すなおのひろば

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【歩行補助具の基礎知識:その1】杖の種類と適応について

f:id:sunao-hiroba:20190614225037p:plainこのシリーズでは福祉用具のジャンルのひとつ、歩行補助具(杖・歩行器など)について述べていきます。

まず最初に、杖の種類と適応についてのお話しから始めます。
主に一般向けの内容となりますが、PT・OT・Nsなど医療従事者をめざす学生の方々にも参考になれば幸いです。

※ここでは視覚障害者用の杖についての説明は割愛させて頂きます。ご容赦下さいませ。

 

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1.杖の使用目的

特に中高年~高齢者の方々の中には、そろそろ杖に頼らないといけないのかな…と考えている人もいらっしゃることと思います。

そもそも、杖を使う目的とは何でしょうか?

まずは、杖の原理原則について物理学的な視点から確認してみましょう。

1)支持基底面の拡大→バランスの補助

例えば鹿などの動物が急な崖を上り下りできるのは、4本の脚で身体を支えているからです。

地震の際にテーブルの下にもぐり込むのも、脚が4本で安定しており倒れにくいということが理由のひとつでしょう。

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支えている脚で囲まれた面のことを『支持基底面(しじきていめん)』と呼びます。PT・OTの方々にはおなじみの専門用語ですね。

この面積が広ければ広いほど、物体の安定性は良くなります。

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すなわち杖をつくことによって、この『支持基底面』を拡げ、立ったり歩いたりする際のバランスを補助することができるわけです。

2)荷重の分散→痛みの軽減・筋力低下の補助・免荷

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前記の支持基底面とも関連していますが、荷重を杖側へ分散させることにより、脚の痛みを和らげたり、弱くなった脚の筋力をカバーすることができます。

骨折の直後など、体重負荷そのものを禁止する際には松葉杖がよく用いられます。

このように、ケガをした脚に荷重が掛からないようにすることを『免荷(めんか)』と言います。

 

2.杖の種類と特徴

脚の不自由な人に適用される杖は、主に以下の4種類です。

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この図における「バランスの良否」は、支持基底面の広さと体重負荷のしやすさ双方を考慮して序列をつけています。

※ただし松葉杖については歩行パターンが多様であり、それに応じて安定度は変化するので、一概に多脚杖よりバランスが良いとは限りません(詳細はまた今後の記事で述べたいと思います)。

1)T字杖

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Tステッキ、T-cane(ティーケイン)などと呼ぶこともあります。

杖の中では最も一般的で、あらゆる疾患に適応できますが、機能障害は軽めの人が対象です。

<長所>
①汎用性が高く、扱いやすい。
②安価である(ホームセンター等で、3,000円前後で購入可)。

<短所>
①荷重の分散(免荷)はほとんど出来ず、バランスの補助も必要最小限。
②掌(てのひら)・手首に負担が掛かりやすい。
③グリップのみで保持するため、誤って手を滑らせたりすると床に倒しやすい。

<適応疾患>
①変形性膝関節症・股関節症(軽度)
②人工膝関節・股関節手術後
脳卒中等による片麻痺(軽度)

2)ロフストランド杖

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前腕カフ(輪っか状のもの)が付いているため、グリップとカフの2点で支持できます。

※画像引用元:日進医療器株式会社


<長所>
①掌・手首に掛かる負担が少なく、T字杖よりも体重を支えやすい。
②前腕カフで保持されるため、誤って掌を滑らせても杖を床に倒してしまうことは少ない。

<短所>
①T字杖に比べるとやや重い。
②高価である(8,000~10,000円)。

<適応疾患>
①変形性膝関節症・股関節症(軽度~中等度)
②人工膝関節・股関節手術後(筋力の弱化した症例)
脳卒中等による片麻痺(軽度~中等度)

3)多脚杖

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杖先が4点に分かれているものが一般的です。

支持基底面が広く、安定しているのも大きな特徴です。

<長所>
①杖自体の支持基底面が広いため、バランスは良好。
②誤って掌を滑らせても床に倒すことは少ない。

<短所>
①T字杖に比べると重く、取り回しがしづらい。
②安定している反面、歩行スピードは遅くなりやすい。
③高価である(8,000~10,000円)。

<適応疾患>
①変形性膝関節症・股関節症(中等度)
脳卒中等による片麻痺(中等度)

4)松葉杖

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掌で体重を支えると同時に、ワキを締めて杖を安定させながら歩きます。

両手で支えると、片足を完全に浮かせることができます。

<長所>
①両側に支持することにより、大幅な荷重分散が可能。
②両側支持では支持基底面を広くとることができ、バランス良好。

<短所>
①歩行パターンによっては難易度が高く、熟練を要することも。
②完全免荷(片足を浮かせる)での歩行は、掌・手首・腕への負担が大きい。
③構成パーツが多く、ネジの緩み・劣化に留意が必要。
④2本1組で考慮するとやや高価である(10,000~15,000円)

<適応疾患>
①骨折・捻挫・腱断裂後の免荷、早期リハビリ
②変形性膝関節症・股関節症(中等度~重度)
③脊髄損傷・下肢末梢神経障害(軽度~中等度)


以下はあまり一般的ではありませんが、特定の障害で用いられることのある杖なのでご紹介します。

5)プラットフォーム杖

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前腕部で支持する杖です。手指・手首に痛みや変形のある方に用いられます。

※画像引用元:日進医療器株式会社


<長所>
①前腕で支えるため、掌・手指・手首への負担を軽減できる。
②前腕部をベルトで固定するため、誤って床に倒してしまうことは少ない。

<短所>
①重く、取り回しには慣れが必要。
②高価である(20,000~25,000円)。

<適応疾患>
①関節リウマチ等による手首や指の変形

 

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3.さいごに…適応判断・調節等について

杖の使用を検討するにあたり、ここでいくつかの留意点を述べておきます。

1)介護保険でレンタル可能な杖は?

介護保険には、『福祉用具貸与』という居宅サービス()があり、要介護(or 要支援)認定を受けている方は、杖のレンタルを利用することができます。

※在宅で生活されている方のみ対象となります。


レンタル可能な杖は以下の通りです。

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杖は、毎日頻繁に使う人であれば非常に消耗・劣化が激しいものです。
なので、自費で購入するよりもレンタルの方が長い目でみるとお得です(4点杖で、だいたい月額100~200円程度)。


残念ながらT字杖のみレンタルの対象品目ではありませんが、ホームセンター等で安価に買い求めることが出来るので、問題は無いでしょう。

2)適応判断・調節等は医療(介護)機関にご相談を

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杖は、間違った調節や使用方法により、転倒や痛みの悪化などのリスクが生じることも考えられます。

現在、何らかの疾患により病院にかかっていたり、すでに介護サービスを受けておられる方は、杖の適応等について必ず医療(介護)専門職にご相談下さい。


とは言え、まだ医療(介護)機関には頼る必要はないものの、最近ちょっと足腰が弱ってきたので杖を自分で試してみたい、という方々もいらっしゃることでしょう。

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そこで、次回以降の記事ではT字杖の選び方や長さ調節、使用方法等について解説していきます。

※T字杖以外の杖についても、調節方法や扱い方は共通点が多いので参考になると思います。

それでは今回はここまでとさせて頂きます。

最後までご覧下さいましてありがとうございましたm(_ _)m

 

 

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