よく「生活環境を和式から洋式へ改めましょう」と、あまり深く考えずに患者さんに勧めてしまうPTもいますが、畳の上での生活が変形性膝関節症をより悪化させるという明確な根拠はありません。
けれども、床に座る・立つという動作そのものは脚が不自由な人にとっては少々キツいのも事実です。
高齢で膝関節症が重度、その上転倒リスクも高いという人には、イスやベッドの使用をご提案することもあります。
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1.座面のかさ上げ
イスの座面の高さは、40~42㎝が標準。
これは成人男性の身長に適合したものです。
基本的に高い方が立ち座りは楽なので、一般的な高齢女性にとっては概ね適切であると言えます。
逆にこれより低くなると辛くなりがちです。
痛みがある場合は、無理せずクッション等で座面のかさ上げをしましょう。
トイレの便座をかさ上げする『補高便座』は、介護保険の福祉用具購入対象品目となっています。
また、立ち上がりを補助する手すりの設置も介護保険で対応できます(いずれも要介護 or 要支援認定を受ける必要がありますが)。
2.正座する時
正座そのものは、日本人の膝の可動域が良好な理由のひとつであり、悪いことばかりではありません。
ただ、膝関節症が重度な人にとっては症状を悪化させる要因にもなり得るようです。
どうしても必要な場合は、なるべく長時間にならないこと。
座布団を挟むなどして、膝を深く曲げ過ぎないようにするのがベターです。
3.床から立ち上がる時
いわゆる「正面立ち」は、膝に多大な負担が掛かります。
いったん四つ這いになってから、重いイスなどのしっかりした土台を支えにして立ち上がると良いでしょう。
※座り込む時は、逆の順です。
③の場面で、どちらの膝を前・後にするかは、痛みと相談して決めましょう。
膝を床につく際は、「ドスン!」と衝撃を加えないように注意します。
床に座る・立つという動作がキツい人は、布団で寝るのが難しくなります。ベッドの使用を検討してみても良いでしょう。
介護ベッドは介護保険でレンタルが可能です。
※ただし、軽度者(要支援1・2および要介護1)の場合は利用制限があります。詳しくは担当ケアマネージャーにご相談下さい。
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4.階段昇降
ウォーキングは少々痛くてもボチボチ行って頂きたいですが、階段についてはあまり無理しない方が良いようです。
特に降りる際は、関節面にかなりの負荷が加わります。
痛みや関節変形の強い人はなるべくエレベーターなどを利用しましょう。
1)昇る時
健側(痛くない or 痛みが比較的少ない方)から1段ずつ昇りましょう。
※この場合、右が患側です。
基本的な動作パターンは過去記事(T字杖による歩行・階段昇降の方法)で既に提示していますが、膝が悪い人の場合、階段に対し身体をやや斜めに向けるのがポイント。
そのほうが健側の膝を曲げる角度を最小限にできるからです。一度お試し下さい。
2)降りる時
患側(痛い方)から、ゆっくりと1段ずつ降りましょう。
手すりがどちら側にあったとしても、
「昇る時は健側から・降りる時は患側から」
の原則は変わりません。
続きは次回とさせて頂きます… <(_ _)>
<次回予定>
人工膝関節置換術について…①術式の特徴
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