すなおのひろば

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◆2014年9月27日 - 御嶽山が噴火。火口付近に居合わせた登山者ら58名が死亡。日本で戦後最悪の火山災害。

【理学療法きほんのき:その8】歩行の介助方法(ちょっと応用編)… 軽~中等度以上の介助レベル

f:id:sunao-hiroba:20210827175928p:plain前回の入門編(見守りレベル)では、情報収集の重要性とともに、「対象者の安全を最優先」「周囲環境にも常に気を配る」という観点でお話ししました。

今回はさらに介助量の多いケースについて、体重支持性や重心移動にも着目しながら例示しますが、原理原則は共通です。

※主にPT向けの内容ですが、その他の医療・介護従事者や一般の方々にも参考になれば幸いです。

 

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1.『軽介助レベル』の介入方法

ここで云う『軽介助』とは、

◆対象者自身で体重を支えることができる。
◆左右・前後へのふらつきを少しだけ制御する必要がある。

これぐらいのレベルと考えて下さい。

 

「患側の真横もしくはやや後方」を基本の立ち位置とするのは見守りレベルの場合と同様ですが、上腕はよりシッカリと把持します。

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ただし、指を立てて握り締めてはいけません。不快感・痛みのない程度に持ちましょう。

この上腕を補助する手で、主に左右へのふらつきをコントロールできます。


前後へのふらつきがみられる対象者には、以下の方法を考慮します。

1)重心が前方へ行き過ぎる・歩行速度が速過ぎるケース

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左手で、患側の肩あたりに軽く触れるようにします。
対象者の重心が前に行き過ぎるのを未然に制することができます。

2)重心が後方へ行き過ぎるケース

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左手で上腕を持ち、右手でズボンのベルト辺りに触れておきます。
後方へのふらつきに対応できます。

 

2.『中等度介助レベル』の介入方法

『中等度(ちゅうとうど)介助』の定義づけはやや曖昧ですが、

◆持ち上げるような介助は不要だが、体重支持を一部補助する必要あり。
◆重心移動をアシストする必要あり。

これぐらいのレベルと考えて下さい。

1)急な膝折れ・尻もちのリスクがあるケース

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手の位置は軽介助とほぼ同様ですが、ベルトの辺りを軽く握っておきます。
いざという時に備えての措置ですが、事前に対象者の同意を得ておくことが望ましいです。

2)体重支持のアシストが必要なケース

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右手は上腕、左手は対象者の左手を握り、掌(てのひら)で体重を支えます。
患側下肢の筋力が弱い場合に有効です。

3)重心移動のアシストが必要なケース

人間が歩く際、重心は左右に移動しながら前へ進みます。

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立脚側へ揺れるように、滑らかなS字を描きます。
これは動作観察の記事で述べた通りです。

歩行時の重心は側方だけでなく、厳密には上下移動も含め複雑な軌跡を描くのですが、最初はできるだけ単純に考える方が分かりやすいです。

歩行介助の際は、まず左右移動に意識を集中してみましょう。

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右立脚期では右へ。
左立脚期では左へ。
どれくらいの量をアシストするかは、対象者の動きに応じて判断しましょう。

介助者は、左右の動きを対象者と同調させるとリズムよく歩けます。

このようなアシスト方法は全ての疾患に応用できますが、特にパーキンソン関連疾患や脳卒中片麻痺で有効です。

 

3.『重度介助レベル』の介入方法

『重度介助』とは、

◆下肢筋力が弱く、体重支持をしっかりと補助する必要あり。
◆重心移動をより明確にアシストする必要あり。

このように、中等度の方法をさらに強調したものとなります。

これぐらいのレベルになると介助の難易度は高く、女性や小柄なPTでは危険を伴います。
一旦倒れ始めると制止できず、下敷きになるしか助ける方法がないことも…。

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ゆえに、「重度介助の杖歩行・独歩」は日常の移動手段としてはあまり実用的ではありません。
そんな時は無理せず車いすを使うとか、歩行器の活用も検討しましょう。

歩行器の選定方法については過去記事(歩行器の種類と適応)をご覧下さい。

1)後方から介助するケース

歩行器は体重支持や重心の安定化に貢献し、介助量の軽減につながります。

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骨盤(ズボンのベルトなど)を持ち、体重支持・重心移動をアシストします。
後方からの介助が基本ですが、患側の斜め後ろなど、必要に応じて変化をつけましょう。

対象者が急に疲れることも想定に入れておきます。病院・介護施設内であれば、周囲のスタッフに援助してもらえる環境下で歩くのが望ましいでしょう。


簡易式の座面が付いている歩行車は、いざという時に便利です。

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※画像引用元:左…島製作所 右…幸和製作所

 

2)前方から介助するケース

俗に「手引き歩行」と云われますが、前から引っ張るというよりも、やはり左右への荷重移動を意識すると上手く介助できます。

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注意点としては、なるべく両手を握り合わないことです。
両手が完全に塞がってしまうと、いざという時に身動きがとれず助けられないからです。
持つ位置は、身体に近いほど安全と言えます。

介助者はバックで歩くことになるため、後方には十分注意が必要です。

前方から引っ張る形の介助法は、不適切だという意見もあります。
「自立歩行につながらず、精神依存度を増してしまう」とか「運動力学的に理にかなっていない」といったものです。

しかし私の見解としては、介助技術は常にケースバイケース。
この方法はダメ、と決めつけるのは良くないと思います。

例えばパーキンソン関連疾患では、重心の左右への移し換えや前後バランスに問題が生じやすく、手引き歩行が有効なケースも多いです。

 

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4.さいごに

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今回ご紹介した介助方法はごく一部です。

バリエーションはまだまだ沢山ありますが、

◆いつも視界の中に対象者を捉えておく。
◆周囲環境にも常に注意を向ける。
◆転倒事故を未然に防げる立ち位置・持ち位置を探る。
◆重心移動を意識し、必要に応じてアシストする。

といったセオリーは、あらゆる手段に共通のものです。
基本をしっかり押さえてから、応用につなげていくようにしましょう。

何よりも、対象者にとって安全・安心であることが第一ですね😊


それでは、最後までご覧下さいましてありがとうございました m(_ _)m

 

 

 

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