すなおのひろば

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◆2014年9月27日 - 御嶽山が噴火。火口付近に居合わせた登山者ら58名が死亡。日本で戦後最悪の火山災害。

【理学療法きほんのき:その7】歩行の介助方法(入門編)… 見守りレベル

f:id:sunao-hiroba:20210820173937p:plainPTにとって、業務のなかで歩行をアシストする場面はとても多いです。

そのため、慣れてくると何気なく介助しがちですが、本来は歩く目的や環境に応じて介助方法を随時変更する必要があります。

当記事のコンセプトは「きほんのき」なので、まずは対象者の安全を最優先した介助(見守り)方法について述べたいと思います。

※主にPT向けの内容ですが、その他の医療・介護従事者や一般の方々にも参考になれば幸いです。

 

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1.歩行介助きほんのき…安全第一の原則

導入で述べたように、歩行介助は目的に応じてその方法を選択しなくてはなりません。

看護・介護職の方々であれば、「安全な移動」を最優先した介助方法を採るのが一般的でしょう。
一方、リハビリ専門職であるPTやOTでは「訓練としての歩行」をアシストすることも多いです。

f:id:sunao-hiroba:20210820173937p:plain例えば、普段は歩行器で移動している患者さんに対し、リハビリ場面では杖歩行や独歩をトライして頂くというケースがあります。
当然ながら、これには一定のリスクがあります。

PTにとって興味があるのは「訓練としての介助法」なので結論を急ぎたくなるところですが、原理原則が身についていない人にリスクを伴う手法をお薦めするわけにはいきません。

そこで今回は、安全第一の観点で歩行介助のあり方を提示していきます。

1)患側(かんそく)の確認

f:id:sunao-hiroba:20210820173937p:plain患側とは、左右どちらかの手足が不自由な対象者に用いられる医療用語です。

介助する位置(後述)を決める上で重要です。

脳梗塞・右片麻痺…右が患側。
◆左大腿骨頚部骨折…左が患側。

初めての介入では、現病歴や既往歴の情報を収集しておくのが鉄則。
これは理学療法プロセスに関する記事で述べた通りです。

2)簡易検査

カルテ情報が不足している場合は、歩く前に運動機能の検査をするのも良いでしょう。

※以下、あくまで簡易的な下肢(かし:脚)の筋力テストであり医療者が行う評価としては不十分ですが、一般の方々には参考になるかと思います。

①SLR(Straight-Leg-Raising:下肢伸展挙上)

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背臥位(はいがい:仰向け)で行えるテストです。

膝をまっすぐ伸ばしたまま上げて頂きます。
軽々と上げられる人なら、歩く際に自分の体重をある程度支えられるだろうと予測できます。
逆に、なかなか脚が持ち上がらない人は、体重が支えきれず「膝折れ」するリスクが考えられます。

筋力の左右差が明確な場合、上げにくさ(上げるスピード)の違いで分かりますが、両方ともそこそこ強くて判別しにくい場合は、写真のように抵抗を加えてみましょう。

②膝伸ばし

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坐位で行うテストで、目的はSLRと同様です。

③片脚立ち

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筋力とともにバランスも評価できます。
膝折れするリスクがあるので、先に or のテストをしておくことをお薦めします。

 

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2.『見守りレベル』の介入方法

対象者の患側と筋力レベルが確認できたところで、介助方法を考慮しましょう。

ここでは、介助をほぼ必要としない『見守りレベル(近位監視・近接監視)』を想定しています。
介護保険法で云うところの『要支援1~2』ぐらいと思って下さい。

1)介助者の立ち位置

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患側の真横もしくはやや後方、いざという時すぐに手を添えて転倒を防止できる位置に立つのが基本です。
つまずくとか、膝折れ、バランスを崩すなどの現象は、患側下肢を起点として生じることが多いからです。

もちろん「患側方向へ転倒しやすい」という予測は絶対ではなく、例外もあり得ます。
介入を進めていくなかで、それぞれの対象者に応じた最適の立ち位置を探っていきましょう。

2)対象者を中心として全体に気を配る

真横~やや後方を基本とする理由は、対象者と進行方向に注意を向けつつ、空間全体を把握するためです。

首を振って視線を移動させることがあっても、視界の片隅には常に対象者を捉えておくようにしましょう。

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注意を向ける割合は、私の感覚では

◆対象者とその周辺:6割
◆死角:4割

といった具合で、「背中にも目をつけておく」ことが大切。

あとは状況に応じて割合を変化させるようにしています。

3)センサーを働かせる

私の場合、『見守りレベル』の対象者であっても、上腕の辺りを軽く持たせて頂くことが多いです。
握るというほどではなく、少し触れる程度です。

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理由としては、対象者も介助者も、歩くことにのみ集中できない場面が多々あるからです。
例えば病院・施設内では他のスタッフや患者さん(利用者さん)が後ろから突然話しかけてきますし、屋外であれば車などに注意する必要があります。

前述のように「常に視界の片隅に対象者を捉えておく」のが基本ですが、状況によっては一瞬視界から外れてしまうこともあります。

皮肉なことに、そういう時に限って転倒事故は起こるものです。

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ほんの少しでも腕に触れておけば、視界の外で対象者がバランスを崩しそうになってもすぐに感知できます。

触れている手が転倒防止センサーになるわけです。

それだと『見守り』じゃなくて『軽介助』の領域じゃないの?


といったご指摘を受けそうですね。

不要な介助は対象者の精神依存度を高めてしまうなど、さまざまなデメリットもあります。

ただし、訓練としての要素が少なく、安全に移動・誘導することを優先してもよい状況では、対象者の了承を得た上で軽く触れさせて頂くようにしています。

これだけでも、PT介入中の転倒事故の確率はかなり減少します。


f:id:sunao-hiroba:20210820181245p:plainちなみに、視覚障害者を誘導する際のように逆に介助者の腕を握らせる方法は、身体障害者・要介護高齢者にはあまり適しておらず、咄嗟の場合に対応しにくいです。

物事にはすべて例外があるので「絶対ダメ」というわけではありませんが、念のため申し添えておきます。


次回の記事では、介助量が軽~中等度以上の方法についてまとめる予定です。

それでは、最後までご覧下さいましてありがとうございました m(_ _)m

 

 

 

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