すなおのひろば

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【腰痛とともに生きる:その7】腰痛予防・改善を目的としたウォーキングについて

f:id:sunao-hiroba:20191011202636p:plainウォーキングは、一般的に生活習慣病や要介護状態・認知症などの予防策として推奨されることが多いですが、腰痛に対しても有効であることは既に定説となっています。
まさに「健康法の王様」ですね ♫

とは言え、具体的にどのような歩き方をすれば腰痛改善につながるのか、といった説明は充分になされていないようです。

そこで今回は、私自身のウォーキング体験やPTとしての臨床経験を踏まえた「腰痛予防・改善を目的としたウォーキング」のあり方についてまとめてみたいと思います。

 

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1.腰痛のためのウォーキング実施方法

「腰痛に対するウォーキング」はいかにも特殊であるかのような煽り方をしてしまいましたが、実は生活習慣病を予防する時のやり方と大きな違いはありません (^_^;)

さらに、ここからの記述は当ブログのカテゴリー『ウォーキング』の内容と重複する部分も多いです。


すでに目を通して下さっている方々には申し訳ありませんが、復習と思って頂けるとありがたいです。

何とぞご容赦下さいませ m(_ _)m

1)歩く時のフォームについて

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イラスト左側のような「理想のウォーキングフォーム」を推奨する人も多いですが、私は基本的に「フォームどうでもいい派」です。

特に歩く習慣が身についていない人は、どんな形であっても「まずは気軽に散歩してみる」ことから始めて頂ければ良いのかな…と思っています。


ただし腰痛対策という点では、通常の速度よりも心もち速めに歩く方がより効果的ではあります。

私自身、脊柱管狭窄症による腰~両脚の痛みに悩まされているのですが、ゆっくり歩くと余計痛みが強くなったりするので、意識してシャキシャキ歩くようにしています。

「スピードを速めると結果的に歩幅が広くなり、腕を振るフォームになった」


という感覚で歩けたら、ベストではないかと思います♫

さらに仮想の地平線に目線を向けるようにすれば、自然に背すじが伸びて、腰に負担が掛かりにくくなります。


少し速めに大股で歩くのが腰痛に良い理由は、おおよそ下記の通りです。

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◆腰~足先に連なる「皮膚・筋肉・関節包・靱帯・末梢神経」をしっかり伸び縮みさせる。
⇒血流・リンパ環流が改善し、局所に滞っている疼痛物質が浄化される。
⇒関節液(滑液)の産生・吸収を促し、関節痛を改善する。
⇒脳脊髄液の循環を促し、神経由来の痛みを改善する。

ウォーキングに関する論文でこれらを明確に証明しているものは見当たりませんが、私の経験からも概ね正しいと考えています。

 


基本的には「フォームどうでもいい派」の私ですが、上半身をかがめて歩くのは背中・腰に負担が掛かるので推奨できません。

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腰部脊柱管狭窄症の人は、上のイラストのように腰をかがめた方が痛みが楽になる場合があります。

この現象について、「腰椎前屈によって脊柱管が拡がり、内圧が下がるから」という説明がなされます。

理屈の上では確かにそうなのですが、だからと言って「脊柱管狭窄症の人は前屈気味に歩きましょう。そのために杖やシルバーカーを活用しましょう」と推奨するのはいかがなものかと思います。

そういう指導方法がいまだに定説のように扱われていてビックリするのですが、これは長期的にみると脊柱管狭窄症とそれによる痛みを助長し、さらには慢性腰痛へと移行させる恐れもあり、私としてはあまりおススメできません。

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※杖もシルバーカーも、正しく使えば歩行時の腰痛軽減に一定の効果はあります。使用する際はなるべく腰を伸ばして歩けるよう、グリップの高さを調節しましょう。

※画像引用元:島製作所

もちろん、どうしても「背筋を伸ばして歩くと痛くて耐えられない」という人は別ですが、原則「前かがみ姿勢は常に腰椎への力学的ストレスを増やす」と考えて下さい。

2)運動強度について

ウォーキングに慣れてきたら心もち速く歩いて頂けると良いのですが、身体的にはキツ過ぎる場合もありますね。

なので、最初は

「楽に感じる~ややきつい」

「ちょっと息が弾むが、となりの人と会話しながら歩ける」

くらいの感覚を基準にすると良いでしょう。

お手数ですが、詳細は過去記事をご覧下さい <(_ _)>

 

3)歩数設定について:「プラス1,000歩」がおススメ ♪

生活習慣病の予防を狙いとしたウォーキングでは「連続30分以上」などと設定することもあります。

しかし最近では、脂肪燃焼目的であれ腰痛予防目的であれ、1日トータルの運動時間を確保すれば良いという考え方に変わりつつあります。

「連続30分」でも「10分×1日3回=合計30分」でも、効果はそれほど違いが無いのです。これは私のPTとしての臨床経験とも一致します。

ウォーキングの場合、「総運動時間」よりも「1日トータルの歩数」で目標設定する方が分かりやすいでしょう。


最近はスマホやスマートウォッチで手軽に歩数を計測できますが、私のようなガラケーユーザーは歩数計を装着してみましょう (^_^;)

たびたび申し訳ありませんが、歩数計についての詳細は過去記事をご覧下さいませ。

 

