医療で云うところの「代償手段」とは、身体の障害を補うツールや方法論のことを指します。
変形性膝関節症が加齢性の疾患である以上、完璧に治癒することは無いため、体と相談しながら上手に付き合っていかなくてはなりません。
今回は、動作障害や膝関節の機能低下を補助する器具について述べたいと思います。
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1.歩行補助具
歩行障害を代償するツールとしては、杖と歩行器が代表的です。
手で何かを支えにすれば、膝に掛かる体重を分散することができるのは言うまでもありません。
また、支持基底面を拡げることでバランスが良くなるのも大きな利点です。
※使用方法等、詳細については当ブログの歩行補助具シリーズを併せてご覧下さい。
1)杖
膝の痛みがごく軽く、歩く際にふらつかない人は『T字杖』でも大丈夫でしょう。
痛みや歩行バランス低下が中程度であれば、『ロフストランド杖』か『4点杖』が適応になります。この2つは介護保険でレンタル可能です。
『ウォーキングポール』はあくまでもスポーツ用品であり、介護保険適用ではありませんが、膝や股関節に痛みのある人がウォーキングを楽しむ際には有効です。
『松葉杖(両側支持)』は体重の分散という意味では最も性能が高く、介護保険でレンタルも可能です。
しかしながら、高齢女性には扱いが難しい面もあります。
松葉杖を使わなくてはならないほど膝痛が酷く、歩行バランスも悪い人であれば、むしろ歩行器を検討した方が良いかも知れません。
2)歩行器
歩行器の選定で重要なのは以下の3点。これらは体重支持性と歩行バランスに大きく関わる要素です。
◆歩行器自体の支持基底面が広いこと。
◆グリップ(手で握る or 肘で支える部位)が進行方向に対し平行であること。
◆歩行器の支持基底面内に、使用者の支持基底面を収められること。
『シルバーカー』は、最近ではホームセンター等でも安価に購入できますが、上記3要素を満たしていません。そのため「歩行器」としては扱われず、介護保険レンタルの対象外です。
それに対して『屋外用歩行車』では、グリップが進行方向に対しほぼ平行に付いており、4輪で囲まれた支持基底面内に使用者の足を踏み込むことができます。これは膝が悪い人にとっては重要なことです。
特に膝の内反変形が強い人は、歩く際に身体が横ゆれしがちです。
グリップが横棒タイプ(バーハンドル)で、車体と使用者の支持基底面が重ならないシルバーカーでは、横ゆれに対応しにくいのです。
ゆえに、膝の痛みが中程度かつ外を歩く必要性がある高齢の方々には、屋外用歩行車をお薦めすることが多いです。
『室内用歩行車(馬蹄タイプ)』や『ピックアップウォーカー』では進行方向にまっすぐ向いたグリップ内に使用者の身体をすっぽりと収めることができるため体重支持性・バランスに優れており、重症者向けと言えます。
ただし、使用環境としてはほぼ室内に限られます。
病院や高齢者施設でよく見かける歩行器ですが、環境が整っていれば一般住居でも使用することは可能です。
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2.膝装具
装具の主な役割は、弱くなった筋肉や損傷した靭帯を補助し、膝関節の安定性を確保することにあります。
膝装具の種類はさまざまですが、金属の支柱が入った強固なタイプは十字靭帯の損傷などに用いられます。
一方、変形性膝関節症ではソフトタイプのものがよく使われます(重症度にもよりますが)。
いずれも、医師が必要と認めた場合は「治療用装具」として医療保険が適用されます。
※画像引用元:中村ブレイス株式会社
最近では、百貨店の健康器具コーナーや通販でも類似の商品が販売されています。
それらの購入を全否定するわけではありませんが、軽度の膝関節症に対して過剰にサポートしてしまうと、かえって筋肉が弱くなったり可動域が狭くなるなどの弊害もあり得ます。
なので、膝の症状にお悩みの方々はまず整形外科医の診察を受けた上で、各々の状態に適した装具を処方してもらう方が良いのではないかと思います。
もしかすると、
装具はまだ時期尚早。
まず膝の周りの筋肉を鍛える運動をして、様子を見ましょう。
という話になるかも知れませんからね。
続きは次回とさせて頂きます… m(_ _)m
<次回予定>
代償手段について…②日常生活動作の工夫
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