すなおのひろば

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【臨床実習指導者講習会 参加報告:その3】PT学生における『診療参加型臨床実習』

f:id:sunao-hiroba:20200131210110p:plain伝達講習の3回目は、『診療参加型臨床実習』の概要とその課題について述べます。

これは医師の臨床実習においていち早く導入されてきた手法であり、いわゆる『クリニカルクラークシップ』と同義語と考えて頂いてよいかと思います。

前々回の記事(指定規則改正の趣旨)で述べた通り、PTの実習のあり方については昨今さまざまな指摘を受けてきました。

そこで医師・歯科医師等に倣い、我々PTも今後この実習手法を取り入れることが求められているというわけです。

※参考資料:以下のウェブページをご覧下さい。

www.japanpt.or.jp

 

www.mhlw.go.jp

 

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5.『診療参加型臨床実習』とは?

以下、医学生のための『医学教育モデル・コア・カリキュラム』を基に、診療参加型臨床実習の概要について記載します。

1)診療参加型臨床実習の趣旨

◆学生が診療チームに参加し、その一員として診療業務を分担しながら職業的な知識・思考法・技能・態度の基本的な部分を学ぶことを目的とする。

f:id:sunao-hiroba:20200131201412p:plain◆指導チームは学生の患者診療能力に関する情報をもとに、担当患者の診療業務を一部任せる。そして能力向上に応じてより高度な業務を任せることにより、必要な資質を段階的・継続的に学ぶことができる。

◆指導者側も、学生から発せられる新たな視点に基づく質問等により自己学習が促される。


診療参加型臨床実習の実施にあたっては、単なる知識・技能の習得や診療経験に留まらず、実際の患者さんを相手にした診療業務を通じて、医療現場に立った時に必要とされる思考・対応力等を養うことにあるという点に留意する必要があります。

また、学生が療法士としての基本的な資質を学ぶ相手は、広い意味では患者さん及び医師・看護職等の診療スタッフ全員(多職種間教育)であると言えます。

※参考資料:文部科学省医学教育モデル・コア・カリキュラム 平成 28 年度改訂版

2)診療参加型臨床実習の実際

「学生が診療チームの一員として業務に参加し学ぶ」というのが大きな柱になっているのですが、その過程では常に

「見学」→「協同参加(模倣)」→「監視(実施)」


という手順を踏みます。

 

イメージとしては、以下のようなものです。

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※画像引用元:医療福祉専門学校 緑生館



上の画像では「関節可動域運動」という理学療法技術の一例を示していますが、

◆患者さんとのコミュニケーション(人間関係の構築や問診等)

◆他職種との連携

◆診療録(カルテ等)の記載

などなど、手順に従って教育・指導を進めることは、全ての診療関連行為において共通です。

 

6.診療参加型臨床実習の課題

 

1)患者さんの同意

患者さんやそのご家族など、対象者から同意を得ることは「診療参加型」であろうと無かろうと不可欠なものですが、今後はより厳密にしていく必要があるかと思われます。

同意書の一例を提示しておきます。

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※引用元:厚労省第4回 理学療法士・作業療法士学校養成施設カリキュラム等改善検討会(資料2)

2)他職種の理解と協力

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これも従来からの「暗黙の約束事」ではあったのですが、学生を診療チームの一員として位置づけるという観点では、より深い理解と協力が求められます。

なので、実習指導者としては他職種に対し、「PT学生における診療参加型臨床実習のあり方」をきちんと説明できなくてはなりません。

3)実習指導者の業務負担

全てにおいて「見学→模倣→実施」という手順を踏むには、実習指導者自身がまず「模範的なPTとしての背中」を学生に見せなくてはならず、ある程度以上の教育スキルが必要になります。

もちろん、それ相応の労力と時間も掛かるものです。

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そして、実習生指導と「いち職員としてのノルマ(1日18単位など)」との両立も、管理職ないし病院経営者からは求められるのです。

これは、医療現場の指導者にとって切実な問題であると言えるでしょう。

 

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<今回のまとめ・次回予告>

「やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ」

連合艦隊司令長官山本五十六の有名な格言ですが、これを具現化したものが『診療参加型臨床実習』なのでしょう。

まさに良いことづくめのように思われるこの手法も、前述のようにいくつかの問題点をはらんでいます。


従来の「見学を中心とした実習」と比較すると、より実践的で望ましいとは言われていますが、指導者側にはそれなりのスキルが必要です。

実際、優れたPTは「診療参加型」などと言われなくても、昔からそういう指導をしていたものです。

 

一方、学生の側も一定以上の能力が求められます。

f:id:sunao-hiroba:20200124195820p:plainなぜなら、診療チームの中で(対等とまではいかなくとも)積極的に参加していくためには、チーム員と「共通言語」でのやりとりが成立しなくてはなりません。

それが著しく困難である場合、指導者は実践以前の「座学」から教え直す必要性が出てきますが、臨床の場でそんな悠長なことはしていられません。


医学部・歯学部・薬学部等ではその対策として、実習開始前に学内で以下の「共用試験」というものを義務づけています。


<共用試験>

◆知識
⇒CBT(Computer Based Testing):コンピューターを使った多肢選択筆記試験

◆技能・態度
⇒OSCE(Objective Structured Clinical Examination):客観的臨床能力試験



これらの試験に合格した者のみ、実習に送り出すというわけです。


現状、PTの学生にはこのような「実習前評価」は義務づけられていません。

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実技試験の代表格であるOSCE(オスキー)についてはすでに導入している養成校もありますが、養成校間で評価基準にバラつきがあるようです。

実際、学校教員からの情報で「OSCEでは高得点だった」という前評判の学生が、いざ臨床の場では今ひとつだったことも、私自身の指導者としての経験上数多くありました。


ともかく、この実習前共用試験による評価は、将来的には全国的に統一化の運びになるようです。

今後、養成施設は教育内容等に関して5年以内ごとに第三者評価を受け、その結果を公表する、とされていますし、それに合わせて指定規則・指導ガイドラインも5年サイクルで見直されるとのことなので、注視していきたいところです。

 


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診療参加型臨床実習を行なうに際してもうひとつ重要なことは、学生に実施させてもよい(法的に許容される)理学療法行為を明確化しておくことです。

次回の記事では、その範囲と水準について提示する予定です。

今しばらくお持ち下さい m(_ _)m

 

 

 

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