すなおのひろば

中高年の健康と若手PTの未来をサポートするブログ

慢性疾患の患者さんは、病院を『学習塾』のように活用しましょう♪

f:id:sunao-hiroba:20191120113851p:plain重大な病気の早期発見やその治療のためには、できるだけ早く病院へ行くことが大切です。

しかし、命に直接関わることのない「肩(首)コリ・腰痛・五十肩」などで病院(診療所)に通院し、頸椎や腰椎の牽引・ホットパック・電気刺激などの物理療法を長年にわたって受け続けている中高年の方々をよく見かけます。

このような事は、本当に必要なのでしょうか?

 

《スポンサーリンク》
 

 

 

 

1.「鑑別診断」のための病院受診は必要な場合も

f:id:sunao-hiroba:20190927174644p:plain

誤解の無いように最初に申し上げておきたいのは、これら慢性の整形外科疾患で通院することを「百害あって一利無し」とまでは言いません。
また、整形外科系の病院・診療所の営業妨害をするつもりもありません。


実際、肩や腰の痛みの裏には、怖い疾患が隠れていることもあるものです。

◆肩痛
⇒心疾患・肺がん・胃腸障害

◆腰痛
⇒腎疾患・腹部大動脈瘤・骨腫瘍

などが代表的です。

 

また、更年期障害によってこれらの痛みが発現・増悪することもよくあります。

 

f:id:sunao-hiroba:20181006145322p:plain

特に、明らかな誘因(例えば、重い荷物を持ち上げた後の腰痛など)が無いにもかかわらず、唐突に症状が発生した場合は要注意です。

こういう時には素人判断せず、病院でしっかりと診てもらい、医師の診断を受ける事は必要だと考えます。

 

2.物理療法の多くは「その場しのぎ」の対症療法

f:id:sunao-hiroba:20181103144803p:plainしかし、単なる(と言うと、それで悩んでいる人には大変申し訳ありませんが…)慢性腰痛症で診療所などに通院し、物理療法を何年も受け続けるなど、ハッキリ言って無意味です。

が、そういう処置を延々と提供している病院・診療所が多いことに、今さらながら驚かされます(いわゆる「整骨院」にも同様の傾向がみられます)。

医療保険では「PT・OTによる個別リハビリ」については算定期限が決まっており、整形外科疾患の場合、「受傷(発症)・診断日から150日以内」となっています。
しかし、物理療法のみ提供する場合は特に期限は設けられていないのが実情です。



もちろん物理療法の中にも、明確な治療目的で適応されるものは存在します。

例えば、

◆寒冷療法(アイシング)
⇒急性炎症の軽減(ケガをした直後や、野球の投球後など)。

f:id:sunao-hiroba:20191120122012p:plain◆超音波療法
⇒関節可動域の改善。
⇒骨折後や骨粗鬆症に対する骨形成促進。

上記のようなものが代表的と言えるでしょう。


一方、その他の物理療法(温熱・電気刺激・牽引)の多くは「その場しのぎの対症療法」でしかありません。

諸外国における医療の考え方が絶対的に正しいとは言えませんが、リハビリテーション先進国である欧米・豪州では、

「慢性の整形外科疾患に対する物理療法の継続使用は、患者の精神依存性を増すだけであり、症状の根本的改善にはなり得ない」

という考え方がエビデンスとして確立されています。

私のPTとしての臨床経験や、肩・腰痛で苦しむいち個人としての経験からも、これは概ね正しく、定説であると考えられます。

※慢性痛も時には我慢できないほどの痛みを伴うことがあるので、その場しのぎの物理療法や鎮痛薬の使用が全く不必要というわけではありません。念のため付け加えておきますm(_ _)m



f:id:sunao-hiroba:20191120115541p:plain

私がPTになった20年以上前から、多くの病院・診療所における朝一番のリハビリテーション科待合室や物理療法スペースは、高齢者の「憩いの場」と化していました。

そういう方々にとって、朝の日課(?)としての病院通いは、コミュニケーション・情報共有の場でもあるのでしょう。

それを全否定したくはないのですが、「そんなことのために医療保険を使うのが本当に適切なのか?」という疑念はつきまといます。

 

3.慢性の整形疾患には「セルフコントロール」が鍵

肩や首まわりのコリに悩まされている中高年は多いですが、そういう患者さんのレントゲンを撮ると、たいてい頸椎(首の骨)が一部変形し、左右非対称になっていたりします。

f:id:sunao-hiroba:20190515114146p:plain

その画像を提示して、

「頸椎症ですね。これが痛みの原因です」

「しばらく通院して、牽引・ホットパック・干渉波(電気刺激の一種)を行ないましょう」

などと誘導するのが、整形外科の診療所におけるお決まりのパターンです。

もちろん、牽引やホットパックが痛みに対してどのように作用し、どれくらいの期間で改善するか、などといったインフォームドコンセントは皆無です。

それも当然のことでしょう。頸椎症という不可逆的な状態(すなわち、元の状態には戻らない)に対して物理療法が有効に作用するはずもないので、説明のしようもありません。

 

