おてがる筋トレシリーズ第5回は、膝伸ばし運動です。
とくに女性の方に多い『変形性膝関節症』。
歩行や階段の上り下りに生じる強い痛み…とってもつらいですよね。
今回は、そのような膝の痛みに悩まされている中高年~高齢者向けの運動になります。
痛みの強い人にも比較的安全に行って頂けるかと思いますので、お試し下さい。
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1.トレーニング用品のご紹介
このブログでは、基本的に「特殊なトレーニング用品」を使わなくても実行できる方法を提示したいと考えていますが、今回はちょっと例外です。
まずは、足首に装着する重り(アンクルウェイト)をご用意下さい。
最近では1,000~2,000円くらいの値段で、かなり品質の良いウェイトが購入できるようになりました。
ネットで商品を購入される人も多いとは思いますが、ホームセンターの健康器具コーナーとかスポーツ用品店などでお手軽に買い求められますので、できれば実際に品物の見本を装着してから選んで頂けると幸いです。
人によっては、巻きつけるベルトがキツく感じたり、骨の出っ張りに当たって痛くなる場合もありますので…。
そういうわけで、当ブログでは特定の製品を読者様にお薦めするのは避けたいのですが…参考までに、私が長年愛用しているものはコレ(NIKE アンクルウェイト)です。
もう10年以上使っているので、すり切れてツギハギだらけです。
重量は1.13kgと、なぜか中途半端…。
お値段は少し高めで、2,700円くらいだったと記憶していますが…足首に巻きつけた時の感触が良いのでコレを選びました。
他にも重さ調節ができる便利な製品もあるようですが、今回ご紹介する筋トレでは片側1.0~2.0kg程度のもので充分です。
2.『膝伸ばし』…実施方法
それでは、「運動処方の4要素」に沿ってご説明します。
1)運動の種類(方法)
やり方は簡単!
車輪の付いていない、しっかりしたイスに深く腰掛けて下さい。
①右膝を伸ばす
⇒ゆっくり上げ、膝を最後までしっかり伸ばしましょう。
⇒伸ばしたところで、足首・つま先も反らすようにすると効果UP!
⇒伸ばしたところで2~3秒止めてから、ゆっくり下ろしましょう。
②左膝を伸ばす
⇒右足を完全に下ろしてから、左足を上げましょう。
これの繰り返しです。
2)運動の強度(負荷量)
今回の運動は「筋トレ」と称してはいますが、一番の目的は「膝の可動性改善→痛みの軽減」です。
なので、関節に負担をかけ過ぎないよう、負荷量は1.0~2.0kg(片足)とします。
杖などを使わずに歩ける人なら「ちょっと物足りないな…」と感じることと思いますが、目的を満たすためにはその程度で充分です。
逆に「1.0kgでもキツい」という人は、最初はウェイトを装着せずに行ってみましょう。
3)運動の回数
まずは、1セット10~20回くらいから始めてみましょう。
実施した翌日に関節痛や筋肉痛がなければ、30回くらいまで増やしましょう。
※「右→左」で1回のカウントです。
筋力UP・関節の可動性改善(→痛みの軽減)ともに、明らかに効果が出るまでには4週間程度はかかります。
1ヶ月経過したところで改善の程度を確認し、可能なら実施回数を上方修正しましょう。
4)運動の頻度
◆1日あたり:2~3セット(朝・昼・夕)
⇒厳密に決める必要はありませんが、できれば2セットは行いましょう。
◆1週あたり:3~4日(1日おき)
⇒高齢の方は関節痛・筋肉痛も考慮して、1日おきに行うと安全です。
⇒慣れてきたら、毎日行うとより効果的です。
3.運動の効果
主に作用している筋肉は、太ももの前面(大腿四頭筋)です。
そして、大腿骨・脛骨・膝蓋骨(膝のお皿)の三つが互いに関節を構成し、膝の屈伸運動を起こします。
効果・効能は以下の通りです。
1)筋力UP→膝関節の安定性向上
人体の関節は、
◆筋肉(関節運動の動力源)
◆靱帯(関節をつなぐバンド)
◆関節包(関節を包み込む袋…中は滑液で満たされる)
◆軟骨(関節の動きを滑らかにする)
◆半月板(クッション性・安定性を確保する)
これらによって安定性を高めています。
とくに大腿四頭筋は、膝の安定化にとって最も重要な役割をもつ筋肉です。
これを鍛えることにより、歩行・階段昇降などの動作能力が向上します。
※ただし、今回の筋トレによる大腿四頭筋の筋力増強効果は、通常それほど高くはありません(虚弱高齢者ではそれなりに効果はあると言えるでしょう)。
2)滑液の循環促進→膝の可動性改善・痛みの軽減
関節包の内部は、「滑液(関節液)」という粘りけのある液体で満たされています。
滑液は、関節包の裏地(滑膜)で産生・分泌されます。
