すなおのひろば

中高年の健康と若手PTの未来をサポートするブログ

◆今日から2日間、臨床実習指導者研修会に参加してきます。計16時間の長丁場。結構大変ですね…(12/14)

【歩行補助具の基礎知識:その6】松葉杖の使用方法…③歩行・階段昇降の実際

f:id:sunao-hiroba:20190727184715p:plainさあ、今回はいよいよ歩行・階段昇降等の方法について解説し、最後の総仕上げとさせて頂きます。

松葉杖を必要とする一般の方々、および指導する側である医療従事者ともに参考になる内容をご提示できればと思います。

もし良ければお付き合い下さい m(_ _)m

 

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1.立位姿勢

まずは、松葉杖をつく際の基本姿勢についてご説明します。

杖の長さ調節・グリップの握り方等については前回の記事を参考にして下さい(長さ調節の基本)。

※写真のモデル『フィグマ君』は、左脚(白い包帯を巻いている側)を患側としています。

1)基本姿勢(前から)

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長さを調節する際には、杖先を足の小指から15㎝外側につきます。

が、実際に歩く時はそれではやや窮屈になりますので、少し余裕をもって広めについても良いでしょう(厳密に「何㎝」と計測する必要はありません)。

目安としては、肩幅と両グリップの間隔が一致するくらいでしょうか。そうすると体重が支えやすく感じられます。

一方、あまり広げ過ぎるのも良くありません。自然にそうなってしまうなら、杖の全長が長過ぎるのかも知れません。

あと、しつこいようですが

◆脇当てに体重を載せない(脇の下を圧迫しない)。

◆グリップ(掌)で体重を支える。

◆二の腕(上腕)で杖を挟みつける。

これらの基本を守って下さいね。

2)基本姿勢(横から)

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足元が気になり、つい真下を見てしまいがちです。

最初のうちは仕方ありませんし、足元を見ておくのも重要ではあります。

ただ、顔を大きく下へ向けると背中が曲がり、相対的にお尻が後ろへ出てしまうので、慣れてきたら少し前の方(感覚的には5mくらい先)に視線を移すようにしましょう。

患側を伸ばして前に出すと、バランスを取るためお尻が突き出てしまいます。

完全免荷の場合、脚を自然にスッと曲げて、つま先が床に触れない程度に持ち上げておきましょう。

「前に伸ばす」のではなく、「真上に上げる」感じです。

 

2.松葉杖の歩行パターン

松葉杖の歩行様式には多くの種類がありますが、当記事では「完全免荷 or 部分荷重」の基本パターンに絞ってご説明します。どうかご容赦下さい。

1)完全免荷(患側に荷重不可)

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①杖を前に出す
⇒杖を出す距離は、普段の歩幅よりも心もち少なめです。

②次に健側を出す
⇒同じく、歩幅は通常の7~8割くらいの感覚で出しましょう。

この繰り返しです。

<悪い例>

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健側を大きく振り出してしまうと、後方へバランスを崩す恐れがあります。

バランスに問題のある患者さんの場合は、両杖先を結んだラインを少し踏み越す程度にとどめておきましょう。

2)部分荷重(患側に一部荷重可)

部分荷重には「踵 or つま先のみ荷重」といった変則パターンもありますが、ここでは普通の歩き方(踵で接地し、つま先から離れる)でご説明します。

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①杖と患側を出す
⇒普段の歩幅よりも心もち少なめに出します。

②次に健側を出す
⇒患側の足首などが痛む場合は、健側を出し過ぎないようにしましょう。

この繰り返しです。


お気づきの方もいらっしゃると思いますが、T字杖の時と基本は同じです。

「杖と患側は仲良く一緒に ♪」


このように覚えておきましょう。


松葉杖になると、なぜか杖を大きく前に出してしまう人が多いようですね…。
安全のためにも、歩幅は通常の7~8割にとどめましょう。

 

3.狭い場所での方向転換

緩やかな曲がり角では、スピードを落として歩いて頂ければ良いでしょう。

完全免荷の人で、やむを得ず狭い場所で方向転換しなければならない場合は、以下の点に注意しましょう。

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両杖先と健側で作った「三角形」を崩さないようにしながら、小刻みに回るようにしましょう。


<悪い例>

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健側を軸にしてクルリと「ピボットターン」すると、バランスを崩して転倒したり、患側を接地してしまうなどのリスクがあります。

支持基底面が小さいとバランスが悪くなる…以前の記事(支持基底面の拡大→バランスの補助)でもご説明した通りですね。

 

4.椅子に座る&立つ

脇の下で挟む松葉杖の特性上、立ち座りの動作には少し注意が必要です。

1)着席

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①杖を前に抜いて…
⇒座面の位置をしっかり確認し、次に脇から抜きます。

②支えながらゆっくり座る
⇒掌(グリップ)で体重を支えて座り込みます。

<悪い例>

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脇に入れたまま座ると…杖がつっかえてしまいますね。

そのまま座ろうとすると、最悪の場合後ろへ倒れ込んでしまいます。

2)起立

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①支えながら立ち上がり…
⇒掌でしっかり体重を受けましょう。

②立ってから脇に挟む

座る時とは逆ですね。理由はご説明するまでも無いでしょう。


筋力が弱い人は、上図の方法では少し難しい場合もありますね。
以下のような変法もあります。

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ただし、立ってから杖を持ち替える動作が余分に入りますので、バランスを崩さないよう注意が必要です。

 

5.松葉杖の階段昇降パターン

両松葉杖(手すり無し)による階段昇降は、非常に難易度が高いものです。

指導・練習する際、医療従事者は絶対に順序を間違えて教えないよう注意しましょう。

1)完全免荷(上り)

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①健側を上げる
⇒松葉杖をしっかり支持しながら、健側をゆっくり上げます。

※健側で「ピョン」と跳び上がるようにしてはいけません!