ちなみに最新の調査による一般国民の平均歩数は、以下の通りです。

図1 歩数の平均値(20歳以上、性・年齢階級別)

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※図表引用元:平成29年 国民健康・栄養調査結果の概要

 

f:id:sunao-hiroba:20181113195332p:plainこれを見て「自分はかなり少ないんだなぁ…」と思っても、焦らないで下さいね。

貴方の1日の歩数が3,000歩なら、まずは4,000歩を当面の目標にしましょう。
無理せず、継続することが大切ですから。

 

最終的には1日8,000歩も歩けたら、腰痛対策としては充分でしょう。

よく指標にされる「1日10,000歩」というのは理想でしょうが、ちょっとマニアックな世界と考えてもらって良いかと思います。

4)頻度について:1日置きでも効果あり

できれば毎日コツコツ歩いて頂きたいところですが、1日置きでも腰痛予防・改善の効果はあります。

逆に、週2回未満ではほとんど効果は見込めません(これも実証済み)。

週3~4回のウォーキングを1ヶ月続けて頂ければ、必ず成果は挙がりますのでお試しあれ ♪

 

2.ウォーキング実施上の注意点

 

1)一般的な留意事項

腰痛以外にも疾患をお持ちの方は、体調管理が重要となります。

 


ま、早い話が「体調不良の時は無理せず休みましょう」ということです。

2)間欠性跛行を呈する方々へ

間欠性跛行(かんけつせいはこう)というのは脊柱管狭窄症にみられる症候で、一定時間歩いていると脚の痛みやシビレが悪化し、座って(前かがみになって)休むと楽になるというものです。

※閉塞性動脈硬化症(脚の血管障害)でも似たような徴候が出る場合があるので、自己判断せず受診して下さいね。


f:id:sunao-hiroba:20191012124212p:plain腰というよりも「臀部から足先へ放散する」痛みが脊柱管狭窄症の特徴であり、状態が悪い時ほど腰から遠い部位が痛くなる傾向があります(逆に、痛みが腰へ向かって収束していくようなら改善傾向であるとも言えます。これは椎間板ヘルニアでもほぼ同様です)。


ここで最も憂慮すべきことは、痛みが出るからといって「なるべく歩くのを控えておこう」と消極的になってしまい、結果として筋力や体力が低下してしまうことです。

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「痛み」は身体から発せられる警告であり、注意しなければならないのは確かです。

しかし、この『腰痛とともに生きる』シリーズで主に扱っている整形外科系の腰痛(脊柱管狭窄症・椎間板ヘルニア・非特異的腰痛など)に関しては、安静にし過ぎるのはむしろ害悪でしかありません。

前項で「体調不良の時は無理せず…」と述べたことに矛盾するようですが、痛みは様々な方法(鎮痛剤の使用等も含め)でコントロールしてでも、一定の動作能力は保っておく必要があります。

体力、すなわち疾患に対する抵抗力を維持しておかなければ、ますます「痛みに負ける」身体になってしまうこともあるものです。

ということで、間欠性跛行については「5分歩くと痛くて我慢できない」のであれば5分で一旦休憩し、痛みが和らげば再び歩く、ということを繰り返して下さい。

こま切れでも良いので、ちょっとずつでも歩ける時間を延ばし、1日トータルの歩数を稼ぐよう粘り強く取り組んで頂きたいところです。

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うまく行けば、痛みのコントロールが容易になり、日常生活の活動範囲も徐々に拡がっていくでしょう。

とても大変だとは思いますが…私も時には鎮痛剤に頼りつつ、そのようにして歩数を増やしてきたものです。


ただし、

◆排尿・排便障害

◆脚の筋肉の麻痺(つま先がダラリと垂れ下がってしまう「下垂足」など)


痛みとともにこのような症状が出現した場合は、もう「我慢して歩く」というレベルではありません。直ちに医療機関へ受診しましょう。

3)腰に負担を掛けない靴は?

ウォーキングシューズの選び方も過去記事でご紹介しましたね。


腰痛予防という観点では、特に以下のことに留意して選びましょう。

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◆足との適合性
⇒つま先・くるぶしには少し余裕がある。
⇒足の甲・土踏まず・かかとは適度にフィットしている。

◆腰への衝撃を緩和
⇒靴底のかかと部分に充分な厚さとクッション性を確保している。

◆長時間歩いても疲労しにくい
⇒適度に軽い(片足200~300g程度)。

f:id:sunao-hiroba:20191011213229j:plain腰への負担軽減という意味では軽い方が良いのですが、ランニングシューズほど軽さにこだわる必要は無いと思います。

極端に軽いものは耐久性が犠牲になっていたり、高価だったりします。

逆に「ダイエットシューズ」などと称してやたら重くしているものもありますが、腰痛には大敵です。

 

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3.さいごに

腰痛セルフコントロールのための運動療法として、腰痛体操(ストレッチ・筋トレなど)を1番手として挙げる医療専門職の方も多くいらっしゃいますが、長期的にみればウォーキングの方に軍配が上がると私は考えています。

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他の関節(股・膝関節など)にも痛みがある人はなかなか大変かも知れませんが、歩ける能力がある人はなるべく歩いて腰痛をコントロールしたいところですね。

 

と言いつつ、次回は「腰痛体操」についての内容を予定しています (^^ゞ

最後までご覧下さいましてありがとうございました。

 

 

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