日常生活上の姿勢・動作に注意する事は、腰痛の根本原因を取り除くという意味で「腰痛セルフコントロール」の根幹と言えます。
これまで早朝の注意点や座位姿勢のあり方について述べてきましたが、それらの知識を踏まえ、改めて日常生活や職業上の動作における留意点を整理してみたいと思います。
過去記事と重複する点も多いかと存じますが、何とぞご容赦下さい。
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1.前かがみ・捻りを徹底的に避ける
前かがみ(中腰)の姿勢が腰に良くない理由は、クレーンなどを引き合いにして既にご説明しましたね。
これを今一度頭に入れた上で、腰になるべく負担を掛けずに物を持ち上げる方法を考えてみましょう。
1)重い物を持ち上げる時
①持ち上げる前の準備
まずは、対象物に可能な限り近づきます。
自分の重心はできるだけ低くします。片膝を立てるようにすると良いでしょう。
自分自身の支持基底面が、対象物の支持基底面に一部被さるくらい密着するのがポイントです。
②持ち上げ動作
持ち上げていく際、全ての動作のフェーズにおいて常に上半身を立てておくよう意識する事が大切です。
ほぼ真っ直ぐ上に持ち上げるか、気持ち「上半身を後ろに反らす」くらいの感覚です。
対象物を「お腹の上に載せる」ような感じ、と言えば良いでしょうか。
③腰の捻りを複合してはいけない
もうひとつ大切なのは、持ち上げながら上半身を捻らない事です。
これは私自身の失敗談ですが、PTという職業柄、ベッド柵を引き抜くという動作がよくあります。
ベッド柵は結構キツめに刺さっている場合がありますが、それを意識せずパッと抜こうとしたため、腰が「グキッ」となりました(^_^;)
抜いた後の動き(柵を他の場所に置く)が頭に入っていたため、腰を捻りながら抜くような動作になったのも悪かったようです。
その後1週間は激痛が続き、仕事に支障を来してしまいました…(T_T)
ここでの教訓は、
◆持ち上げる際は、勢いをつけない(最初は重さを確認するようにゆっくりと)
◆「持ち上げ」と「捻り」など、複数の動作を組み合わせるのは良くない
という事でしょう。
2)軽い物でも油断しない
ベッド柵もそうですが、たとえ軽い物であっても安易に前かがみにならない方が良いです。
以前の記事でも述べましたが、特に早朝など、落とした硬貨を拾おうとしてギックリ腰というケースもあるものです。
腰痛持ちの人は、どんな時でも「重心を下げ、上半身を立てた状態」で物を持ち上げるよう癖づけすることをおススメします。
2.日常生活・職業動作における注意点
日常の家事や職業上の動作などは、基本的に前項の内容に準じて行なって頂くと良いでしょう。
全てを網羅するわけにはいかないので、いくつかの例を挙げておきます。
1)重い物を移動させる時
物を持ち上げたまま長い距離を歩くのも、やはり複数動作の組み合わせになってしまいます。
そうは言っても、運送業などの方々にとってはやむを得ない場面も多いとは思いますが…。
極力、台車などを活用したいところですね。
2)手荷物を持つ時
片手で重いカバンなどを提げるのは、捻りと同様、腰に非対称的な負荷を掛けてしまいます。
できるだけ両手に分けて持ちましょう。
リュックなどを背負うのもおススメです。
3)旅行の時
最近では車輪の付いたキャリーケースが安価に購入できるようになりましたね。
2輪よりも、4輪タイプ(車輪が自在に動き、直立させて転がすことができる)の方が腰には良いです。
軽量なものが良いのは言うまでもありません。
4)家事動作(掃除機など)
掃除機をかける時は、上半身が前屈しやすいので特に注意が必要です。
腰が曲がらないよう、延長管を伸ばして使用しましょう。
他にも、トイレや浴室の掃除・ゴミ出しなど、家事動作では前かがみ姿勢になる事が多いですね。
調理の際は、片脚を踏み台に載せてみるのも良いでしょう。
洗顔の時と同様です(深夜~早朝の腰痛を防ぐために - 洗顔する時は)。
5)細かい作業をする時
中腰でしゃがみ込むのは良くありません。
座ってできる精密作業は、なるべくイスとテーブルで行うようにしましょう。
座位姿勢については前回の記事の通りです(座る時の姿勢について)。
6)床に座って作業する時
胡座(あぐら)は、骨盤が後傾し腰椎も後弯するため、一般的には良くないです。
やむを得ず胡座をかく際は、高めのクッションをお尻に敷きましょう。
通常の体格の人なら、20㎝くらい嵩上げしてやると骨盤を立てやすくなります。
正座の方が骨盤は直立しやすいのですが、長時間の正座は足がシビレますよね。
クッションを脚の間に挟んでやると、シビレはいくぶんマシになりますし、さらに骨盤が立ち上がりやすくなります。
これは膝痛の人が正座する場合にも有効ですが、やはりイスに座る方が膝・腰には一番優しいです。
7)高い所にある物を取る時
これも以前に述べましたが、腰を反らせ過ぎるのも良くありません(深夜~早朝の腰痛を防ぐために - 背伸びはキケン)。
両手を上げて背伸びすると後方へバランスを崩しやすいということもあります。
洋服など毎朝使う物は、早朝から背伸びすることの無いよう、あらかじめ低いところに置いておきましょう。
踏み台に乗るというのも工夫のひとつですが、もちろん転落には注意が必要です。
8)ドアを開ける時
重い金属製のドアなど、片手でパッと開けると思いのほか腰に負荷が掛かることがあります。
これは「引き戸」「開き戸」どちらでも言えることです。
微妙に前屈や捻りが加わる事もあるのでしょうが、意外と盲点になっています。
両手でゆっくりドアを開ける方法は、一般的には肩が痛い人におススメです。
腰痛の方にとっては「そこまで神経質にならなくても…」という感じですが、痛みの強い人には有効でしょう。
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3.さいごに
他にも様々なケースが考えられますが、いずれの動作においても
◆物を持ち上げる際は重心を下げ、対象物に密着する。
◆前かがみ(or 極端な後ろ反らし)を極力避ける。
◆捻り・傾きなどの非対称的な動きを避ける。
◆動作開始時は勢いをつけず、ゆっくり行なう。
これらの留意点をベースにして、各動作に応用していけば良いでしょう。
姿勢・動作の工夫については、ここでひと区切りつけたいと思います。
次回は、腰痛予防・改善を目的としたウォーキングについての内容を予定しています。
最後までご覧下さいましてありがとうございました。
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