まぁ実際、頸椎の変形が痛みの主たる原因になっていることもあるので、「誤診」とまでは言いません。

f:id:sunao-hiroba:20191120125628p:plain

しかし、中高年(特に閉経後の女性)にもなると、頸椎や腰椎の変形は程度の差こそあれ、ほぼ全ての人に起こっているものです。

全ての人に共通する「加齢に伴う変化」を、全ての人にあてはまるわけではない「肩コリ・首コリ」に結びつけること自体、無理があると私は考えます。

そもそも、慢性の頸肩腕(けいけんわん)症候群や腰痛症の場合、画像所見と症状は必ずしも一致しないものなのです。

 


肩・首の筋肉のコリは、時には胸や腕にまで症状が拡がり、時にシビレを伴うこともあります。

このような神経症状が出現するようになると、さすがに怖くもなりますね…。

f:id:sunao-hiroba:20191120125946p:plain

が、結局のところ、日常における不良姿勢(首を前に突き出した姿勢で作業することによるストレートネックなど)や、運動不足が根本原因であることがほとんどです。


最終的には、これら慢性的な整形外科疾患には姿勢・運動・栄養などを含めたセルフコントロールが鍵なのであり、「他力本願」的なものは根本的治療にはなり得ないのです。

※もちろん、継続的な薬物療法が必要な慢性疾患(関節リウマチなど)は例外です。


別の言い方をするなら、セルフコントロールの方法を繰り返し伝え、

当病院(診療所)から早く卒業できるよう、一緒に頑張りましょうね


というように、目標に向かって患者さんを導いてくれるようなスタンスの医療機関(医療従事者)であれば充分信頼でき、通院に値すると言えるでしょう。

逆に、延々と通院、物理療法を勧めるのであれば、それは「金儲け第一主義」と疑ってみてもよいのではないでしょうか。

 

4.過度に依存せず、『学習塾』のように活用したい

f:id:sunao-hiroba:20191120133126p:plain

子供が学習塾に通うメリットとは…

◆適切な教材を提供してもらえる。

◆ライバルとの切磋琢磨がある。

◆受験情報が得られ、事前の対策ができる。

◆個別指導をしてもらえる(苦手分野の分析や具体策の呈示)。


主に上記のようなことがあるでしょう。

 

自分で勉強する習慣が身についているとか、保護者が適切に方向性を導いてくれるような子供には、必ずしも塾は必要ではありません。

f:id:sunao-hiroba:20191120134138p:plain

しかし、さらにレベルの高いことを学びたいとか、難関中学・高校を受験したい、そのために自身の強み・弱みを分析し、より良い勉強方法を習得したいという場合には、塾に通う必要が出てくるのでしょう。

それに、孤独と闘って自習するのはなかなか難しいことであり、現実としては他者からの一定の強制力も必要という側面もあります。


これらは、医療機関におけるリハビリテーションのあり方と共通する点が多いことにお気づきの方もいらっしゃることと思います。


先述のように、慢性の整形外科疾患である(=命に関わる重大な病気ではない)ことが医師の診断で明らかとなれば、あとはセルフコントロールが主体になります。

現在ではインターネットに医療情報がゴロゴロころがっています。

正しい情報を自分で取捨選択し、孤独でも学ぶ努力ができる人なら、あえて医療機関に頼る必要はないと私は考えます。

f:id:sunao-hiroba:20190329230747p:plain

ただ、本当に良質な医師やPT・OTであれば、専門職として細かく診断・評価し、貴方の現状に即した姿勢の取り方や自主トレ方法を提供してくれることでしょう。

そのように、セルフコントロール方法を適切に導いてくれる病院・診療所なら、期間限定で通院してみるのも良いかと思います。

 

《スポンサーリンク》
 

 

 

5.さいごに…「自立支援型」のアプローチを!

慢性の整形外科疾患の患者さんにとって、医療機関は『学習塾』のように活用するのが得策です。

f:id:sunao-hiroba:20181104160253p:plain慢性疾患という意味では、内科系の生活習慣病についても同様でしょう。

継続的な薬物療法のために定期通院が必要な方などは仕方ありませんが、それでも医療に依存し過ぎること無く、自分の身体は自身でメンテナンスするというスタンスで生活して頂きたいです。

そして医療従事者側も、卒業できる可能性のある患者さんにはいつか病院を卒業して頂けるような「自立支援型」のアプローチをしてもらいたいものです。


最後までご覧下さいましてありがとうございました m(_ _)m

 

 

www.sunao-hiroba.com

 

《スポンサーリンク》