すなおのひろば

中高年の健康と若手PTの未来をサポートするブログ

◆明日から2日間、臨床実習指導者研修会に参加してきます。計16時間の長丁場。結構大変ですね…(12/13)

【腰痛とともに生きる:その2】腰痛の原因別対処法…<前編>椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症

f:id:sunao-hiroba:20190227130602p:plainひとくちに腰痛と言っても、その原因となる疾患や背景要因は数多く存在します。

治療法・対処法には、それら原因によって全く異なるものもありますが、一方でほぼ共通する部分もあり、混同するとややこしくなりがちです。

なので、ここからは腰痛の原因別対処法について改めて整理してみたいと思います。

今回の記事では、椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症についてご説明します。

 

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◆はじめに

筆者は理学療法士(PT)歴21年であり、これまで腰椎疾患を持つ患者さんを数多く担当してきましたが、その一方、私自身も長年にわたり腰痛と付き合ってきました。

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21~22歳頃に『腰椎椎間板ヘルニア』を発症、さらに30代後半には『腰部脊柱管狭窄症』の症状が出始めました。

それら腰椎疾患に加え、腰に負担の掛かる職業上の動作を長年繰り返した事も相まって、腰痛はすっかり慢性化してしまいました。

幸いにも今のところは手術に至ることも無く、何とかセルフコントロールはできている状態です。


そんな私が提唱する腰痛対策というものに、どれほどの妥当性があるのか? と疑問符をつける読者様もいらっしゃることでしょうが、それはさておき…(^_^;)

 

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「PT&腰痛患者」の目線で見たとき、従来から言われている腰痛対処法の中には、所々で「ん? 自分の臨床経験とは少し違うなぁ…」と感じる部分がいくつかあります。

そのような私見については、医師や他の療法士の方々からは反論もあるかと思いますが、あえて記述させて頂きました。

「一般的な見解」と「私見」は、なるべく混同しないように注意して記載したいと考えておりますので、なにとぞご容赦下さい。

 


まずは、腰痛原因の統計学的見地について復習しておきましょう。

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※参考資料:腰痛対策 - 厚生労働省(一部改変し引用)


腰痛には、レントゲン・MRIなどの各種検査で原因をある程度特定できる「特異的腰痛」と、原因を特定することが難しい「非特異的腰痛」の2つに大別されます(図1)。


上記を前提に、まずは「特異的腰痛」を代表する疾患について順に解説していきます。

 

1.腰椎椎間板ヘルニア

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背骨の間でクッションの役割を果たしているのが椎間板ですが、この一部(髄核:ずいかく)が後方へ飛び出し、腰から下へ向かう神経の根元を圧迫します。

多くは、腰痛というよりもむしろ「お尻~片脚」へ拡がる痛み・感覚障害が主な症状です。

神経圧迫の部位や程度によっては脚の筋肉の運動麻痺や、まれに膀胱・直腸障害(おしっこや便が出にくくなる)が起こることもあります。

経過が長くなると、私のように慢性腰痛へとつながることも多いです。

1)治療法

◆痛みへの対症療法:
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鎮痛剤や湿布、硬膜外ブロック注射などがあります。
あくまでも痛みの一時的緩和が目的であり、これ自体が髄核の突出を減少させるわけではありません。

前回述べた物理療法(温熱・腰椎牽引・電気刺激など)も同様です。

◆手術療法:
内視鏡などを用いて、飛び出た髄核を除去する方法がよく行なわれます。

f:id:sunao-hiroba:20190810110508p:plain排尿・排便に障害がある場合は、命に関わるため直ちに行なう必要があります。
脚に強い麻痺(つま先が上がらなくなる等)が出ている場合も、膀胱・直腸障害ほど緊急ではないにせよ、早めに手術を適応した方が良いとされます。
対処が遅れると、後遺症が残る可能性があるからです。

一方、痛み・シビレについては、手術の絶対的適応にはなりません。

2)予防・改善策

◆生活指導・運動療法
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腰に負担の掛かりにくい姿勢や動作の指導、ウォーキング、ストレッチ・筋トレ等、非特異的腰痛(慢性腰痛)とほぼ同様の内容になります。

これについては、今後の記事で詳述する予定です。

3)対処法のポイント(私見を一部含む)

先述のように、痛み・シビレ自体が手術の適応になるわけではありません。
それが日常生活にどれほど影響を及ぼしているかによります。

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「この激しい痛みをすぐにでも和らげたい…」という患者さんは、手術を選択するのもひとつでしょう。

ただ言えることは、飛び出た髄核は時間が経てば(数ヶ月~1年ほど)自然に吸収されてしまいます。
髄核の成分はほとんどが水であり、それを取り囲む組織はコラーゲン線維(タンパク質)でできています。
本来あるべき位置から飛び出てしまい不要になった組織は、自分自身の体が「食べてくれる」のです。

手術をすれば劇的に痛みが改善することもありますが、私の経験上、多くの患者さんは痛みやシビレが完全に消失することはありません。

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実際に痛みで苦しんでいる人には申し訳ありませんが、我慢して動ける程度の痛みであれば、服薬等でコントロールしながら様子を見るのも選択肢のひとつかな…とは思います。

気休めかも知れませんが、「我慢できないくらいの激しい痛み」は、たいていの場合そんなに長くは続かないものです。

そして根本的には、やはり日常動作の工夫と運動療法が重要ではないでしょうか。

 

