には基準値が明示されていません。

数値ではなく総合的に判断せよ、ということでしょうか。

 

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読者の皆さまも、立ち上がりの際に目の前が暗くなり、ふらついた(いわゆる「立ちくらみ」)という経験をお持ちかと思います。

この時、運動前と比較して収縮期血圧が20mmHgまたは拡張期血圧が10mmHg(およびその両方)低下していれば、「起立性低血圧」とされます。

通常、少し休めば回復しますが、足腰の弱い高齢者であればそのまま転倒・骨折といったリスクにもつながります。

 

ゆえに、

「運動前と比較して収縮期20mmHg以上低下していれば、自覚症状が無くとも一定の警戒をしておくべき」


このように考えても良いかと思います。

 

前回の記事で述べたように、運動中に血圧が上昇するのは自然な反応です。

ということは、逆に運動しても上がらない…むしろ下がるとなれば、注意すべきは当然でしょう。

 

6.血圧低下のリスク因子

運動中の急激な血圧低下の原因として、出血やアレルギー反応による「ショック」などの重篤なケースもあるのですが、頻度としては稀なので詳細は割愛します。

以下のイラストでは、日常で特に起こりやすい状況について示しました。

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1)血管迷走神経反射性低血圧

ややこしい名称ですが、低血圧や失神の原因として最も頻度の高いものと言えます。

誘因は以下のようなものです。

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◆強い痛み刺激

◆不眠・過労・長時間の起立

◆下痢・便秘(排便中・排便直後)

◆空腹・食事直後

◆精神的ストレス

病院等におけるリハビリ診療中でも「あるある」の状況ですが、いずれも迷走神経反射による血圧低下を誘発するので注意が必要です。

私自身ウォーキングや筋トレを日課にしていますが、上記のような誘因を抱えている時は運動を控えるとか、強度を普段より低めにするよう心掛けています。

2)起立性低血圧

前述しましたが、これもよくある事例です。

平素から屋内で横になっていることの多い高齢者などは、血圧の自己コントロール能力が低下しています。

立ち上がりなどの姿勢変換時は、特に気をつけましょう。

3)薬剤性低血圧

例えば、心疾患や高血圧症で用いられる「β(ベータ)遮断薬」などは心臓の働きを抑える作用があり、運動しても脈拍が上がりにくくなります。
結果として血圧が下がることにもつながるため、運動の際は十分な注意が必要になります。

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他にも、抗うつ薬など血圧に影響をおよぼす薬剤は多くあります。

現在服用しているお薬が運動にどう影響するのか、しっかり調べて把握しておきましょう。
かかりつけ医や薬剤師にも確認しておくことをお勧めします。

 

7.防止対策・急変時対応

 

1)予防策

基本的には血圧低下のリスク因子を未然に排除するとか、避けられない時は運動を中止、ないし強度を弱めて慎重に実施することが第一です。


また、本格的な運動の前に、血液循環を促す準備体操をするのもひとつです。

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『かかと上げ⇔つま先上げ』は、膝から下(ふくらはぎなど)の筋肉を使ってやることで、脚に溜まった血液を心臓に戻す作用があります。

過去記事でもご紹介しているので、参考にして頂けると嬉しいです。
すなおイチオシの筋トレでもあります🎵

 

2)血圧変動時の休息姿勢

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血圧上昇時(もしくは、それが疑われる自覚症状があった時)は椅子に腰掛けるなどして、まず身体を休めましょう。

軽い気分不良の際には基本です。

また、ちょっとした立ちくらみ程度ならばこれでも良いかも知れません。


明らかな血圧低下の場合は、以下のような姿勢が望ましいとされます。

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①下肢挙上位

両脚を心臓よりも高くします。
静脈還流を促し、低くなった血圧を回復させる効果があります。

枕は外しておきましょう。

②回復体位

救急救命の際によく用いられる体位です。
嘔吐のリスクがあれば、この方が良いでしょう。
アゴを上げ、気道を確保することが重要です。

血圧低下だけでなく、さまざまな体調急変に応用できます。

 

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8.さいごに

一般の方々や経験の浅いPTほど血圧上昇に対し過敏になりがちのようですが、これまで述べてきたように、運動中は血圧低下が体調変化につながるケースが多いものです。

血圧上昇・低下それぞれにどのようなリスク因子があるのかを把握し、防止対策や急変時の対応を押さえておけば、それほど怖がることはないでしょう。

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中止基準の数値は覚えておいて損はありませんが、かと言って必要以上に神経質になることもありません。
計測値だけにとらわれず、平常との差や身体症状に注目することが大切です。

「いつもと何か様子が違うな…」といった小さなサインを見逃さないようにしましょう。

 


体調に留意しながら安全に運動を続けたいという中高年の方々や、リハビリテーションに携わる若手PTの方々にとって、この記事が少しでもお役に立てば幸いです。

 

最後までご覧下さいましてありがとうございました🎵

 

 

 

 

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