②次に杖を上げる
⇒患側も一緒に連れて行きます(もちろん接地は不可)。


この繰り返しです。


<悪い例>

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もっとも大切なのは、松葉杖を先に上げてしまわない事です。

ご覧の通り、脇当てがつっかえてしまい体重を支持することができませんし、バランスを崩す恐れもあります。

2)完全免荷(下り)

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①杖を下ろす
患側は、杖と一緒に下の段へ連れて行くのが良いです(もちろん接地は不可)。

②次に健側を下ろす


この繰り返しです。

<悪い例>

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杖を下ろす時に患側を後ろへ残してしまうと、患側のつま先を段鼻(だんばな)に引っ掛けてバランスを崩すリスクがあります。

また実際にやってみると分かりますが、後ろへ残すと下りる際の恐怖心も強くなります。

<悪い例>

f:id:sunao-hiroba:20190727202723p:plain杖よりも先に健側を下ろすのも厳禁です。

やはり脇当てがつっかえてしまい、健側は「ツンツン状態」になりますね…(~_~;)

3)部分荷重(上り)

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①健側を上げる

②次に杖と患側を上げる

この繰り返しです。

「松葉杖を先に上げない」のは完全免荷と同様です。

T字杖では先に杖を上げても問題ないのですが、松葉杖の特性上、ここは絶対に間違えてはいけないところです。

4)部分荷重(下り)

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①杖と患側を下ろす

②次に健側を下ろす


この繰り返しです。


「杖と患側は仲良く一緒に ♪」
⇒杖と患側(悪い脚)は同時に支える。

「行き(上り)は良い良い、帰り(下り)は怖い(悪い)
⇒上る時は健側から、下りる時は杖と患側から。


T字杖と全く同じ原則が適用されますが、松葉杖の階段昇降では、順序はより厳密にしなければなりません。

5)手すりがある場合

項目が前後して申し訳ございませんが、医療従事者が患者さんに指導する際は、まず「手すり有り」のパターンから練習しましょう。こちらの方がはるかに安全です。

この際、片方の杖は付き添い者が預かっておきます。

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やむなく単独で上り下りしなければならない場合は、手すりの無い側に2本束ねて持ちます。

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手の小さい人にはちょっと難しいかも知れませんが、私の指導経験ではほとんどの患者さんが可能でした。

 

ちなみに、手すりが両側に付いている場合、どちらに松葉杖を支持すれば良いでしょうか…?

経験上どちらでも大差ありませんが、利き手で杖を持った方が安定するようです。

特に、2本束ねる場合は利き手で持つ方が安全です。


ともかく、手すりがある場合は必ず持つようにして下さい。

どのような種類の杖を使うにしても、階段昇降では「手すり優先の原則」に従うのがもっとも安全です!

 

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6.片松葉の場合

患側に全体重の2/3以上を掛けても良い症例では、片松葉が処方される事もあります。

T字杖と同じで、健側に支持します。歩行パターンも全く同じです(T字杖の歩行パターン)。

ただし、着席・起立や階段昇降では、両松葉と同様の留意点を守って下さい。

また、片松葉では左右非対称な歩き方になりがちです。

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鏡の前で確認するなどして、姿勢が健側に大きく偏ることの無いよう留意しましょう。

いざ松葉杖無しで歩行できるようになった時、体を傾けるクセがついてしまうとなかなか修正しにくくなるものです。

 

7.さいごに

 

1)医療従事者の方々へ…ダメ出しは最小限に

リハビリテーションにおける全ての指導に関して言えることですが、「ダメ出し」ばかりしない方が良いです。

例えば、歩き出して数歩のところで

「下ばかり見ないで、もっと前を向いて歩いて下さい!」

などと注意する気ぜわしいPTもいます。

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それでも、ほとんどの患者さんは足元を気にしながら歩くものです。慣れていないのだから当然です。

運動学習の理論からも、いきなり注意して改めさせるより、少し試行錯誤させた方が良いという一面もあります。

もちろん、明らかな危険行為の場合(自信過剰で暴走する患者さんもいます)や、階段昇降で順序を間違えそうになった時はすぐに制止しないと危険です。

しかし、そうでなければ

「いいですよ、上手ですね…もうちょっと前を見て歩けたら、さらにイイですねぇ 

このように、できるだけ肯定的・ポジティブな言い方をするのが望ましいです。

ちょっと失礼かも知れませんが…「褒めて育てる」という考え方は、子供や職場の教育よりも、患者さんのリハビリには特に当てはまるような気がします。

2)松葉杖を使用する皆さまへ

うまく歩けない場合、多くは杖の不適合によるものです。

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中には、ご自身で調節する器用な患者さんもいらっしゃることと思いますが、もし不具合があれば処方した医療機関で再調節してもらうのが望ましいです(お手数ですが…)。

介護保険制度でレンタルしているなら、ケアマネージャーを通して福祉用具業者に連絡をとり、対応してもらうのもひとつです。

 


大変長くなりましたが、松葉杖についてはここで一区切りとさせて頂きます。

時期は未定ですが、今後は歩行器・シルバーカー等についての内容も検討しています。


歩行補助具を安全に使用して頂くために、少しでもこのシリーズがお役に立てば幸いです。

最後までご覧下さいましてありがとうございました (^_^)/♪

 

 

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