30代の終わり頃、ウォーキングと栄養管理に目覚めて肥満を解消し、体力を取り戻した私は「若返った」と錯覚しそうになりました。
20~30代に発症した腰や肩の痛みについても、腰痛体操や腕立て伏せ、また動作方法の工夫など、PTとしての知恵を活かした対策である程度コントロールできるようにはなりました。
ところが40歳を過ぎると、いよいよ老化現象を実感せざるを得なくなります。
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1.老化の徴候が次々と…
30代の終わり頃から、徐々に顔などの皮膚の色ツヤがくすみ始めたような気がしました。
スキンケアに余念のない女性であれば、もっと早い段階で敏感に皮膚の老化を感じ取れるのだろうと思いますが、男性は通常、「まじまじと」自分の顔を鏡に映してチェックすることなどありません(他の人はどうか分かりませんが…)。
私はどちらかと言うと「脂性肌」で、若い頃は皮膚の乾燥とは全く無縁でしたが、40歳を超えると明らかに顔や手のしわ・しみが増え、冬場は乾燥して皮膚のかゆみを感じるようにもなり、保湿クリームが欠かせなくなりました。
それに元々硬かった身体は40歳を境にますます硬くなり、横断歩道を渡る際など急に駆け出すと、「ピキッ」と膝に痛みが走ることがあります。
薄毛・白髪も、実は20代前半から少しずつ進行してはいたのですが、ここへ来てさらに顕著になってきました。
45歳くらいになると、手元で細かい作業をするのが難しくなりました。老眼のはじまりです。
それと同時期に、便秘・残尿感など、それまでに経験したことのない症状も現れるようになりました(さすがに不安になりましたが、幸い今のところ大腸や前立腺の悪性腫瘍などの深刻な状態ではないようです)。
これらは、一時的な運動不足による体力低下だけでは説明できない、「老化」を決定づける変化でした。
古今東西、人類にとって「不老不死」は見果てぬ夢だったことでしょう。
それにしても、なぜ老化は避けられないのでしょうか?
2.人体を構成する元素…その起源
人体を構成する材料は、おもにO(酸素)・C(炭素)・H(水素)・N(窒素)・Ca(カルシウム)・P(リン)といった元素で成り立っています。
ちなみにFe(鉄)などは血液内で酸素を運搬するために不可欠なものですが、人体では「微量元素」のひとつです。
ビッグバンによって宇宙が誕生してまもなく、水素やヘリウムといった軽い元素が生まれました。
それらは互いに集まり、やがて恒星が誕生します。
恒星の中心部では核融合反応が起こり水素をヘリウムに変換します。そして寿命が近づくとともに、さらに重い元素が生成されていきますが、そこで作られる元素はFe(鉄)までとされています。
鉄よりも重く、人体においては「超微量元素」として含まれているNi(ニッケル)やAs(ヒ素)などの元素は、太陽よりもはるかに大きい恒星の終焉である「超新星爆発」などによって作られるといわれています。
私たちの身体を形作っている物質の元は宇宙とともに誕生し、恒星の営みと破壊によってもたらされたものと言えます。
3.エントロピー増大の法則
熱力学第二法則(エントロピー増大の法則)は、私たちがいま存在する宇宙において例外のない物理原則です。
私は物理学にはそれほど詳しくないので、専門家の方々からはさまざまな異論もあるでしょうが…ごく大雑把に説明すると、エントロピーとは「乱雑さ」とか「無秩序さ」の度合いです。
カップに熱いコーヒーを入れてしばらく放置しておくと、やがて冷めてしまいます。
再び火にかけるとか、電子レンジでマイクロ波を照射するなどしない限り、冷めたコーヒーが勝手に熱くなることはありません。
貴方の机の上にある整理された本とか筆記用具などは、時間が経つとだんだんホコリを被り、散らかってしまいます。
誰かが再び整頓したり掃除機をかけたりしない限り、いつの間にか綺麗になることは絶対にあり得ません。
パソコンは年数が経つとだんだん動作が遅くなってきます。それはおもにハードディスクの劣化によるものです。
すなわち、「エントロピー増大の法則」とは
「すべての物事は秩序ある状態から無秩序な状態に変化していき、外部からエネルギーを加えない限り、その逆の反応は起こらない」
ということだろうと思います。
このような物理原則は、当然ながら宇宙の営みによって誕生した私たち人類にも当てはまることです。
放置されたコーヒーと違い、私たちは常に36.5℃前後の体温を保つことができます。
そして勉強したり仕事をしたり、子どもを産み育てるといった創造的活動も可能です。
一見すると、生物だけが例外的にエントロピーを減少させられるようにもみえます。
ところが、それは私たちが食するほうれん草やにんじん、牛・豚・にわとりなど、他の生物のエントロピー増大(すなわち「死」)によって得られるエネルギーを利用して、一時的に恒常性を保っているに過ぎません。
「食事」という外部からのエネルギー注入が無ければ、あっという間にエントロピーは増大し、その活動を停止してしまいます。
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4.アンチエイジングの考え方
最近よく言われるアンチエイジングとは、直訳すると「加齢(老化)に抗する」という意味になります。
アンチエイジングという言葉の揚げ足をとるわけではありませんが、宇宙の大原則である「エントロピー増大の法則」にあらがい逆らうことは、本質的には不可能です。
例えば、自動車のタイヤは走れば走るほど摩耗し、やがて使えなくなります。
では、走らなければ劣化しないのかというと、そうではありません。放置しておくとタイヤのゴムが外気と反応し、ひび割れて硬くなり、徐々に本来の性能を発揮できなくなくなっていきます。
ですから、スタッドレスタイヤなどはシーズンオフの時期にはタイヤカバーでしっかりと覆い、高温多湿にならない場所に保管するのが良いと言われています(それでも経年劣化は避けられませんが)。
さりとて、人間の場合は使用しない時期に保管しておくというわけにもいきません。
映画『2001年宇宙の旅』のように長期の宇宙旅行の際に冬眠させておくといったことも、現在の技術では不可能です。
どちらにせよ身体を構成する材料の劣化は避けられないようですから、実質的な「アンチエイジング」とは、身体をできるだけ良い状態に維持し、老化を極力遅らせるために程よく使っていくということなのでしょう。
5.生きるということは、他者を犠牲にすること
私たちの太陽は、核融合反応でエネルギーを使い果たすと、やがて燃え尽きてしまいます。
太陽よりも大きな恒星はさらに高温で活発に燃えますが、寿命もまた太陽より短いといわれています。
逆に太陽よりも小さい恒星は、惑星系を維持するほどの輝きを保てません。
人の場合、いざという時のためのエネルギーとして糖質や脂質を貯蔵していますが、これらは溜め過ぎていても不足していても、身体に悪影響を及ぼすようです。
例えば内臓脂肪が蓄積すると、生活習慣病につながるのは皆さん周知のとおりです。
そうかと言っていきなりランニングでも始めようものなら心肺系や骨・関節に過負荷を与えてしまいます。
一方で適度に体を使うことを怠ると、廃用症候群…いわゆる「安静の害(不使用による劣化)」を引き起こしてしまいます。
生きるということは、他者を犠牲にして一時的に「エントロピーの増大」に逆らうということですから、なかなか大変なことだと分かります。
まず私たちは、エネルギーを提供してくれる他の生き物に感謝しなくてはなりません。残飯を捨てるなど、もっての他ですね…。
自然と調和し過不足なく摂取すること、そして適度に使ってやることが、アンチエイジングの鍵なのだろうと私は思います。
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