その役割は、
◆関節の動きを滑らかにする(エンジン・ミッションオイルのようなもの)
◆軟骨に栄養を供給する
という極めて重要なものです。
膝が痛むから…といってあまり動かさないでいると、滑液の産生・吸収が滞り、粘りけが強くなって、ますます関節の動きが硬くなります。
自動車の場合でも、真冬のエンジン始動時はミッションの入りが硬くなりますが、それと同じです。
軟骨への栄養供給も乏しくなることで、さらに膝関節の変形を助長してしまいます。
以前ご紹介した「立ち上がり・座り込み」も、大腿四頭筋の筋力UP・膝関節の可動性改善という意味では同様の効果があります。
しかしながら自身の体重を負荷として利用する運動なので、筋力UPの効果が高い反面、膝の痛みが強い人にとっては負担が強すぎます。
その点、イスに座っての膝伸ばし運動は、膝への負担を最小限にしながら筋肉を収縮・弛緩させて血流を促し、同時に関節運動を繰り返して滑液の循環も改善させる、最も安全な方法と言えます。
なので、膝を痛めている人は今回ご紹介した「膝伸ばし運動」を先行して実施し、可動性・痛みが改善したところで「立ち座り運動」へ移行して頂けたら理想的ではないでしょうか。
ぜひお試し下さいませ ♪
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4.実施上の注意点
1)深く腰掛け、上半身を安定させる
浅く座ると、腰に負担がかかり腰痛を起こすおそれがあります。
しっかりと深く座り、骨盤を立て、背もたれに背中をつけておきましょう。
※写真のイスには付いていませんが、できれば肘掛け付きのイスが望ましいです。
2)内ももにしっかり力を入れる
大腿四頭筋の内側部分には、膝を伸ばし切る際に重要な役割を果たす『内側広筋(ないそくこうきん)』があります。
膝をまっすぐ伸ばした時にこの部分に力が入っていることを手で触って確認し、意識を集中させましょう。
この時、足首とつま先をそり返らせるとさらに力が入りやすくなり、効果的です。
3)太ももを持ち上げず、膝だけをしっかり伸ばす
膝を伸ばす際、足全体を持ち上げないよう注意しましょう。
腰椎や股関節に過度の負担がかかり、痛みの原因となってしまいます。
太ももの裏側は座面にピッタリ着けたまま、膝だけを伸ばすようにしましょう。
4)ウェイトをつけたまま歩かない
うっかり足首にウェイトをつけたまま歩いてしまわないように注意しましょう!
こういう使い方が無いわけではありませんが、今回の運動とは使用目的が違います。
若く元気な人は大丈夫でしょうが…筋力が弱い方は転倒の危険がありますので、必ず外してから歩くようにしましょう。
5)疾患をお持ちの方は
◆筋肉痛・腰痛・関節痛
◆動悸・息切れ・めまい・冷や汗 など
運動後にこれらの症状が悪化するようなら、負荷が強すぎるか、適応外の可能性があります。
今回のようなウェイトを使用した運動は、日常生活で用いる動きとは大きく異なるため、やり方を間違えると血圧の急激な上昇をまねくこともあります。
実施する際は、
①息を止めてリキむのは避けましょう。
②勢い・反動をつけて行わないようにしましょう。
何らかの疾患を有しており現在医療機関にかかっている方は、当該筋トレの適応(やってよいかどうか)について、事前に主治医にご相談下さいませ。
5.まとめ
◆種類:膝伸ばし
◆強度:1.0~2.0kg(片足)
◆回数:10~20回(翌日の状態に問題がなければ30回へ)
◆頻度:
⇒1日あたり2~3セット(朝・昼・夕)
⇒1週あたり3~4回(毎日できれば効果的)
◆運動の効果:
⇒筋力UP→膝関節の安定性向上。
⇒滑液の循環促進→膝の可動性改善・痛みの軽減。
◆注意点:
⇒深く腰掛け、上半身を安定させる。
⇒内ももにしっかり力を入れる。
⇒太ももを持ち上げず、膝だけをしっかり伸ばす。
⇒ウェイトをつけたまま歩かない。
⇒息を止めたり、勢い・反動をつけるのは避ける。
⇒関節痛・疾患をお持ちの方は医師に相談を。
いかがでしたか?
膝が痛い人にとって、体重をかけて歩いたり、階段昇降(とくに下り)をするのは大変つらいことと思います。
私はPTとして、今回ご紹介した筋トレを担当の患者さんに3ヶ月以上続けて頂き、動作時の痛みが著明に改善した例を多数みてきました。
ですので、すぐに効果が出ないからといってあきらめず、根気よく行って頂ければ有り難いです。
皆さまの痛みが楽になり、幸せな人生が送れることを切に願います。
最後までご覧下さいましてありがとうございました 🎵
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