前回まではウォーキングがもたらす三つの恩恵についてご説明しました。
ここで早速、ウォーキングの具体的な方法論に入りたいところですが…運動には素晴らしい効能がある一方、やり過ぎたり実施方法を間違えたりすると、かえって身体を壊してしまいかねません。
そうならないように、まずはメディカルチェック的な観点から、運動実施前の確認事項について述べておきたいと思います。
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1.現在治療中の疾患をお持ちの方は…
20歳代以下の若い人に関しては、1日8,000歩程度のウォーキングなら、通常の健康状態の方であれば特段のリスクは無いといってもいいでしょう。
30歳以降で少々肥満気味となると、そろそろ脂質異常症とか高血圧が気になる方もいるでしょうが、それでも一般的な自覚症状(頭痛・胸痛・倦怠感など)に注意しながら行えば、ほとんどの方は大丈夫だと思います。
私が不特定多数の方々にウォーキングをおススメする理由は、運動負荷が軽くて血圧の変動も比較的少ない、すなわち最も安全に行える有酸素運動だからです。
そういう意味では、それほど慎重になる必要は無いともいえます。
しかし、すでに生活習慣病やその他の疾患で定期的に「かかりつけ医」に診てもらっている方は、自分がいま運動を行っても良い状態なのかどうかを、主治医に必ず確認することにしましょう。
また、何かしら気になる自覚症状がある方などについては、まず受診し、医師に対してきちんと今の症状・状態を伝えて下さい。そして現状を把握してもらった上で、運動の可否について助言を受けることをおススメします。
主治医は、その患者さんの疾患が根本的に運動療法の適応になるのかどうか、あるいは現在の状態から考慮して、いま運動を行っても良い時期なのかどうか…これらを把握しているはずだからです。
2.最低限の確認事項として
たとえば狭心症をお持ちの方は、速歩き程度の運動負荷であっても心臓を動かす筋肉への血流が阻害され、強い胸の痛みを引き起こすことがあります。
これを「労作性狭心症」といいますが、そういう急性期の状態では運動は禁忌(きんき:やってはいけないということ)であり、ただちに投薬とか、場合によっては冠動脈バイパス手術などが必要になることもあります。
一方、狭心症でも薬や手術によってコントロールできている慢性期には、むしろウォーキングのような負荷の少ない運動を継続することが、狭心症の再発を予防するカギになります。
糖尿病なども同様です。
血糖コントロールが良くなく、空腹時血糖値が常に300mg/dlを超えているような著明な「高血糖」の方については、原則的に運動療法は行うべきではないといわれています。
また、糖尿病の治療薬によって逆に「低血糖」を引き起こすリスクのある方に対しても、運動は慎重に行わなくてはなりませんし、糖尿病合併症である腎症や網膜症は、病期によっては積極的な運動を避ける必要があります。
しかし、基本的にはウォーキングなどの有酸素運動は血糖コントロールの改善に寄与することもすでに広く実証されています。
これでもうお分かりのことと思いますが、「狭心症・糖尿病は運動ダメ、脂質異常症はOK」というような単純なものではなく、疾患の状態や病状の経過(病期)によって運動の可否の判断は変わってきますし、許容される運動負荷量についても人それぞれだということです。
というわけで、何らかの疾患を有している方については、まず主治医に対し、
◆運動を習慣的に行っても良いか?
◆どのような症状があれば運動を中止すべきか?
最低限、これら2つの確認をして下さい。
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3.運動処方について
主治医の先生から「運動してもいいよ!」というお墨付きを得られたでしょうか?
「運動OK]ということであれば、次に、あなたにとって望ましい運動の種類や量などについても確認しておきましょう。
「運動処方」とは、おもに以下の4要素になります。
1)運動の種類
⇒ウォーキング・サイクリング・水泳など、種目によって目的・効果が変わってきます。
2)運動の強度
⇒実施中に許容される自覚症状(例:「ややきつい」と感じるくらい)や、心拍数の上限(例:1分あたり120拍)などを設定します。
3)運動の持続時間(歩数)
⇒1回あたりの実施時間(例:連続30分)、または1日あたりの歩数などを設定します。
4)運動の頻度
⇒1日もしくは1週間あたりの実施回数(例:1日2回、月・水・金の週3回)を設定します。
これらの要素については、比較的リスクの少ない患者さんの場合、「まあ無理のない範囲でやればいいよ」というような感じで、特に明確には提示してくれない医師もいるかもしれません。
また、「今のところ受診する必要はないけれども、生活習慣病を予防するためにこれからウォーキングを始めたい」といった方は、ご自身で歩数や頻度などを設定する必要があるかと思います。
ですので、一般的な運動処方の自己設定法については、また後ほど詳しく述べていきます。
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