院長先生の言葉通り、大学での4年間は、身体的にはずいぶん楽だったといえます。
卒業の時点で完璧に治癒したといえる状態ではありませんでしたが、徐々に落ち着いてきました。
そこで私は、新たな一歩を踏み出すことになります。
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1.「患者さん」から「医療を提供する側」へ
大学へ進学してからも、卒業後の進路については常に迷いがありました。
時はバブル崩壊後の就職氷河期ということもあり、ふつうに一般企業へ勤める自分というのが想像できず、さらに言えば、「これまでの経験を活かして、将来は医療従事者として社会に貢献したい」という気持ちが日増しに強くなっていったのでした。
小児病棟に入院していた頃、ある男性の医療従事者が、ペルテス病(小児の股関節疾患)の子どもに対し、楽しそうに会話しながら股関節の動きをあれこれ確認したり、松葉杖で歩く練習などをしているところをたびたび目にしていました。
のちにそれが理学療法士(PT)であると知り、「これだ!」と直感しました。
医師や看護師・薬剤師といった他の医療従事者と比較して、特定の患者さんとマンツーマンで接している時間が長く、自分がめざしているものに合致していると思われたからです。
大学4年のなかば、私はPTを養成する専門学校を受験することを決意し、勉強を開始しました。
もちろん勉強方法は院長先生直伝です。
当時は今と違いPTの養成校がまだまだ少なく、大学受験並みの競争率だったので油断できませんでしたが、なんとか無事合格しました。
再び院長先生と高校3年の時の担任の先生に報告へ上がったのですが、やはり穏やかな表情で喜んで下さいました。
ただ同時に、「これからが大変だよ」とも付け加えられました。
それは色んな意味を含んでいたと思います。
実際、医療系の専門学校における学業は非常に厳しいものであり、とくに臨床実習を乗り切るのは体力に自信のない私にとって大変な苦痛でした。
しかし、それまでのさまざまな体験が糧になったのか、幾多の挫折を繰り返しながらも何とか念願を叶えることができました。
今では、B型肝炎はすっかり治ったといえる状態になりました。
そして、もう今年(2018年現在)で職歴21年目のPTとなります。
初めて入院した時から、31年の歳月が流れました。
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2.病気を癒すのは、自然治癒力と人のこころ
肝炎による倦怠感については、私の場合、「動くのもつらい」というほどひどいものではありませんでした。
肝臓は「沈黙の臓器」といって、よほど悪化しない限り症状が明確化しないものです(逆に症状が顕在化していれば相当悪くなっていると考えられます)。
治療に関しても、発熱などの苦痛を伴う薬剤投与も時にはありましたが、適度な安静と無理のない活動、そして食事療法が中心であり、結局は患者自身が持っている自然治癒力に期待するしかないのです。
私にとっては、病気そのものの症状や治療のつらさよりも、それによって生じた社会的不利(就学困難や進路選択の限定など)が精神面に与える影響のほうが、はるかに重大なことでした。
これは私だけに限ったことではないでしょう。
そして、そういう精神面の揺れ動きは、逆に病気の治癒にもかなりの支障をきたすと思われます。
よく、「病(やまい)は気から」といいます。
病気に罹るから心が沈むのか、心が病むから体も病むのか、どちらが先かは疾患の種類にもよるでしょうが、どちらにせよ最終的には双方向、互いに影響を及ぼすものです。
私は療養中、医療従事者の方々、その他多くの支援して下さった人からのあたたかい言葉や行動によって、ずいぶん癒されました。
それは時に、安静とか薬よりも効果があったのではないかと感じています。
このようなことは、多くの人に共感していただけるものと思っています。また、病気やケガの治療を考えるうえで非常に重要な要素であるといえます。
すこし乱暴かもしれませんが、病気療養の原則として大切なことを優先順位(※)で並べると、
①自然治癒力を引き出すための各種活動(適度な運動・食事・娯楽など)
②心の健康を保つための支援体制(適切な声掛け・寄り添いなど)
③上記の二つをサポートするための医学的措置(投薬・安静・手術など)
こんな感じになるのではないかと思います。
これはあくまでも私の経験による印象ですが、これらの考えをベースとして今後のブログを構築していきたいなと考えています。
※この優先順位は、当然ながら疾患の種類や病期(急性期・回復期・慢性期など)によって異なります。
病気やケガの状態が落ち着いている時期(回復期~慢性期)においては、おおよそこの順位で間違っていないと思われますが、命にかかわるような緊急の場面では、むしろ③の措置が最優先になることもあります。
念のため申し添えておきます。
3.さいごに
プロフィールも兼ねて、私自身の病気とのかかわりを綴ったこのシリーズ、これでいったんおしまいです。
今まで私を支えて下さった多くの方々に、この場をお借りして、あらためて感謝の意を表します。
そして最後までお付き合い下さいました読者のみなさま、どうもありがとうございました… m(_ _)m
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