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2.腰部脊柱管狭窄症

椎間板ヘルニアが若年者に多いのに対し、脊柱管狭窄症は中高年以上の方々にみられる疾患です。

加齢や、腰椎への負担が長年にわたって蓄積することにより、背骨や椎間板、また背骨の後方にある靱帯は徐々に変形します。
それら変形した組織が、脊柱管や周囲の血管を圧迫し、脚の痛みやシビレが生じます。

圧迫部位によっては、膀胱・直腸障害や性機能障害が起こることもあります。

また、『腰椎すべり症』のように背骨の上下がズレる疾患でも結果として脊柱管の狭窄が起こり、同様の症状を呈することがあります。

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※画像引用元:介護用品・福祉用具のレンタルと販売 ダスキンヘルスレント


症状としては腰椎椎間板ヘルニアに少し似ていますが、

◆進行すると両脚に痛み・シビレが起こることもある。

◆腰を反らすと脊柱管が狭まり、症状が増悪する。前屈すると改善する。

◆一定時間歩いていると痛みが増悪し、座って休むと軽減する(間欠性跛行:かんけつせいはこう)。

上記のような特徴がみられます。

やはり経過が長くなると、慢性腰痛も混在した症状(腰の筋肉のだるさなど)に悩まされることとなります。

※脊柱管狭窄症が慢性腰痛の原因になるのか、慢性腰痛が脊柱管狭窄症へと発展するのかは「鶏が先か、卵が先か」のような問題ですが、結局どちらとも言えるでしょう。

1)治療法

◆痛みへの対症療法:
概ね椎間板ヘルニアと同様です。

◆手術療法:
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内視鏡等を用いて、脊柱管を圧迫している背骨や椎間板などを削り、除圧する方法があります。

背骨のズレが大きい場合などは金属の棒やスクリュー(ねじ)で固定することもあります。

手術の適応についても、椎間板ヘルニアと同様です。

2)予防・改善策

◆生活指導・運動療法
慢性期では、やはり姿勢・動作の指導、ウォーキング、ストレッチなどの運動療法が有効です。

3)対処法のポイント(私見を一部含む)

椎間板ヘルニアもそうですが、脊柱管狭窄症においては画像所見(レントゲン・MRIなど)と実際の症状とが一致しないケースも意外と多いものです。

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高齢者の脊柱を撮影すると、多くは背骨が変形し、いかにも神経が圧迫されているように思われるのですが、それらの人が全て狭窄症の症状を呈するわけではありません。

逆に、画像所見ではさほど狭窄されていないように見えても、強い痛みが生じているケースもあります。

ですので、単純に「変形・狭窄が強い=手術適応」というわけではないことを知っておく必要があります。


金属パーツで腰椎を固定する方法も、最近では侵襲(メスで体を傷つける)の比較的少ない内視鏡で行なわれるようにはなってきています。
しかしそうは言っても、身体への負担はそれなりに有りますし、デメリットもまた多いものです。

そして、やはり手術によって痛みやシビレがスッキリと無くなるケースを私はほとんど見たことがありません。

なので、やたらと手術を勧める整形外科医は「怪しい」と言ってよいでしょう。

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いまどきそんな医者がいるのかと思われるかも知れませんが、私が過去に勤めていた病院には実際に居ました。

たいして症状が強くなくても「このまま放っておくと、どんどん悪化するかも知れないよ」と脅かして、何も知らない高齢者を手術へと誘導するのです。

この医師は、地元の医師会の間でも「要注意人物」とみなされていたようです。

膀胱・直腸障害のような絶対的適応でないにも関わらず「手術しましょう」となった場合は、セカンドオピニオンも検討すべきでしょう。

 


手術適応でないのであれば、痛みをコントロールしながら日常動作を工夫したり、運動療法で対処するのが妥当です。

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ここでひとつ注意すべきは、「腰を反らすと痛みが悪化する」という脊柱管狭窄症特有の徴候です。

これに対し、単純に「腰を曲げる体操」や、シルバーカーなどを支えて少し前屈気味に歩くよう指導する医師やPTが圧倒的に多いようです。

しかし、実際にはそれほど単純ではなく、「前屈すると増悪する」といったケースも意外と多いものです。

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後ろへ反らすのが痛いからといって常時うつむいたまま動作を繰り返すと、力学的には腰部にますます負担が掛かることも確かなのです。

詳細は今後の記事で述べますが、後ろへ反らすと増悪するのか、それとも曲げるとダメなのかは、それぞれの患者さんに対し継続的にしっかりと評価してから判断すべきです。

単純な「当てはめ」は、ここでは禁物です。


「間欠性跛行」についても、痛みが強くなるからと言って歩くこと自体を控えてしまうと、状況をさらに悪化させる恐れがあります。

5分以上歩くと痛みが限界…というのであれば、「5分歩いて一旦休憩」をこまぎれにでも繰り返し、徐々に歩行時間を増やしていきたいところです。

もっともマズいのは、日々の活動性が低下し、基礎体力が落ちてしまうことですから…。

 


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今回はここまでとさせて頂きます。

次回は、脊椎圧迫骨折およびその他の疾患、そして非特異的腰痛(慢性腰痛)についての内容を予定しています。

今しばらくお待ち下さい… m(_ _)m

 

 

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